景気回復に着目した「よい金利上昇」はホント?

景気回復に着目した「よい金利上昇」はホント?

2021/2/5日経夕刊『流動性相場 脱却の兆し』が掲載されている。
『超低金利が株価を押し上げる「流動性相場」から脱する兆しが出始めている。4日のニューヨーク市場は米失業保険の新規申請件数が予想より少なかったことで長期金利が上昇。一方でS&P500種株価指数は最高値を更新した。金利は極端な上昇でなければ株価の逆風とはなりづらく、実体経済の動向に視線が向かいやすくなってきた。4日朝発表された1月24~30日の失業保険の新規申請件数は季節調整済みで77万9000件となった。市場予想(83万件)を下回り、雇用は回復に向かいつつあるとの期待が広がった。昨年終盤から新型コロナウイルスの感染が急拡大し、店舗営業などの規制が広がり、雇用への悪影響も懸念されてきただけに多くのエコノミストにとって予想外の減少となった。

いち早く反応したのが米長期金利だ。10年債利回りは一時1.16%台に上昇し、1月に付けた今年の最高水準(1.18%)に迫った。30年債は1.95%と約1年ぶりの高水準となった。モルガン・スタンレーのマシュー・ホーンバック氏は「米景気が金利動向の鍵を握る」とみて、2021年末に10年債は1.45%、30年債は2.40%に上昇すると予測する。景気回復に加え、21年終盤には米連邦準備理事会(FRB)が国債の購入を縮小するとの観測もある。21年の金利上昇は多くの市場関係者の基本シナリオとなっている。

1月半ばと少し様子が異なるのは株式市場の反応だ。1月6日にジョージア州の上院決選投票で民主党が勝利すると財政拡大の思惑から金利が急上昇し、株価に逆風となった。ところが2月に入ってからは金利上昇と株高が足並みをそろえるようになった。低金利が株高を支える流動性相場が崩れるという懸念より、景気回復に着目した「よい金利上昇」との捉え方が優勢となっている。米景気の回復期待は日増しに強まっている。コロナの新規感染者(7日平均)は1月上旬に24万人台にまで増えたが、足元では14万人を下回る。ワクチン接種も進み、感染は減少トレンドに転じたとの見方が増えている。

失業も昨年末に懸念されていたほどは増えておらず、企業の景況感も回復している。バイデン政権が掲げる1.9兆ドルのコロナ対策は協議中だが、市場では少なくとも1兆ドル以上になるとの見方が多い。ゴールドマン・サックスやバンク・オブ・アメリカなど年明け以降に21年の成長率見通しを引き上げる金融機関が相次いでいる。

長期金利は上がり始めたとはいえ、19年末よりは低く、歴史的にみれば超低金利であることに変わりない。景気回復とともに緩やかに上昇する程度であれば株高に水を差すものではないとの見方が広がりつつある。長らく続いた「流動性相場」は景気を重視する「業績相場」へと移りつつあるとも言える。』

この記事では『1月6日にジョージア州の上院決選投票で民主党が勝利すると財政拡大の思惑から金利が急上昇し、株価に逆風となった。ところが2月に入ってからは金利上昇と株高が足並みをそろえるようになった。低金利が株高を支える流動性相場が崩れるという懸念より、景気回復に着目した「よい金利上昇」との捉え方が優勢となっている。』、『「流動性相場」は景気を重視する「業績相場」へ』との指摘だが、このような内容を信じているようだと今後の相場を見間違えることになるのではないだろうか。

金利上昇と株高が足並みをそろえているかのように見えるのは、2月1日週1.06%まで拡大しているイールドスプレッドを無視して、成立が近づいている『バイデン政権が掲げる1.9兆ドルのコロナ対策』の量的緩和の方を重視しているだけに過ぎないからである。現在のイールドスプレッドは17年1月頃の水準まで拡大しており、当時のNYダウは約2万ドル前後。つまり、昨年のコロナショック以降のマネー供給がなければ2万ドル前後までNYダウが大暴落してもおかしくないということを示唆している。仮に、近い将来、金利上昇と株高の足並みがそろわなくなるとすれば、それは金利が上昇し過ぎて、マネー供給の量的緩和ができなくなるときである。記事では「金利上昇は景気回復に着目した良い金利上昇」と指摘しているが、原油価格が55ドル前後まで上昇していることが金利上昇の原因と考える方が自然である。従って、原油価格がさらに上昇するようであれば、米国景気に関係なく、長期金利は上昇することを意味する。その点も今後の相場の流れを見誤るポイントだろう。「どの水準まで金利が上昇すると量的緩和ができなくなるのか」。その一点に私の興味は移っている。