世界最大級の資金調達となる12月上場予定のソフトバンク株の影響は?

SOFTBANK上場

世界最大級の資金調達となる12月上場予定のソフトバンク株の影響は?

2018/11/10日経新聞に『2.5兆円上場 広がる思惑~ 誰が買う?乗り換えは?』が報道されている。

『ソフトバンクグループ(SBG)の携帯子会社「ソフトバンク(SB)」が12月中旬にも上場する見通しとなった。親会社のSBGが売り出すSB株は2.5兆~3兆円ともいわれ、1度に市場から調達する額として世界の証券市場でも過去最大級となる。SBGとSBの株主はそれぞれ誰になるのか、市場では思惑が広がっている。』

今年2月8日、ソフトバンクグループ(SBG)は傘下の携帯事業会社ソフトバンク(SB)を東証一部に上場させる検討を開始したと発表した。上場が実現すれば、時価総額は7兆~8兆円規模、市場から調達する資金は2兆5000億円に上る過去最大規模のIPOとなる見通しである。過去、大規模新規上場の例は、公開直後に大幅な値上がりを見せたことで有名なNTTが約2.3兆円、2015年にお祭り状態となった日本郵政3社グループの合計でも約1.4兆円の調達金額で、いかに巨大な規模かが理解できるだろう。

このような巨大な資金調達が行われるIPOは市場のかく乱要因であり、注意しなければならない。2016/04/27 『世界最大の時価総額のサウジアラムコ上場で注意すべき3のな時期』のT-Modelコラムにおいて、

『アリババの上場がNYダウのかく乱要因になったが、その10倍もの企業価値を持つサウジアラムコの上場でも、上場前は購入資金づくりのための換金売りが始まり、上場月は銘柄乗り換えで指数を混乱させる、といった動きは変わらないだろう。だが、その激震度合は計り知れない。

1.株式上場の本申請を行った日、

2.上場日が決定した日、

3.上場日、

の3つとなる。

2015年に上場した郵政3社のケースで日経平均を振り返ると、申請直前の6月24日高値20952円でピークを打ち、更に、上場日正式決定前日の9月9日高値18770円まで大幅反発した後、9月29日安値16901円まで約10%下落した。中国の景気減速や元切り下げなど海外要因をきっかけにした世界同時株安に巻き込まれただけのように見える日本の株式市場だが、「クジラのような企業」が上場するときの株式下落のパターンを辿っているたことは忘れないことである。』と指摘した。

ソフトバンクグループは7月9日、通信子会社ソフトバンク株が東京証券取引所へ「上場予備申請」を行ったと発表。通常の「本申請」の前段階となる「予備申請」だが、本申請の前に行うことで証券取引所における審査を前倒しで進め、本申請後の審査期間を短縮する狙いがある。複数の企業が同じ時期に本申請を行っても上場日が集中しないための手続きである。ソフトバンクの場合は規模が大きいうえ、親子上場のため、通常より審査時間が長くなることから審査をできるだけスムーズに進めるために予備申請を行った可能性が高い。

7月当時、メディアでは「審査が順調なら東証1部に来春までに上場する見通し」と報じていたが、実際、東京証券取引所が上場を承認したのは11月12日で、「上場日は12月19日を軸に調整している」と日経新聞は報じている。かなりスケジュールが早まったかたちだか、実は、2018年10月4日、日本経済新聞は「ソフトバンクは10月中に東証から上場承認が下りる」という観測記事で、「上場承認は10月中で、上場日は12月中旬、具体的には12月19日を軸に調整が進んでいる」と報じていた。このような観測記事が報道されると銘柄を乗り換えるための売り圧力が強まることは当然。今10月の株価急落も世界同時株安が主因であることは間違いないが、ソフトバンクの上場も少なからず影響を与えていたのではないだろうか。特に、SB株は携帯電話事業を日本で展開することもあり、売り出しは国内、また消費者になじみのある事業でもあることから個人が買い手の中心になるとみられ、マザーズを中心とする小型株に特に影響を与えた可能性も容易に想像できる。実際、日経平均は10月2日高値24448円から10月26日安値20971円まで-14%下落したが、マザーズは10月2日高値1083から10月30日安値821まで-24%下落と、日経平均の下落率を大きく上回っている。

上場による2.5兆円の調達金額は有利子負債の返済や海外のIT企業への出資などに充当する見込みだが、それにしても何故、SBGはSB株をこの時期に上場させようと考えたのだろうか。

ソフトバンクグループの2017年度の売上高9兆1588億円に対し、「有利子負債」は2018年9月末時点で16兆6102億円と売上の1.8倍に膨らんでいる。16年7月に英半導体設計大手のARMを3兆円以上で買収した際に、みずほ銀行は1兆円の追加融資を実施したが、これ以上の追加融資は難しくなっている可能性もある。また、運用額10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」にサウジ政府系基金「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」が450億ドル(約5兆1000億円)出資することで合意していたが、サウジアラムコの上場中止やサウジ記者殺人事件などサウジの異変で大きな影響が出ている可能性も否定できない。そのため、2019年春とみられていた上場を早めたのかもしれない。

このようなSBGの個別の事情は別にしても、今後、SB株の上場は日本の株式市場において大きなかく乱要因となることは避けられないだろう。上場日まではその影響を軽視してはいけない時間帯が継続することは忘れてはならない。