『NY金、初の2000ドル超え』は更なる上昇のサインか?

『NY金、初の2000ドル超え』は更なる上昇のサインか?

先週の1週間は金一色の報道だった。

日経新聞でも、7月29日『金・ビットコイン資金流入~米ドルなど法定通貨に不信感』では、『貴金属の金と暗号資産(仮想通貨)のビットコインがともに急騰している。金は年初来で3割、ビットコインは5割上昇した。両者に共通するのは通貨に似た性質を持つが、特定の発行国を持たない「無国籍」である点だ。両者の上昇は、米ドルをはじめとする法定通貨への不信感を映す。』、

8月1日『NY金、初の2000ドル超え~急騰に警戒感も「ドル代替」で上昇』では、『金の国際価格が初めて1トロイオンス2000ドルを突破した。国際指標のニューヨーク金先物は中心限月の12月物が7月31日に一時1トロイオンス2005ドルまで上昇し、過去最高値を更新した。新型コロナウイルス感染拡大が収まらず、世界で経済の停滞が長期化するとの観測が強まり、安全資産とされる金が買われた。低金利やドル安の進行も金価格を押し上げた。』、

8月2日『ドル、10年ぶり下落率~金は最高値2000ドル台』では、『為替市場でドル売りの動きが続いている。総合的な通貨の強さを示す「ドル指数」は7月に4%超下げ、月間の下落率としては約10年ぶりの大きさとなった。新型コロナウイルスの感染が拡大した当初は、基軸通貨のドルが買われた。米国の景気や政治への不安の高まりから、マネーが逆流している。』などが報道している。

その一方で、ブルームバーグは20年7月28日『金相場、最高値更新後に失速~銀現物は一時3月以来の大幅安』が報道されている。

『金相場は28日、先物が1オンス当たり初めて2000ドルに達するなど、最高値を更新したが騰勢は続かない兆候が示されている。投資家は金相場の上昇が急速かつ行き過ぎだったかどうかを見極めようとしている。銀現物は3月以来の大幅安となった金・銀相場はアジア時間28日午前に高値を付けた後で下げに転じた。トレーダーが利益確定の売りを出したほか、ドルが下落分の一部を取り戻していることが背景だ。新型コロナウイルスのまん延による経済への打撃に終わりの兆しは見えず、経済成長の押し上げには追加刺激策が必要になるとの見方が広がっている一方で、投資家は一段高を狙うにはさらに強力な手掛かりを必要としている可能性がある。

コメルツ銀行のアナリスト、カルシュテン・フリッチ氏は「大幅な上昇の後で、調整は遅すぎたくらいだ」と述べた。ロンドン時間午前9時48分現在、金現物は0.9%安の1オンス=1924.65ドル。一時は最高値の1981.27ドルをつけた。相対力指数(RSI、期間14日)は買われ過ぎのサインとされる70を上回る水準で推移している。シンガポールのディーラー、ゴールドシルバー・セントラルのマネジングディレクター、ブライアン・ラン氏は「上げの勢いがなかったことが分かる」と指摘、最高値を「その後何度か試そうとしたが、調整が入ってしまった。恐らく既ににある程度の利益確定売りがあるのだろう」と話した。』

日経新聞とブルームバーグの両記事を読むと、最高値のNY金に対して、かなり違う印象を与える。日経新聞の記事を読むと「金を今すぐ買わなければ」と考える方も多いかもしれないが、ブルームバーグの記事を読むと「買うのは一度下がってからにしよう」と冷静になるからだ。

T-Model独自のモデルでは、セミナーや著書のなかで『NY金価格は米イールドスプレッド』との連動性を指摘してきた。米イールドスプレッドが18年7月9日週0.1%でボトムを付け、20年6月1日週0.78%まで拡大する過程で、NY金は18年8月13日1176ドルをボトムに今回の史上最高値まで上昇した。T-Modelの米イールドスプレッドの対比でNY金価格を考えると、長期的な見通しは別にして、6月以降、そろそろ目先の天井を付けても良い時期だったことになる。だが、逆に、6月1日週1683ドルからは上昇が加速した。日経新聞の報道の通り、「新型コロナウイルス感染拡大が収まらず、世界で経済の停滞が長期化するとの観測が強まり、安全資産とされる金が買われた」からだろう。金融危機への恐怖がNY金価格の上昇を加速させたかたちである。

ただ、注意しておかなければならないポイントは、T-Modelの「ゴールドシルバーレシオ」が急落したことだ。拙書『いま持っている株は手放しなさい!』のP164の第5章『金銀の価格比が教えてくれる金融危機の現実度』に詳しく説明しているのでそちらを参考にしていただきたいが、同指標は20年4月113.2と過去最高まで上昇した後、7月80.5まで急低下していることである。危機が起きるサインである80の分岐点まで低下したことになる。NY金が最高値を付けると色々な評論家が群がるように強気を唱えるのがマーケットの常で、日経新聞の記事を読んで「金を今すぐ買わなければ」と考えた方も多いのではないだろうか。だが、マーケットはみんなが強気になったときが転換点であることが多く、T-Modelのようなデータで分析する冷静な目を持つことが必要なのではないだろうか。