「VIXショック」当時に似ているビットコインと株式の連動


「VIXショック」当時に似ているビットコインと株式の連動

2021年4月15日日経夕刊に『ビットコイン連動の不安』が掲載されている。

『14日のニューヨーク市場では大型の新規株式公開(IPO)に話題が集中した。暗号資産(仮想通貨)交換所大手のコインベース・グローバルだ。初値の時価総額は759億ドル、希薄化を考慮すると約1000億ドルに達した。売買代金は300億ドルに迫る活況で、値動きはほかのナスダック上場株やビットコインにも波及した。コインベース株は250ドルの参照価格から徐々に気配値を切り上げていった。午後1時26分に381ドルの初値がつくと、大量の取引が交錯。売買代金は5分あまりで100億ドルを超えた。値動きも激しく、初値を付けた10分後には429ドルまで上昇したが、その後、一時は310ドルと初値比19%安まで値下がりした。

今回の上場は新株を発行しないダイレクトリスティング(直接上場)だ。参照価格の250ドルはあくまで参照にすぎず、この価格で新たに株を手にした投資家はいない。つまり、一般の投資家は初値がついたあとの価格でしか購入できていない。コインベース株の14日の高値から安値への下落率は28%に達する。短時間で損失が膨らむ中、「投げ売りを迫られた個人投資家が多かったようだ」(株式ブローカー)。

ビットコインもコインベースの価格下落と連動する場面があった。コインベースの収益の大半は仮想通貨の売買手数料で、とりわけビットコインの割合が高い。2021年1~3月はビットコインが大きな値動きを伴って急上昇し、売上高が急増した。コインベースの価格はビットコイン市場への期待を移すバロメーターであるといえ、価格が相互に影響する可能性がある。

バンク・オブ・アメリカが13日公表した調査では世界の投資家の74%が「ビットコインはバブルだ」と答えた。仮に今後、ビットコインの価格が調整すればコインベース株が急落する恐れもある。仮想通貨連動の上場投資信託(ETF)や他の交換業者など競合も台頭しつつある。仮想通貨への規制も大きなリスクだ。マネーロンダリングや値動きの極端な大きさに対して金融当局は警戒感を示している。取引に膨大な電力が必要なため環境への負担が大きい。コインベースの共同創業者のフレッド・エーサム氏は米CNBCに「規制を巡る状況は年々難しくなっており、先行きがどうなるかも予見しづらい」と述べた。記録的な時価総額となりつつも、初値をつけてほどなく売りが膨らんだ。仮想通貨市場への期待と不安の双方を映す上場初日となった。』

セミナーでも指摘してきたように、ビットコインと株式市場が連動しているのは17年~18年以来。当時は、ビットコインが2017年に10倍以上に急上昇する一方、ダウ平均は2017年12月にトランプ減税法案が可決され、18年1月26日史上最高値26616ドルまで上昇。だが、2月2日発表の1月雇用統計で平均時給が予想を上回る伸びを示し、米長期金利が大幅上昇。ダウ平均は1月26日高値から4月23日安値23344ドルまで3272ドル、-13%の急落となり2018年の最安値を付けた。「VIX指数」は2月6日に50を超える水準まで上昇、これが18年2月に起きたいわゆる「VIXショック」である。

今回も昨年6月頃からビットコインが約7倍に急上昇するなか、NYダウは2つの追加経済対策法案が可決され史上最高値を更新しており、17年~18年に良く似ている。17年~18年当時は米長期金利の上昇で「VIXショック」が起きたかのように見えるが、米長期金利は17年8月2.05%から18年10月3.23%まで上昇し続けていることから、直接のきっかけは米長期金利の上昇ではない。では、直接のきっかけは何か。それは当時10倍超に急上昇していた「ビットコイン」の急落である。

中国当局は17年末頃から仮想通貨の規制を一層強化するなか、18年1月19日には中国人民銀行(中央銀行)が全取引の中止を命じる規制強化を発表。つまり、「チャイナマネー」が仮想通貨マーケットから引いたことが暴落の原因だった。

今回、「ビットコイン」の上昇の起点となったのが昨年6月。実は、昨年6月に何があったかというと6月30日に可決、同日午後11時より施行された「香港国家安全維持法」。この法律は「1国2制度」の根幹を揺るがすものとして世界中の国々から懸念の声が上がっていたが、その結果として、「チャイナマネー」が流出して、仮想通貨マーケットや「ビットコイン」に流れ込んでいる可能性が高い。つまり、17年とよく似ているということ。

ビットコインは6万4870ドルの最高値を付けてから数日後の4月18日、一時15%下落した。仮想通貨融資会社NEXO(ネクソ)の共同創業者アントニ・トレンチェフ氏は米財務省による取り締まりという「根拠のない」報道に加えて、下落要因には「過剰なレバレッジやコインベースのインサイダーによる直接上場後の株式売却、中国の新疆ウイグル自治区で起きた大規模停電によるビットコイン採掘者への打撃」が含まれる可能性があると指摘しているが、今回の急落はいつもの一過性の急落かどうかが注目される。