FRBパウエル議長が強調する「物価上昇圧力は一時的」を市場は信じているのか?

FRBパウエル議長が強調する「物価上昇圧力は一時的」を市場は信じているのか?

2021年4月10日日経新聞に『コロナ起点、進む物価上昇~米は2%超へ』が報道されている。

『世界で今春、インフレが進むとの見方が広がっている。米国は13日公表の3月の物価上昇率が1年1カ月ぶりに2%を超えそうだ。新型コロナウイルスの感染が拡大した1年前に上昇が鈍った反動に、巨額の経済対策による需要増などの構造要因が重なる。景気の過熱懸念が高まれば金融緩和の修正につながる可能性もある。英調査会社リフィニティブの市場予想集計によると、3月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.4%上がる。上昇率は1年2カ月ぶりの水準に達する。4~6月には3%を超えるとの予想も多い。米物価上昇率はコロナ前まで2%台だった。それが感染の広がり始めた20年3月に1.5%、4月に0.3%と急激に低下し、5月は0.1%まで落ち込んだ。経済活動にブレーキがかかり、生活必需品などを除いて需要が蒸発したためだ。原油価格の急落もあった。その反動で当面、前年同月比の数字が上振れしやすい状況が続く。こうした傾向は欧州や日本も共通する。3月は欧州が1年1カ月ぶりに1%台に達し、マイナス圏で推移する日本も下落幅が縮小する見通しだ。

(途中略)

米国の大きな課題はインフレリスクの制御だ。過度な物価上昇が続けば金融緩和の修正を求める声が強まる。1年前の移動制限や原油急落などの反動が薄れる夏以降の物価動向が焦点になる。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は物価上昇について「一時的」と繰り返し、23年までゼロ金利を続ける構えだ。』

約1ヶ月前の2021/03/15『4~6月の物価上昇圧力への備えはできているのか?』のT-Modelコラムにおいて、

『2021年3月11日日経夕刊では『家賃・人手 インフレの種に』では、

『オランダ金融大手INGのジェームズ・ナイトレイ氏は「供給能力の増強は一夜にしてできない。(供給制約は)企業の価格決定力を強め、インフレを長引かせる」と指摘する。全米自営業者連盟(NFIB)の2月の調査によると、今後3カ月の価格決定に関する意向で「引き上げる」から「引き下げる」を引いた差は34ポイントとなり、過去10年で最大となった。米連邦準備理事会(FRB)は一時的に物価上昇率が2%を超えても持続性には懐疑的で、21年末には再び2%を下回ると予測する。パウエル議長は2月下旬の公聴会で、2%の物価目標の達成には「3年以上かかるかもしれない」との見通しを示した。INGのナイトレイ氏は5~6月にかけインフレ率は3.5~4%に達し、今後2~3年は2.5~3.5%を保つとみる。必然的に長期金利には上昇圧力がかかる。空前の金融緩和と財政出動が絡み合った政策主導のインフレがどういう形で姿を現すのか、市場は引き続き警戒している。』と、インフレは一時的ではなく、長引く可能性を予測するFRBとは異なる見方も出始めている。特に、この記事で注目すべきポイントは「5~6月にかけインフレ率は3.5~4%」との指摘。仮に、この予測が現実化すると米長期金利は3%前後まで上がる可能性が高まるからである。

T-modelでは、「米長期金利は原油価格と連動する」との独自の見方を示してきたが、実は、原油価格の前年比は消費者物価との連動性も強い。昨年、コロナショックの影響で原油価格が低迷したことは記憶に新しいが、その反動で4~5月の消費者物価にかなり強い上昇圧力となる時間帯となることは明らかで、それは同時に、米長期金利の上昇圧力になる可能性がある。また、長期的には原油価格が100ドルに向けて上昇する過程をたどれば、それは米消費者物価も、米長期金利も上昇基調をたどる可能性が高い。まずは、今4~6月の米消費者物価の上昇圧力が米長期金利にどのように影響するのか。もうその影響を緩和する準備はマーケットに準備されているのだろうか。』と指摘した。

FRBのパウエル議長は物価について「経済活動再開に伴い消費が急速に持ち直すにつれ、上昇圧力がかかりうる」が、「上昇は一時的」と繰り返し、23年末までゼロ金利政策を続ける方針を強調する。だが、景気過熱を見越した動きはリスク資産へのマネー流入を通じて資産バブルにつながる懸念があり、FRBによる緩和縮小の予告で市場が混乱した13年の「テーパー・タントラム」再現の思惑も根強い。当時、米長期金利は1.6%から3%超に上昇したが、オランダ金融大手INGのジェームズ・ナイトレイ氏の予測通りに「5~6月にかけインフレ率は3.5~4%」が現実化すると、13年の「テーパー・タントラム」再現の可能性が強まるがどうなるだろうか。まだまだ5月~6月の物価上昇に遠く前哨戦の域はでないが、とりあえず、13日公表の3月の物価上昇率にヒントがあるかに注目である。