『プロ投資家VS素人集団』

『プロ投資家VS素人集団』

2021/1/27日経夕刊に『プロ投資家VS素人集団』が掲載されている。

『ウォール街対素人集団の戦い――。今月に入って顕著になったゲームストップ株急騰の動きをこう表現する向きもいる。ヘッジファンドなどプロ投資家が同社株を空売りの対象にする一方、個人投資家がSNS(交流サイト)を利用して買いをしかけ、コールオプションも使って大量に購入する動きが加速したからだ。空売りポジションを膨らませていたヘッジファンドは同社株の上昇による損失拡大を抑えるために買い戻しを迫られたが、貸株返却の確保ができなくなる”ショートスクイーズ”に見舞われた。ヘッジファンド運用会社のメルビン・キャピタル・マネジメントもその一つ。損失拡大を受け著名ヘッジファンド投資家のケン・グリフィン氏らから救済資金約27億ドルの提供を受けることになった。

異常な株式急騰をみて約10年前の「ウォール街を占拠せよ」運動を思い出した。人口の1%の富裕層が国全体の所得の大部分を占める経済格差を糾弾。99%の国民の経済状況を改善しようというスローガンで、格差の象徴としてのウォール街が攻撃の対象になった。ゲームストップ株買いをしかけた素人集団は、今まで収益を享受してきた空売りヘッジファンドを攻撃の対象にする、いわば「新ウォール街を占拠せよ」の活動といえる。その発信源となったSNSの「レディット」では、複数の個人が「機関投資家を破綻させよう」と宣言してゲームストップ株購入を呼びかけた。手数料無料でオプション取引などプロの牙城だった取引を身近にしたオンライン証券も、個人の素人集団にプロ投資家並みの武装を可能にした。

SNSを通じた集団の動きをみれば、「不正選挙」の議論を拡散し、トランプ前大統領支持者が連邦議会議事堂に乱入した事件をほうふつとさせる。共通するのは、富の格差や社会的不平等という不満の蓄積がSNSを通じて拡散・爆発につながったということだ。異常な株価急騰をバブル相場がはじける前兆とみる向きもある。ただ、00年にはじけたIT(情報技術)バブルと比べると異なる点もある。当時はカリスマ的なアナリストがニューエコノミー論を展開して株価が永遠に上がり続けるような幻想を与え、老若男女、プロも素人も関係なく、国民総投資家になった時代だ。牧歌的だったかつてと比べて社会問題がバブル膨張の根底にある現在、泡がはじけた後の打撃は一筋縄ではいかないかもしれない。』

先週は米国市場で起きたオンライン掲示板『レディット』への書き込みによるゲームストップ株の投機的売買に対する報道一色だった。日本の「仕手株」さながらに売り手のファンド勢に「踏み上げ」をさせて多額の損失を負わしたことから米国市場では『レディットショック』などと呼ばれている。損を負ったファンドは投資家からの解約依頼に応じるため、今後、保有銘柄を売却する可能性もあり、空売り勢のみならず取引システムまで「破壊」されるのではないかとまで懸念され始めている。

このように先週の日米の株価急落は「ゲームストップ株に対する投機的売買」がきっかけとの見方が市場では有力だが、本当の下落の要因は先週、今年初のFOMCが開催され、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が当面緩和策を解消する意向がないと現状維持を表明したことかもしれない。昨年末の追加経済対策に対するFRBの資金供給策を市場は期待していた可能性があるからである。逆に、市場では「ステルステーパリング(隠れ減額)」まで懸念し始めている。

2021/1/27日経新聞では『「自警団」バブル見抜くか~米ハイテク株が予兆示す?』では、

『FRBは政策変更を明示せず量的緩和を縮小するステルステーパリング(隠れ減額)に動いているフシがある。FRBは保有額が毎月800億ドル(約8兆3000億円)増えるよう米国債を買うと決めているが、1月20日までの1週間の増加額(4週移動平均)は151億ドルと月600億ドルペースに減速。昨年10月下旬の週と比べると2割強も少ない。物価連動債に限ると保有額は20日時点で46億ドルの減少に転じた。異例の財政金融緩和がもたらした株価の高騰をFRBが警戒し始めたとしても不思議はない。量的緩和を背景に短期マネーは値動きが大きいハイテク株、さらには暗号資産(仮想通貨)などに流れ込んできた。米ナスダック総合株価指数とビットコインには興味深い関係がある。ビットコインが短期間に急騰した局面は主に2017年末、19年夏、20年1月と3回あり今回は4回目。前年比の騰落率を並べるとナスダックはビットコインとほぼ同時か、先行してピークを付けている。投機マネーがハイテク株からビットコインにシフトし、その後、仮想通貨への規制をきっかけにマネーゲームが終演するというパターンが多い。

ナスダックは最高値圏にあるが前年比の上昇率を見ると昨秋がピーク。ビットコインは今年1月上旬に最高値を付けた後、高値波乱の様相をみせる。ハイテク株や暗号資産は資金流出入の速度が速く金融政策や規制に敏感。予兆があれば投機資金はいち早く逃げ出す可能性がある。バイデン米大統領は格差是正を掲げ資産価格の上昇に歯止めをかける方向にカジを切るとの見方もある。仮想通貨はその標的とささやかれる。「コロナバブル」に踊る市場は甘く見ていると高転びしかねない。』

この2つのニュースはきっかけなのか、原因なのかは別にして、先週の日米株価急落に深く関係していることは間違いないだろう。「ハイテク株や暗号資産は資金流出入の速度が速く金融政策や規制に敏感。予兆があれば投機資金はいち早く逃げ出す」の記事の指摘通り、「ハイテク株や暗号資産」は急落調整をいちはやく察知する重要な指標なのだろう。
その暗号資産である「ビットコイン」だが、実はドル元との連動性が強い。今回も元高のなかビットコインが急上昇しているが、まだ記憶に新しい17年末まで約10倍にビットコインが急上昇した時期も元高局面となっていた。つまり、元高が続くようだと今後もビットコインの上昇は継続し、またハイテク株の上昇でNASDAQ指数が上昇し続けることになるがどうだろうか。ドル元から目が離せなくなってきている。