現金給付による相場の押し上げ効果は?

現金給付による相場の押し上げ効果は?

2021年3月16日日経新聞夕刊に『現金給付、個人が臨戦態勢』が掲載されている。

『「もうStimmy(スティミー)は届いた?」。オンライン掲示板「レディット」の個人投資家コミュニティー「ウォールストリート・ベッツ」。ゲームストップ株騒動で一躍有名となった「板」上では、新型コロナウイルス対策の一環でバイデン政権が実施する現金給付が話題になっていた。Stimmyは「Stimulus Check(景気刺激策の小切手)」の俗語だ。一部の個人は12日に給付を受け取っているという。書き込み内容は多岐にわたり、中には「政府からもらった小切手で、富裕層を攻撃する」といった物騒なものもある。1月下旬、個人がレディット上で「共闘」し、ゲームストップ株に買いを入れた結果、空売り勢は買い戻しを迫られ、損失を被った。個人が金持ちヘッジファンドを撃退した――。掲示板上には当時の高揚感が残っている。ゲームストップ株騒動の再現を狙っているようだ。

ウォール街も個人投資家の動きを注視する。ドイツ銀行は2月上旬、インターネット証券を利用する個人430人にアンケートを実施した。投資家の回答を集計したところ、今回受け取る給付金のうち平均で37%を投資に回すという。同行のストラテジストがアンケート結果を基に推計すると、株式市場には1700億ドルもの資金流入が見込める。米株式市場では個人の売買が全体の2割を占めるとされ、その影響力は無視できない。株式市場以外にもマネーは流れそうだ。暗号資産(仮想通貨)の代表格、ビットコインが13日、初めて6万ドル台をつけた。米オアンダのシニア・マーケット・アナリスト、エドワード・モヤ氏は、米政府による個人への現金給付の一部がビットコイン市場に流入するとの期待で、上昇相場が続くとみる。』

また、2021年3月18日日経新聞夕刊には『「恐怖指数」コロナ前水準に』が掲載されている。

『米株式市場で株安懸念が収束している。今後、1カ月間の急落への警戒を映す「恐怖指数」は米国で新型コロナウイルスが大流行する直前の水準にまで低下。米連邦準備理事会(FRB)が2023年までゼロ金利政策を維持する見通しを示し、市場に渦巻いていた不安が晴れた。ナスダック株やビットコインも上昇し、投資家の間で楽観論が再び勢いを増している。
17日の金融市場の話題は米連邦公開市場委員会(FOMC)に集中した。焦点は23年の政策金利の見通しだ。昨年12月と同様、ゼロ金利を継続する前提を示すか、市場では事前の見方も割れていた。18人のFOMC参加者のうち、11人が23年までのゼロ金利の想定だった。利上げを見通す人が増えはしたものの、市場が注目する「中央値」は変わらず、「大規模な緩和を長期間にわたり続ける」というFRBのメッセージだと市場は受け止めた。発表後、当面の金融政策の影響を受けやすい2年物や5年物国債の利回りは下がり、ナスダック総合指数が上昇に転じた。1月下旬からの長期金利上昇に株式投資家は警戒感を強めていたが、FRBのゼロ金利継続の回答を受け、懸念が和らいだ。投資家の安心を象徴するのが「恐怖指数」VIXの動きだ。17日には一時19.18まで下がり、20年2月以来の低水準となった。コロナ禍で続いてきた株高局面の中でも最も下値不安が乏しい状況となった。』

冒頭の記事で、『投資家の回答を集計したところ、今回受け取る給付金のうち平均で37%を投資に回すという。同行のストラテジストがアンケート結果を基に推計すると、株式市場には1700億ドルもの資金流入が見込める。』との指摘がある。日本円で何と18兆円もの巨額な資金が流入することには驚きである。それを端的に表しているのが新型コロナウイルスが大流行する直前の水準にまで低下したVIX指数なのだろう。だが、問題はそれをどのくらい織り込んでいるのかという点である。その織り込みかた次第で今後の相場の見方が大きく異なるためである。

T-Modelでは、以前からこの資金流入での相場の上昇を指摘してきたことから、「今さら感」は拭えないが、T-Modelの「マネーと相場」の関係を表すものとしてご紹介してきたのが「マネーサプライ」や「FRBの資産残高」。ちなみに、「FRBの資産残高」は直近で約7.7兆ドルだが、T-Modelの「マネーと相場」の関係では、すでに9兆ドル~10兆ドルまで株価は織り込んでいるかたちになっている。つまり、この「1700億ドルもの資金流入」はかなりの部分、相場に織り込まれていると考える方が妥当なのではないだろうか。このような「1700億ドルもの資金流入」を議論に持ち出す市場関係者は多い。だが、このような数値は折り込み度合いが人それぞれ曖昧で、この資金流入でどこまで上昇するかといった試算には使えないことが多いのである。もしこれが使えるとすれば、それは何も知らない投資家に買いを煽ることぐらいではないだろうか。このような情報に惑わされるとまたいつもの天井での買いになってしまうのではないだろうか。