米5月消費者物価が13年振りに5.0%へ上昇


米5月消費者物価が13年振りに5.0%へ上昇

2021年6月11日日経新聞に『米、物価上昇圧力続く~消費者物価5月5.0%上昇』が報道されている。

『米労働省が10日発表した5月の消費者物価上昇率は前年同月比5.0%に達し、4月から0.8ポイント拡大した。新型コロナウイルスワクチンの普及で急速に進む経済再開に部材や人手の供給が追いつかず、インフレ圧力となっている。米連邦準備理事会(FRB)は「一時的な動き」との判断を崩さないが、長期の金融緩和がリスク投資を刺激し、市場や経済に波乱を起こす懸念もくすぶる。

消費者物価指数(CPI、1982~84年=100)上昇率は3月以降、2%を上回り、5月は2008年8月以来約13年ぶりの高さとなった。変動の大きい食品とエネルギーを除く上昇率は5月に前年同月比3.8%と、1992年6月以来の伸びだった。「値上げは覚悟していたが、借りられないとは予想しなかった」。西部ワシントン州シアトルに住む企業経営者はこう話す。夏のハワイへの家族旅行を5月に予約したがレンタカーを確保できなかった。5月のレンタカー代は1年前から約110%上がった。中古車価格は30%近く、ホテルなどの宿泊代も10%上昇した。ガソリンは50%余り値上がりしている。需要が高まるなか、在庫や人手の不足という供給制約が物価を押し上げる。製造業のモノの入荷の遅れを示す米サプライマネジメント協会(ISM)の入荷遅延指数は5月、第1次石油危機のあった1974年以来の高水準になった。

FRBは前年の低迷の反動や経済再開時の需給のズレといった「一時的」な要因との認識をまだ変えていない。ブレイナード理事は1日の講演で「かつての金融政策の枠組みでは将来の高インフレへの懸念を払拭するために慣例的に先手を打って引き締めに動いたため、重要な雇用機会が失われ、目標を下回る物価上昇が続いた」と語った。5月のCPIを前月比でみると上昇率は0.6%と、高水準ながら4月から0.2ポイント鈍った。FRBは22年に入ると物価の伸びは落ち着くとみて、現在の大規模な金融緩和を拙速に修正することに慎重な姿勢を示している。

市場は緩和継続を織り込み、米長期金利が低下傾向。9日の米債券市場で10年物国債利回りは一時1.47%と5月上旬以来の低水準をつけた。10日のCPI発表直後には一時1.53%前後に戻したが、上昇の動きは限られた。』

「足元のインフレ加速が一時的なのか」。債券市場では「一時的」と見て日本など海外の投資家から米国債の購入で長期金利の上昇は抑えられている。長期的には、消費者物価と長期金利は連動するが、21年5月の「消費者物価-長期金利」が3.4%のように一時的に両指標が乖離する局面がある。1972年以降、両指標が乖離したのは、74年12月4.9%、80年6月4.3%、08年7月1.6%、11年9月1.9%。74年、80年は「インフレ期」、08年、11年は「金融危機」の時期に現れた現象だが、今回は「インフレ期」「金融危機」のどちらに分類すべき乖離なのだろうか。過去の乖離幅からみると21年5月3.4%の乖離幅はかなり大きく、近い将来、消費者物価が低下して乖離幅が小さくなるか、長期金利が上昇して乖離幅が小さくなるかのいずれかの経路を辿ることが予想される。FRBが主張するインフレは「一時的」との見方が正しければ前者だが、それが間違えであれば後者となって楽観的な現在の株式市場を揺るがすことになるだろう。今回の物価上昇の背景には人やモノの供給制約があり、雇用回復が鈍いままだとインフレも簡単に収まらない。失業手当が週300ドル上乗せされている9月上旬まで続く制度が就労を妨げているが、共和党が政権を握る25州は7月上旬と早めに打ち切る予定。それが反映される7月~9月の雇用統計がカギを握る。年後半までの経済統計を待つしかない訳だが、「消費者物価-長期金利」が大きな乖離が起きた後はいずれの局面も不況に陥っており、現在が不況の入り口に立っているということは忘れないことである。