一年で最も下落しやすい9 月相場と一年で最もボラティリティーが上がりやすい10 月相場


一年で最も下落しやすい9 月相場と一年で最もボラティリティーが上がりやすい10 月相場

2021年10月2日日経夕刊に『波乱の10月、強気派の根拠』が掲載されている。

『一年で最も下落しやすい9月相場の次は、一年で最もボラティリティー(相場変動率)が上がりやすい10月相場を迎える。バンク・オブ・アメリカが1992年以降、月別の予想変動率を反映するVIX指数の動きを調べたところ、10月の平均上昇率は71%で最も高い。米連邦政府の債務上限問題や11月の開始決定が見込まれる量的緩和縮小(テーパリング)を控え、今年も懸念は強まる。米メディアでは過去の10月相場の紹介が相次ぐ。2008年9月のリーマン・ショック後の急落、ダウ平均が1日で2割下落した1987年のブラックマンデー、さらに大恐慌の引き金となった29年のブラックサーズデーだ。米国では株価が急落した日は「ブラック(暗黒の)」と形容される。

今回の上昇相場の主役である個人投資家も過去の経験則を知ると買いの手が引く。ゴールドマン・サックスの需給調査では9月後半の相場下落の主因を個人の売りとみる。ヘッジファンドなどからの売りは限られた一方、押し目買いに徹してきた個人が利益確定の売りを出し、下落に賭ける売り持ちを増やしている。マージンデット(証拠金債務)と呼ぶ信用買い残は8月末時点で9000億ドルを超え過去最大なだけに、個人の弱気転換は気掛かりだ。

一方、株価下落の引き金となった金利上昇は落ち着きつつある。長期金利は節目の1.5%を再び下回った。3月に付けた今年の最高水準(1.77%)には届かない。振り返ると長期金利は81年9月30日に15.8%(QUICK・ファクトセット調べ)と過去最高を付けた後、40年にわたる長期の低下局面に入った。ボルカー元米連邦準備理事会(FRB)議長が80年代に金融を急激に引き締め、高いインフレは終息。その後、相次いだ危機対応でFRBが政策金利を引き下げ、かつバランスシートの拡大を伴う金利抑制が続いた。長期金利は2020年3月の過去最低(0.31%)まで50分の1に低下した。1989年に2800億ドルだったFRBのバランスシートは8兆4000億ドルと30倍に膨らんだ。
金利のトレンドは簡単には変わらない。低金利環境の前提が崩れなければ株価調整も長引きにくい。10月の後半は、それまでの弱気の反動で年末にかけ堅調な相場になるベアキラー(弱気の撤退)への転換点になりやすいことでも有名だ。』

この記事で、「強気派の根拠」は長期金利の落ち着きと指摘している。だが、米国5年債利回りは9月28日高値1.042%と4月5日高値0.988%を超え、1年7ヶ月振りの水準まで上昇し、長期金利とは異なり落ち着いているとは言い難い。供給制約に伴うインフレが想定よりも長引くとの懸念が広まったためで、商品全体の値動きを示すCRB指数も15年5月以来の高値を記録した。

何故、この米国5年債利回りの動きが重要かというと、10年債利回りや30年債利回りも今年3月のピークを越える近未来の到来の可能性を示唆しているからである。特に、18年2月の「VIXショック」からの5年債利回り、10年債利回り、30年債利回りの動きは参考にすべきで、18年10月に原油価格が74ドルの高値まで上昇する過程で3つの債券利回りが急上昇、同時に、金利差が消滅した後に「世界同時株安」が起きている。「世界同時株安」は18年10月高値24448円から12月安値18948円まで-22%の大幅下落となっている。現在は、量的緩和によって原油価格やCRB指数に比べ不自然なほど低く抑えられている長期金利の水準であることが明らかであり、この不自然な乖離が米国のテーパリングをきっかけにどのようなかたちで修正されるのかが注目される。18年の動きからすると、5年債利回り、10年債利回り、30年債利回りの3つの債券の利回り差が縮小し始めると、それは株価の急落調整のシグナルとして特に注意が必要だろう。