『新債券王「不吉な予言」連発』

王様

『新債券王「不吉な予言」連発』

2018/10/23日経新聞夕刊に『中国株高も、売り一巡まだ』が報道されている。

『米国株の不安定な動きが続いている。22日のダウ工業株30種平均は朝方に前週末比100ドルを超える上昇を見せるも、すぐに値を消し、下げ幅は一時200ドルを超えた。アジア時間に中国・上海株が急上昇したが、米市場を安定させるのには力不足だった。だらだらと続く株売りに市場参加者は警戒を強めている。

ダウ平均が10日に2月以来の下げ幅を記録してから、2週間が過ぎようとしている。市場では「投げ売り」のサインがいくつも点灯し、早期の相場底入れに期待する声もあったが、売り一巡感が出てこない。米運用会社スレートストーン・ウェルスのポートフォリオ・マネジャー、ロバート・パブリック氏は「今回の下げのきっかけについて市場で意見の一致が見られていないからだ」と話す。

米金利上昇を理由にあげる市場参加者は多い。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が今月に入り、景気を冷やさず過熱もさせない「中立金利」を超えて利上げを続ける可能性を示した。米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの発言をきっかけに米金利が上昇、ハイテク株の割高さが意識され、売りにつながった――。これが「FRB黒幕説」だ。一方、「9月のFOMC議事要旨などを見ても、目新しい発言はない」(スレートストーンのパブリック氏)として、黒幕説を懐疑的にみる投資家も少なくない。

国際通貨基金(IMF)が貿易戦争などを理由に世界経済の成長見通しを下げたことも、下落の引き金とする意見も聞かれる。これに対して、米ゴールドマン・サックスのエコノミスト、チャールズ・ヒンメルバーグ氏は19日のリポートで「経済成長の低迷を示す新たな証拠はない」と指摘。最近のマクロ懸念は「行き過ぎ」と主張する。

相場下落の背景がはっきりしないと投資家は押し目買いを入れにくい。株価はだらだらと下げ続け、市場参加者はさらに慎重姿勢を強める。この悪循環が不安定な値動きにつながっているようだ。中国株高だけでは相場の流れは変わらないことが、22日の株安で明らかになった。嫌なムードの「払拭役」として、米企業の好決算に投資家の期待が集中するゆえんだ。』

この記事で指摘しているポイントの一つは『今回の下げのきっかけとなった理由が市場で一致していない』という点。だが、今回のような大きな下げ局面ではいつでも市場では「あるある」のポイントに過ぎない。大きな下げに対して回避できなかった投資家はいつでも大きく下げた後に、「後付けの理由」を探したがり、そのような遅れた投資家が市場で統一された理由が分かり始めたときには株式市場はすでに底打ちして大きく反発しているのが常だからである。だから、市場で理由が一致してないことなどに危惧する必要など全くない。

もう一つ指摘すべきポイントは、株価急落が米長期金利の上昇であると見ることは正しいものの、それが『FRB黒幕説』と考えている市場関係者が多いということである。2018年10月26日ウォルストリートジャーナルに『トランプ氏のFRB批判は逆効果』では、金利に対して理解不足のトランプ大統領を露呈しているが、米国の市場関係者も理解していないことが明らかになったことである。

以前から何度も指摘しているように、FOMCで決定する政策金利は2年以下の米短期債利回りを決定するだけで、米長期債には関係ないということを、日本よりも金融経済を理解が進んでいると思われる米国市場関係者でさえもあまり認知されていないことがこの記事で明らかになっている。

今回の下げのきっかけとなった米長期債利回りの上昇は、2018/10/15『デリバティブ想定元本6000兆円「無秩序離脱で不安定に」』のT-Modelコラムで、『EU企業のデリバティブの一部が動き始めた可能性が高い』と指摘したが、それを『FRB黒幕説』と考えているようでは、今後、米長期債利回りが更に上昇する局面でもその理由にいつまでも辿り着くことはないだろう。再度、2018/10/15『デリバティブ想定元本6000 兆円「無秩序離脱で不安定に」』のT-Modelコラムをご参照いただきたい。

