議論が活発化した『米株はバブルか?』

議論が活発化した『米株はバブルか?』

先週は『米株はバブルか?』が活発に議論された週だったのではないだろうか。その代表的な記事を2つご紹介することにする。

その一つが、2020/9/4日経夕刊『「テックバブル崩壊」懸念』で、
『3日の米株式市場でダウ工業株30種平均は大幅反落した。下げ幅は一時1000ドルを超え、前日比807ドル(3%)安の2万8292ドルで引けた。ハイテク株の比率が高いナスダック総合指数は5%下落した。8月に大幅上昇したIT(情報技術)株を中心に利益確定売りが膨らんだ。最近の株高をけん引してきたIT株が軒並み値を下げたことで、市場では「テックバブル崩壊の再来」議論が再燃した。米メディアによると、独ベレンバーク銀行は顧客向けのメモのなかで「相場や投資家の動きに1999~2000年と類似点がある」と警告した。米電気自動車テスラのように株価の高いうちに新株発行を急ぐ企業が出たり、個人投資家の市場参加が高まったりしている状況が前回のテックバブルと似ているという。

現在の市場を取り巻く環境は、00年ごろの状況とは異なる点が多く、バブル懸念を示す専門家もすぐに崩壊すると予測する向きは少ない。(1)テクノロジー企業の破綻が相次いだ前回のバブルと異なり、株高をけん引しているIT大手が破綻する可能性は極めて低い(2)世界的な低金利で米株式相場に投資マネーが集まりやすい環境にある――といった点だ。だが、崩壊を予想する専門家もいる。「『ミンスキー・モーメント』が近づいている」。英RWアドバイザリー創業者ロン・ウィリアム氏は米経済局CNBCのインタビューにこう語った。ミンスキー・モーメントとは、一定期間続いた上昇相場が突然下落に転じる瞬間のことで、バブル崩壊を意味する。ウィリアム氏は、最近の株高が「テック大手5社だけの株高だったことを考えると、どこかで調整の時期が来る」と説明した。』

また、2020/9/5日経夕刊に『繰り返すミニバブル』も掲載されている。

『今週は週後半に株式相場は下落したが、短期調整とみなせば、米国株の上昇が長続きするための良いガス抜きとなる。世界でカネ余りが常態化する環境ではミニバブルの生成と崩壊を繰り返すためだ。9月に相場調整が入る兆しはあった。8月の上昇率としては歴史的な大きさだった前月に相場下落を見込んだ逆張りの売りの持ち高が過去最低になったためだ。ゴールドマン・サックスによると、S&P500種株価指数の時価総額に対する指数構成銘柄の売り残高の比率は8月に1.8%と算出を始めた2004年以降では最低となった。4月以降の想定以上の株高で、踏み上げ相場となり、空売り勢が持ち高解消を迫られた結果だ。米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和による株高には持続性がないとみていた売り方の「降伏」とも言える現象が起きた。こうした象徴的な出来事は短期的に上がり過ぎた相場の転換シグナルとなりやすい。

オプション市場では先高観に基づくハイテク株のコール(買う権利)への買いが活発化。S&P500指数のPER(株価収益率)は2日に23倍台後半と00年のITバブルのピークに付けた26倍に最接近した。過熱感が強まり、小さな材料に対する脆弱性が高まっていた局面で調整が起きた。相場が実体経済や企業業績から大きく乖離(かいり)すると、自律的に調整が入るのは過去に何度もみられた。もっとも、こうしたミニバブルの生成と崩壊の動きは繰り返し、次の相場の山は前回よりも高くなるのがカネ余り環境下でのパターンだ。6月に発生した相場調整では、主要株価指数はおおむね8月には下落前の水準を回復する「全治2カ月」だった。

S&P500指数の益回りから長期金利を差し引いて求めるイールドスプレッドは3.6%と債券との比較では株式の割安感が目立つ。金融環境が現在と異なるがITバブル時ではスプレッドがマイナスに沈み、株に異常な割高感があった。「債券バブルが崩壊しなければ、株バブルも崩壊しない」といった逆説的な解説も市場では聞かれる。異次元緩和の実体経済への良し悪しは後世の学者が判断するが、カネ余りが常態化する状況では本格的なリスクオフは長続きせず、再び株式に資金が流れる。4日は安全資産とされる金先物相場も続落していた。』

「バブル崩壊」か、それとも「単なるガス抜き」か。このように議論が二分されているような状況ではバブル崩壊が起きないのが経験則である。著書やセミナーで何度もしてきたように、相場が実体経済や企業業績から大きく乖離(かいり)している点に注目するとバブルであることは明らかだが、カネ余りが常態化する現在の状況ではまだバブル崩壊へと簡単には進まないだろう。いや進ませないと言った方が適切かもしれない。現在のバブルが崩壊すると、マネー資本主義の崩壊にも繋がる可能性があるからである。新著『暴落はまだ終わっていない!』で初めて明らかにしたT-Model新考案の「プライス・マネー・レシオ」は割安を示唆していることから、現在の「テックバブル崩壊」懸念は一時的で再度、上昇する可能性が高いことになる。そして、市場関係者の誰もがこのまま株は上がり続けるといった方向に傾いたときが最も注意すべき段階だろう。記事でも指摘されているように「債券バブルが崩壊しなければ、株バブルも崩壊しない」は正しい見方で、「金利」が大きな鍵を握っているのである。