ドイツ銀行の上場来安値まで下落した株価は何を示唆する?

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ドイツ銀行の上場来安値まで下落した株価は何を示唆する?

2018/12/6日経新聞に『ドイツ銀 疑惑の連鎖~資金洗浄疑いで家宅捜索 株最安値、統合観測も』が報道されている。

『ドイツ銀行が再び苦境に陥っている。パナマ文書問題に絡んだ資金洗浄疑惑を巡り、独検察当局が11月末にフランクフルトの本店などを家宅捜索した。内部統制への懸念から、株価は12月5日に過去最安値をつけた。3期連続の最終赤字からの再生に暗雲が垂れこめ、ライバルとの統合観測も浮上している。

ドイツ銀の株価は5日、7ユーロ台まで下げる場面があった。年初からの下落率は約5割に達し、米欧の金融大手の中でも低迷ぶりが際立つ。株安に拍車をかけたのは深刻な資金洗浄疑惑だ。11月29日朝、フランクフルトのドイツ銀行の本店「ツインタワー」に警察車両が横付けされた。本店など6カ所に約170人の捜査員が入り、書類などを押収した。

検察当局によると、ドイツ銀行は顧客が租税回避地(タックスヘイブン)にいわゆる「オフショア会社」を設立するのを助け、ドイツ銀の口座に犯罪に関連した資金を移していた疑いがある。英領バージン諸島のドイツ銀の拠点が、16年だけで900人の顧客の3億1100万ユーロ(約400億円)の取引に関わっていたという。別の疑惑もある。デンマークの名門銀行、ダンスケ銀行エストニア支店の最大2千億ユーロ(約26兆円)の資金洗浄疑惑で、ドル資金の決済を取り次いでいたのがドイツ銀とされる。市場では疑惑が飛び火するのではないかとの警戒が根強い。

ドイツ銀行はこれまでも不祥事を繰り返してきた。16年12月には米国での住宅ローン担保証券(MBS)の不正販売問題を解決するため、72億ドル(約8千億円)を支払って米司法省と和解した。17年1月にもロシア富裕層の資産100億ドル超が不正にロシア国外に流出した取引に関わったとして、米当局などから制裁金を科されている。』

今回の資金洗浄疑惑も捜査の行方次第では制裁金が科される可能性があり、欧米メディアはドイツ銀行とコメルツ銀行の統合、また、米欧メディアでは米シティグループなどの名前が取り沙汰されている。ドイツ銀の信用リスクが一段と高まれば経営統合は現実味を帯びるが、その統合はドイツ銀の救済というよりは、破綻による金融システム不安を避ける延命策の色彩が強い。リーマン・ショック前にも、2008年3月に実質破綻していた米証券大手ベアスターンズを米銀大手JPモルガンチェースが救済した。

2018/12/03『12月11日、英国政府はEU離脱協定案の下院での採決を決定』のT-Modelコラムにおいて、『デリバティブ残高が50兆ドル(約5500兆円)に近づくといわれるドイツ最大の銀行であるドイツ銀行の株価が上場来安値となる8ユーロ割れまで下落しているのはこのデリバティブのリスクを織り込み始めているのかもしれない。』指摘した。

従って、ドイツ銀の問題は冒頭の報道のような資金洗浄疑惑よりも、巨大なデリバティブ残高である。この巨大なデリバティブ残高を含めてドイツ銀を救済合併できる金融機関が世界にどれだけ存在するのだろうか。

そして、そのドイツ銀のデリバティブの行方を左右しそうなのが英国のEU離脱問題なのである。英国に集中するデリバティブの精算機関、英ロンドン証券取引所グループ(LSE)傘下のLCHを英国のEU離脱次第で使用できなくなる可能性があるからである。

英国と欧州連合(EU)で合意した離脱協定案を英議会下院での採決を12月11日に行うが、離脱案の可決には下院の実質過半である320人をメイ首相が確保できるかが勝負だが、その道のりは厳しい。仮に、離脱案が否決されると英政府は21日以内に代替案を示すルールがあり、また仮に、代替案ができたとしてもEUとの再交渉で折り合えるとは限らない。その後は、2回目の国民投票、離脱期限の延期など、様々な対策が予想される。どの方向に進むかは別にして、このような複雑に絡む問題は来年3月29日の英EU離脱の期限に向けて浮上し、そしてそれは世界のマーケットの波乱要因になることは間違いないだろう。ドイツ銀行の株価から目が離せなくなってきている。