『テーパリング相場の号砲~仮想通貨急落は前ぶれ』


『テーパリング相場の号砲~仮想通貨急落は前ぶれ』

2021年5月24日日経新聞に『テーパリング相場の号砲~仮想通貨急落は前ぶれ』が掲載されている。

『5月に入り世界のマーケットが不安定になっている。米インフレ懸念を受け、カネ余りが演出する金融相場の転機を市場が嗅ぎ取っているからだ。目下の焦点は、米連邦準備理事会(FRB)の資産購入の縮小(テーパリング)がいつ始まるのか。先週の暗号資産(仮想通貨)の暴落は、これから始まるテーパリング相場の前ぶれだろう。FRBは19日に4月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を公表。「経済の急回復が続けば、今後の会合のどこかで資産購入ペースを調整する議論を始めるのが適切だと多くの委員が指摘した」と記した。

12日発表の4月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比4.2%上昇と予想を超えた。新型コロナのワクチン普及で消費者の需要が回復する一方、供給側では半導体などサプライチェーンの混乱や商品市況の高騰で部材価格が上昇。インフレに拍車がかかった。これが一過性の現象であれば、雇用回復が鈍い中でテーパリングを急ぐことはない。だが多くの委員は「供給制約」が予想以上に続き、今年以降の物価に上昇圧力がかかる可能性を指摘した。

複数の委員は長引く緩和が投資家を「利回り追求」へと追い立て、金融市場のリスクを高めていると指摘。パウエル議長がFOMC後の記者会見で米ゲームストップ株の乱高下を「フロス(小さな泡)」と呼んだのはこの議論を受けたものだろう。フロスがバブルになるのを食い止めるにはテーパリングは必須だ。5月、6月と今後2回の雇用統計で、下振れした4月からの雇用回復を確認できれば、7月のFOMCか8月のジャクソンホール会議でテーパリングの検討開始を表明。来年1~3月期までには始めるというのが、市場が今描くシナリオだ。

その動きが始まったのが、5月に市場の雰囲気が急変した真相だ。引き締め開始時は、値上がり期待だけで買われてきた資産が真っ先に売られる。先週の仮想通貨の暴落はこれに相当する。仮想通貨は企業業績のようなファンダメンタルズ(基礎的条件)が存在しない。PER(株価収益率)のような適正水準を測るモノサシもなく、それゆえに価格は天井知らずで上昇してきた。だがテーパリングでカネ余りが転機を迎えると察すれば、投機マネーは裏づけのない資産から一気に引き揚げる。これが先週起きたことだ。ビットコインは4月の最高値から半値になった。ファンダメンタルズの裏づけを欠くのは実態がない「空箱」の特別買収目的会社(SPAC)も一緒。スポンサーの知名度といった大衆心理が押し上げてきた株価は高値から2割超下げた。

前回のバブルがおきた2017~18年のビットコインの動きは参考になる。利上げが進む中で株に先行して急騰し、17年12月を天井にバブルは崩壊した。さらにこれはその後の株安の前ぶれだった。2カ月後に「VIXショック」と呼ぶ米国発の世界株安がおきた。テーパリング相場の号砲は鳴った。仮想通貨バブルが崩壊した日が、FOMC議事要旨が出てきた19日だったのは示唆的だ。18年の急落劇が繰り返されるのかは分からないが、昨年3月からの米国株の右肩上がりの上昇が分岐点に差し掛かっているのは間違いない。』

2021/05/24 『仮想通貨大暴落を事前に示唆していたテスラ株?』のT-Modelコラムにおいて、

『市場関係者にはビットコインの暴落は株式市場に関係ないとの意見が多いが、それはビットコインと株式市場の分析を疎かにしているためなのではないだろうか。5月22日のセミナーではそのポイントを詳しく分析したが、2018年を振り返るだけでもビットコインの重要性が理解できるのではないだろうか。』と指摘してきたが、その指摘を聞かれたかのような分析記事である。『前回のバブルがおきた2017~18年のビットコインの動きは参考になる。利上げが進む中で株に先行して急騰し、17年12月を天井にバブルは崩壊した。さらにこれはその後の株安の前ぶれだった。2カ月後に「VIXショック」と呼ぶ米国発の世界株安がおきた。テーパリング相場の号砲は鳴った。』とあるが、5月22日のセミナーでは2017~18年との詳細な比較を行ったため理解しやすいのではないだろうか。

もう一つ指摘すべき点は、『目下の焦点は、米連邦準備理事会(FRB)の資産購入の縮小(テーパリング)がいつ始まるのか。』と記事にあるように「テーパリングと相場」についてである。冒頭の記事と同じ週の2021年5月29日日経夕刊『テーパリング恐れぬ市場』において、

『米景気の回復が加速し、FRBが来年にかけてテーパリングに動くのは間違いないだろう。テーパリングと聞いて思い出されるのが2013年5月のいわゆる「バーナンキ・ショック」だ。当時のバーナンキFRB議長が議会証言で不意に量的緩和縮小の可能性に言及し、長期金利上昇と株価下落を招いた一件だ。だが、実態は株式市場ではショックというほどでもなく、ダウ平均は1カ月後の底値まで4.7%下げただけだった。その後は13年末にかけて13.1%上げ、史上最高値で終えた。その間に長期金利は1.93%から3.02%に上昇したにもかかわらずだ。テーパリングは14年1月に実際に始まったが、14年のダウ平均も年間で7.5%上昇した。』との指摘。市場では「バーナンキ・ショック」後の相場を例に、テーパリングに対しては楽観視している。ただ、このような13年当時と比較するのは大きな勘違いではないだろうか。

イールドの観点でいえば、13年当時は「リーマンショック」後の後遺症から抜けきれず、水準はマイナス1σだったが、現在は+1σを超えた「逆イールド」後、アベレージを割り込んだリーマンショック前の08年1月の水準にある。むしろ、冒頭の記事で指摘している「前回のバブルがおきた2017~18年」との比較をしなければ先行きの相場は何も理解できないのではないだろうか。以前からセミナーや書籍で指摘してきた「イールドを理解しないと相場は理解できない」のである。