世界株は初の時価総額100兆ドル超だが、GDPを2割上回る異常さ

世界株は初の時価総額100兆ドル超だが、GDPを2割上回る異常さ

2020/12/20日経新聞に『世界株 時価総額100兆ドル超 GDP2割上回る、緩和マネー過熱も』が報道されている。

『世界の上場株式時価総額が史上初めて100兆ドルを上回った。新型コロナウイルスワクチン普及への期待から経済正常化を市場が急速に織り込んでいる。各国の大規模な金融緩和や財政政策も株価を押し上げている。株価の適正水準を測る目安の一つとされる世界の国内総生産(GDP)を2割上回り過去最高だ。過熱感への警戒も根強い。

QUICK・ファクトセットによると世界の株式時価総額は18日時点で100兆1872億ドル(約1京319兆円、1京は1兆の1万倍)に達した。コロナ前の2019年末から17%増え、過去最高になった。コロナの感染拡大で株価が世界的に急落した3月に59兆ドルまで縮小したが、その後は政策対応にも支えられ上昇してきた。

国別で伸びを主導したのは、好調な最先端企業が多い米中だ。米国は21%増の42兆ドルに膨らみ、中国は48%増えて9兆ドルを突破した。日本は10%増の7兆ドルにとどまり、中国との差が開いた。欧州も6%増と伸び悩んだ。時価総額が世界最大の米アップルも65%増え、世界で唯一2兆ドルを超えている。コロナ後の新常態を見据えたマネーが大量に流入し、EVのテスラは9倍、半導体大手のエヌビディアは2倍となった。中国ではネットサービスの騰訊控股(テンセント)が56%増、アリババ集団が25%増と主力銘柄が軒並み拡大した。

急激な膨張に過熱感も強まっている。国際通貨基金(IMF)によると20年の世界の名目GDPは前年から4%減の83兆ドルとなる見通しだ。これまで世界の時価総額はGDPを小幅に下回る水準で推移してきたが、2割上回るのは異例だ。GDPに対する時価総額の比率は米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が株価の過熱を測る指標として指摘し、多くの投資家が注目している。株価の上昇は金融緩和頼みの面もある。ワクチンが普及して経済が正常化すると金融緩和が縮小し、相場の下押し圧力になるとの見方もある。』

2020/06/08「大量の資金供給によるマネーイリュージョン(貨幣錯覚)」のT-Modelコラムにおいて、

『この記事は私がいつも指摘する『ニューノーマル』の考え方を解説したものであり、マネーの供給量を増やし、株価を上昇させ、経済を引っ張るというものだ。5月雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比+250.9万人と市場予想の-750万人程度に反して大幅な増加に転じ、失業率も市場予想の20%を大きく下回る13.3%と、4月の14.7%から1.4ポイント低下した。景気や企業業績が良くなるから株価が上がるという『古い教科書』を前提にした市場関係者の予測が通用しないことを改めて証明した。ただ、予想外の改善を示した5月雇用統計だが、「見えない失業」も増えている。労働人口は3月1億6300万人から5月1億5800万人と500万人減少、職探しを諦めて労働市場から退出した離職者が多いことを示しており、こうした人口を加味すると、5月の実質的な失業率は+3%押し上げられ、16%台とも言われている。

米ゴールドマンサックスは失業率が1ケタ台に回復するのは1年後の21年4~6月以降と予測し、2ケタの髙失業率のまま11月の大統領選を迎える可能性があると指摘した。そのようにならないためにもトランプ政権は11月の大統領選に向けて「大量の資金供給によるマネーイリュージョン(貨幣錯覚)」を強めさせる可能性が高い。その結果、ダウ工業株30種平均は6月5日に前日比829ドル高と5日続伸、2月急落前の史上最高値まで8%に迫り、ナスダック総合指数は2月に付けた過去最高値を一時上回ったが、更に、株価は上昇する可能性が高いだろう。データの根拠なき万年強気論は論外だが、市場に氾濫する『古い教科書』を前提にした弱気の予測も雑音に過ぎず、あまり耳を貸さないことをお薦めする。』と指摘した。

冒頭の記事では、『国際通貨基金(IMF)によると20年の世界の名目GDPは前年から4%減の83兆ドルとなる見通しだ。これまで世界の時価総額はGDPを小幅に下回る水準で推移してきたが、2割上回るのは異例だ。GDPに対する時価総額の比率は米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が株価の過熱を測る指標として指摘し、多くの投資家が注目している。』と指摘しているが、現在のように大量にマネーの供給量を増やしている『ニューノーマル』の状態では、GDPに対する時価総額の比率の「バフェット指数」も『古い教科書』の指標になってしまっていることを示している。ちなみに、米国市場の「バフェット指数」は135%、日本が123%といずれも+1σを超える危険ゾーンに達している。つまり、同指標の異常な水準は、現在の株価上昇が「新型コロナウイルスワクチン普及への期待から経済正常化を市場が急速に織り込んでいる」のではなく、「金融緩和頼み」ということは明らかだろう。いつまでも『古い教科書』の指標で説明しようとしているところに無理があるのである。冒頭の記事にあるように「ワクチンが普及して経済が正常化すると金融緩和が縮小」する時が最も警戒すべきタイミングであり、コロナに襲われている現在の金融市場が楽観ムードでいられるのはとても皮肉な近未来を暗示しているのではないだろうか。