20年度の黒字最大37兆円はどこまで実力か?


20年度の黒字最大37兆円はどこまで実力か?

2021年7月3日日経新聞に『年金運用、黒字最大37兆円』が報道されている。

『公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2日、2020年度の運用実績を発表した。37兆7986億円の黒字で、黒字幅は最大だった。年度の運用成績が黒字になるのは2年ぶり。新型コロナウイルスを受けた主要国の経済対策で大規模な財政支出や金融緩和が続き国内外の株価が大幅に上昇した。収益率も25.15%で過去最高だった。

GPIFは3月末時点の運用資産が186兆1624億円にのぼる世界最大規模の機関投資家。年金積立金の市場運用を始めた01年度から20年間の累積の収益額は95兆3363億円になった。20年度の黒字は国内株式で14兆6989億円、外国株式が20兆6658億円、外国債券は2兆6738億円だった。国内債券は2398億円の赤字だった。宮園雅敬理事長は発表にあわせた記者会見で「21年度は20年度のような一方的な株価の上昇が見込みがたい。よりきめ細かなリスク管理の必要がある」と話した。「コロナのワクチン接種が進んで、経済再開の機運が高まっている見通しがあるが、市場や政策がどう動くのか注視していく必要がある」と語った。

基本となる資産構成割合(ポートフォリオ)は、国内と外国の株式、債券それぞれ25%を目安にしている。宮園理事長は「いまのところ変える状況にはない」と明言した。市場の関心が高まる中国債券への投資については「(年金の)被保険者の利益の観点から適切な解を求めていきたい」と述べるにとどめた。利回りに限らず、外国人投資家への制約などの観点も踏まえて判断する考えを示した。』
5年に一度の見直しにより、GPIFの基本ポートフォリオは20年度から国内外の株式と債券に25%ずつ。外国債の割合を従来の15%から高める一方、国内債は35%から引き下げた。2年目を迎えた今回の資産構成割合の課題などを巡り、現在の市場環境や今後の見通しを踏まえた宮園雅敬理事長の発言が注目されたが、「いまのところ変える状況にはない」と明言。また、FTSEラッセル社は10月から世界的な債券ベンチマークの世界国債インデックス(WGBI)に中国国債を段階的に組み入れることから、GPIFも今後、中国の資本規制に伴うリスクと中国経済から得られるリターンをてんびんにかけ対応を迫られていることになる。

日経新聞では「黒字最大37兆円」を強調したいような記事だが、過去最高の収益率を記録したのは国内外の異常な株高が背景である。機関投資家としてのGPIFの実力として注目すべきは、運用成果の目安とする基準指標(ベンチマーク)との比較。国内外の株式、債券の4つのベンチマーク収益率を基本ポートフォリオの割合で加重平均した「複合ベンチマーク収益率」に対するGPIFの超過収益率は16年度以降、4年連続でマイナスが続いていたが、2020年度は+0.32%と僅かながら超過収益となった。ただ2006年度からの超過収益累計は-0.66%とマイナスであり、GPIFの運用チームにどれだけのコストがかかっているかは定かではないが、ベンチマークに負けるような運用チームで独自で運用する意味はあるのだろうか。GPIFの累計のパフォーマンスが日経平均と極めて連動性が高いことは独自の運用体制といはなっておらず、マーケット次第でパフォーマンスが大きく変動していることがそれを物語る。宮園雅敬理事長が「21年度は20年度のような一方的な株価の上昇が見込みがたい。よりきめ細かなリスク管理の必要がある」と話す一方、中国国債の組み入れについて「一つの選択肢としてありうる」と述べ、また、基本ポートフォリオからの乖離が認められる幅を活用して「取るべきリスクを取る局面もある」とリスクを取ろうとしようとしている。今年は逆に、リスクを縮小する運用方針に変更すべき時期を迎えているように思うのだが・・。