『日銀、円供給に勢い~5月末、1年9ヵ月ぶり増加幅』

『日銀、円供給に勢い~5月末、1年9ヵ月ぶり増加幅』

2020年6月11日日経新聞に『日銀、円供給に勢い~5月末、1年9ヵ月ぶり増加幅』が報道されている。

『日銀による円の資金供給量(マネタリーベース)がようやく増勢に転じた。追加金融緩和を決めた3~4月はドル供給が先行したが、5月末には円の残高も前年比で1年9カ月ぶりの増加幅となった。新型コロナウイルスによる混乱に対処するための金融機関向け貸し付けが増えたためだ。ただ米国の供給拡大ペースには見劣りし、円買いにつながる可能性もある。

日銀はコロナ危機対応のため、3月と4月に追加緩和を決め、円とドルの両方を潤沢に供給する方針を打ち出した。当初大きく増えたのは邦銀の外貨の資金繰りを支援するドル供給。それを反映する日銀資産の「外国為替」の年間増加額は、2月末時点でほぼゼロだったのに4月末に20兆円を超えた。一方、円の供給残高を示すマネタリーベースは従来と比べて目立った拡大にならなかった。円の供給が大きく増え始めたのが5月だ。同月末のマネタリーベースは、前年比31兆6000億円増加の約543兆円。18年8月末(32兆8000億円増加)以来の増加額だ。季節調節値で前月比伸び率を年率換算で見ると、3~4月にマイナスだったのが、5月は約3割ものプラスに転じている。

5月の円供給増加の主因は金融機関向け特別オペ(公開市場操作)。コロナ危機に直面する企業の資金繰りを支えるため、銀行などにゼロ金利で資金を貸す措置だ。その動きを反映する日銀の「貸付金」の残高は5月末に前年比17兆4000億円増え、約64兆円となった。13年4月の異次元緩和開始以降、最大の増加額だ。一方、日銀が4月下旬に無制限とした長期国債の購入は、依然目立った増勢が確認できない。5月末時点の保有残高は約483兆円で前年比14兆円程度の拡大。この増加額(年間購入額)は4月以前と大差ない。ただ政府の経済対策に伴い今後は国債増発が見込まれる。「金利動向にもよるが、国債買い入れも膨らむ可能性がある」(日銀筋)という。』

20/04/27『日銀が国債の「無制限」購入の追加金融緩和へ』のT-Modelコラムにおいて、

『事実上、「FRBは市中銀行に対する最後の貸し手」から商業銀行にシフトし、この米連邦準備制度理事会(FRB)の無制限の量的緩和(QE)プログラムは米国が08年の金融危機時を超えるが途方もない難局に直面している危機感を意味するが、日銀には米連邦準備制度理事会(FRB)のような危機感を感じられない。米国の経済対策でFRBを通じた資金供給は最大4兆ドル規模とされ、FRBの総資産は約6.4兆ドル(4月15日時点)から10兆ドルまで膨らむ見通しから、総資産5.3兆ドル(4月10日時点)にとどまる日銀が日本の景気後退を危惧してというよりはFRBに追随しただけに過ぎないのではないだろうか。』と指摘した。5月の1年9か月ぶりの円供給拡大はFRBへの追随姿勢がようやく表れてきたことを示している。

また、同コラムでは、

『その日銀のFRB追随姿勢は、2020/4/21日経新聞の『FRB総資産、日銀を抜く~「量的緩和」ドル安要因に』の記事にも表れていた。

『新型コロナウイルス対応で巨額の資産購入に乗り出した米連邦準備理事会(FRB)の総資産が急拡大している。4月に入って日銀を一気に追い抜き、両者の差は今後、大きく広がる見通しだ。FRBの資産膨張はドルの需給緩和などを通じてドル安要因になる。市場参加者の脳裏には同様の「日米逆転」が起きたリーマン・ショック時の急な円高の記憶がよぎる。リーマン危機では、対ドルの円相場は08年9月の1ドル=109円台から12月の87円台まで20円を超える大幅な円高が進んだ。要因の一つとされるのが、大量の国債などを買い入れるFRBの量的緩和政策(QE)だ。QEは市中へのドル資金供給が増えて需給が緩むとともに、米金利にも低下圧力がかかり、ドル安を招く効果がある。当時もFRBの総資産が大きく膨らみ、日銀との逆転現象が生じていた。こうした「量」の拡大が為替に効くとの考えも踏まえ、日銀は13年の異次元緩和で積極的な資産購入に動き、円高の是正につなげた経緯がある。』と指摘。つまり、今回の日銀の金融緩和策は日本の景気後退や雇用問題を危惧したためというよりは急激なドル安を避けたい米国のための政策とも見ることができるのではないだろうか。』とも指摘した。冒頭の記事でも『日銀の円供給には勢いがついてきたが、米連邦準備理事会(FRB)もドル供給に努めている。日本のマネタリーベースを米側のそれで割った数値は5月も低下し1.03となった(QUICK調べ)。さらに下がると、日本側の緩和策が相対的に踏み込み不足である印象を与え、円買い材料になりかねない。それだけに今後この倍率が上昇に転じるかも注目される。』と同様な指摘をしている。

5月末のFRBと日銀の資産残高の比率は1.22倍。08年のリーマンショック時は同比率が08年8月0.9倍→08年10月1.66倍へ急上昇する過程で、ドル円は08年8月108.8円→09年1月89.9円まで約20円幅の急激な円高となっている。つまり、同比率が+1σの1.6倍を超えてくるようだと一気に円高が進む可能性があるということだろう。「日本側の緩和策が相対的に踏み込み不足である印象」との冒頭の記事にあるように、中途半端なFRB追随姿勢では為替マーケットで催促相場が始まりそうである。本日15日~16日の日程で日銀金融政策決定会合が開催されているが、日銀のFRB追随姿勢の本気度が試される局面であり、16日の黒田日銀総裁の会見は久々に注目すべき会見になるのではないだろうか。