そんな中、2018/10/30日経新聞夕刊に『新債券王 「不吉な予言」連発』が報道されている。

『29日の米国株相場は荒い値動きになった。米ダウ工業株30種平均は買い優勢で始まり、前週末比の上げ幅は350ドルまで広がった。ところが買い戻しが一巡すると急速に勢いを失い、結局245ドル安で終えた。重苦しい雰囲気のなか、むしろ生き生きとしている著名投資家がいる。「新債券王」と呼ばれるジェフリー・ガンドラック氏だ。

相場が不安定になるほど市場参加者はその背景について答えを求めたがるものだ。視線は市場に影響力のある著名投資家に向かう。約13兆円を運用し、新債券王の異名を持つ米ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック最高経営責任者もその一人だ。「ドイツ銀行は数十年以来の安値だ。金融メディアはどこも報じないが」「7~9月期の米国内総生産(GDP)は貿易赤字によって1.8%押し下げられた。33年ぶりの規模だ。前回はドル安政策がとられ、ドル指数は2年間で5割も下げた」

ガンドラック氏はここにきて不吉なツイートを連発している。高い的中率で知られる同氏は、10月の相場波乱前に「米株一人勝ち」は長続きしないと警告しており、市場参加者は彼の予言を無視できない。「私が注視するのはデータが変化しないのに、解釈が変わる魔法の瞬間だ金融市場ではデータの解釈が突然変わることがある。26日公表の7~9月期の米GDP成長率を巡っては、エコノミストからは「減税効果による一次的な押し上げにすぎない」といった解説や「設備投資が減速している」といった指摘が出てきた。長く株高材料とされてきた米GDP成長率だが、ここにきて「悪いところ取り」する論調もじわじわと増えてきた。こうした市場の解釈のブレが相場に変動をもたらしたともいえる。一方、ガンドラック氏は市場の楽観見通しに一貫して懐疑的だった。多くの投資家が様子見姿勢を強めるなか、新債券王は市場がまだ気付いていない事実を探し、貪欲に次の収益機会を狙っている。』

「ドイツ銀行は数十年以来の安値だ。金融メディアはどこも報じないが」とあるが、ロイターでは6月8日に『問題は、株価が急落し、デリバティブ残高が50兆ドル(約5500兆円)に近づく中で、このドイツ最大の銀行が、市場の混乱を最低限にとどめつつ、その存在感を円滑に少しずつ縮小できるかという点だ。』と報じている。この巨大なデリバティブに対する市場の不安が現在の株価水準を表していることは確かであろう。

もう一つの「7~9月期の米国内総生産(GDP)は貿易赤字によって1.8%押し下げられた。33年ぶりの規模だ。前回はドル安政策がとられ、ドル指数は2年間で5割も下げた」との指摘で重要なことは「33年振りの貿易赤字」である。33年前は85年で、ドル指数がピークを付けた時期と一致し、現在とよく似ている。いづれの内容も記憶力の良い方なら覚えておられる方も多いかもしれないが、拙書やセミナー、またT-Modelコラムなどで何度も指摘してきたポイントである。

前半の記事と後半の記事の内容の違いはお分かりだろうか。一般の市場関係者の記事をまとめたものか、「高い的中率で知られる投資家」の意見をまとめたかの違いである。ニュースは前半のような記事が多く、このような記事を読んでなんとなく市場を理解したつもりになって満足している限りは、いつまでも暴落を避けることはできず、また株価のボトム圏で投資することはできないのではないだろうか。投資の世界は1割の勝者と9割の敗者で成り立っており、もう当たる確率の低い意見を聞いている暇などない最終段階に入ってきたことを感じなければならないだろう。