『デリバティブ想定元本6000 兆円「無秩序離脱で不安定に」』

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『デリバティブ想定元本6000 兆円「無秩序離脱で不安定に」』

2018/10/11日経新聞に『英、巨額金融リスク警告~デリバティブ想定元本6000兆円「無秩序離脱で不安定に」』が報道されている。かなり重要な記事であるため全文をご紹介する。

『英国の欧州連合(EU)離脱を巡り、英・EU間のデリバティブ(金融派生商品)や保険など金融取引の継続性に不安が強まっている。英中央銀行のイングランド銀行は条件合意なしの「無秩序離脱」の場合、想定元本ベースで最大41兆ポンド(約6000兆円)のデリバティブが不安定な状態に置かれると警告。関係機関に対応を促した。

英国のEU離脱まで残り半年を切るなか、金融システム上の懸案になっているのが、様々な価格変動のリスク軽減などに使われているデリバティブの扱いだ。取引の相手方となる中央清算機関として、欧州では英ロンドン証券取引所グループのLCHクリアネットが圧倒的なシェアを握る。合意なし離脱に至ると、今のEUの規制では欧州の金融機関が同社を使えなくなる。

英中銀が9日に発表した声明によると、在英の中央清算機関が取り扱うEU企業のデリバティブ残高は、想定元本ベースで69兆ポンド(約1京300兆円)に上る。このうち41兆ポンドが、2019年3月末のEU離脱後に満期を迎える。EUの法体系から切り離された場合、既存の契約がどう扱われるか定まっていない。

英中銀が懸念しているのは、取引の継続性確保に向けたEU側の対応が遅れているためだ。英国側ではEUのサービスの継続利用を可能にするための法対応が進められている。英中銀は9日に発表した金融行政委員会(FPC)の声明で、EUについて「進捗が限られている」と強調。離脱後も英機関を取引相手として認めることが当面の手立てとなるが、現時点で具体的な動きは見えない。

保険契約の扱いも宙に浮いている。英中銀によると英保険会社が提供するEU市民向けの契約のうち約900万件について合意なし離脱に至った場合に、どのような扱いになるのかは不透明だ。

態度を留保しているEU側はもともと、離脱を機にデリバティブ清算拠点など金融センターとしての機能を英国から奪う思惑を持ってきた。だが無秩序離脱の懸念もくすぶるなか、万が一のリスクを無視できなくなっている。欧州証券市場監督機構(ESMA)のマイヨール長官は3日、ギリシャで講演し「英清算機関の利用を続けられるようにする必要がある」との認識を示した。

EU離脱に伴う金融システムリスクへの懸念の声は広がってきた。国際通貨基金(IMF)は9日公表した世界金融安定報告で、英国からEUへの拠点移転などで金融機関の取引コストが高まったり、リスク管理が複雑化したりする課題があると分析。欧州内の取引拠点の分裂によって金融取引の流動性が低下する可能性なども指摘した。

金融派生商品の業界団体である国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)も9日、合意なし離脱に至った場合のデリバティブ取引への悪影響を指摘する報告書を発表し、関係当局の迅速な対応を促した。』

18/10/09『7年5カ月ぶりの水準に急上昇した米10 年物国債利回りは何を示唆している?』のT-Modelコラムにおいて、

『ようやく長期金利が動き出したとの印象である。拙書『トランプの破壊経済がはじまる』の第1章『トランプの破壊経済で世界はどうなる?』のP45『米10年債利回り3%超えは「終わりの始まり」?』で詳しく説明しているのでそちらを参照していただきたいが、このなかで「大切なことは、世の中はいよいよこれまで慣れ親しんだ金利低下局面が終了し、これから2040年前後をピークとする長期金利の上昇局面に入ることです。これは「超低金利を前提としてきた社会構造や人々の価値観が転換する」ことを意味しているのです。」、「その時代に入る分岐点は、まさに米10年債利回りが「3.03%」を超えたときなのです。」と指摘した。

冒頭の記事では「債券相場が経済データに反応しやすくなっている」とあるが、本当のところはデリバティブ等を駆使して押さえ続けてきた米長期金利が、何らかのマネーの変調でそれが徐々に弱まり始めているだけなのではないだろうか。』と指摘した。

冒頭の記事は「本当のところはデリバティブ等を駆使して押さえ続けてきた米長期金利が、何らかのマネーの変調でそれが徐々に弱まり始めているだけなのではないだろうか。」の答えの一つではないかと推測できる。つまり、英国のEU離脱まで残り半年を切るなか「英中央銀行のイングランド銀行は条件合意なしの「無秩序離脱」の場合、想定元本ベースで最大41兆ポンド(約6000兆円)のデリバティブが不安定な状態に置かれると警告。関係機関に対応を促した。」がデリバティブの変調をもたらし、米長期金利急上昇の引き金となった可能性がある。

デリバティブ(金融派生商品)は見えにくく、わかりずらい商品であることから、市場関係者でも理解が浅く、今回の米長期上昇は「一人勝ちの強い米国」が要因と考えている人々が大半ではないだろうか。また、

名目金利=期待実質経済成長率+期待物価上昇率(インフレ率)+リスクプレミアム

の公式からリスクプレミアムの上昇が金利急騰の原因と指摘する向きもあるが、では何故、リスクプレミアムが9月末から上昇したのかというタイミングの考察がない。それがなければ意味がなく、この程度の説明では今後も起きるであろう暴落リスクを回避することはできないのではないだろうか。やはり、投資家に必要な指標は暴落を示唆する「先行指標」なのである。