NYダウの昨年の最高値と今年の最高値

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NYダウの昨年の最高値と今年の最高値

2019/7/6日経夕刊に『強い雇用、利下げ期待後退』が報道されている。

『大幅な利下げは望み薄か――市場にそんな疑念が浮かんだ1日だった。5日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し祝日前の3日に付けた最高値を43ドル下回った。6月の米雇用統計が米景気の力強さを示し投資家心理を支えた一方で、米連邦準備理事会(FRB)が大胆な利下げに動くとの期待が後退したためだ。

非農業部門の雇用者数の前月比の伸びが22万4000人と5月の7万2000人から回復し、市場予想も大幅に上回った。増加幅は5カ月ぶりの大きさで、3カ月の平均も17万人台と3月以来の水準を回復した。失業率は3.7%と49年ぶりの水準だった前月から0.1ポイント悪化したが、労働参加率が0.1ポイント上昇し62.9%と3月以来の水準になった影響が大きかった。参加率が横ばいだった場合は、3.5%に低下していた計算になる。平均時給は前年同月比3.1%増と市場予想をやや下回ったものの、1年近く3%台の伸びを維持している。

雇用統計がまず揺さぶったのが米景気の減速を織り込んでいた債券市場だ。長期金利の指標となる10年物の米国債利回りは一時2.06%と3日の終値に比べ0.11%上昇(価格は下落)した。金融政策の影響を受けやすい2年物国債の利回りも1.88%と0.12%上昇する場面があった。金利先物の動向からシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が算出する政策金利の先行きを示す「フェドウオッチ」も激しく動いた。6月18~19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で8人が年内利下げ見通しを示して以来100%だった7月の利下げ見通しは一時100%を割った。』

また、2019/7/4日経夕刊『米株、利下げ依存の危うさ』では、

『3日の米株式市場でダウ工業株30種平均は朝方から上昇して始まり、前日比179ドル高の2万6966ドルで取引を終えた。2018年10月以来、9カ月ぶりに史上最高値を更新した。米連邦準備理事会(FRB)が早期に利下げに動くとの観測が一段と広がった。米景気の減速が意識されるなか、緩和期待が相場を押し上げた。

もっとも、金融緩和期待に依存した株高の持続性には疑問符が付く。ゴールドマン・サックスのヤン・ハチウス氏は「市場はFRBによる利下げを経済に関する未公表のネガティブな情報を持っているシグナルだと受け止める場合がある」と指摘。追加利下げを期待して米国債利回りをさらに低下させる悪循環に陥る可能性があると警告する。前回高値の18年10月3日から足元までのダウ平均構成銘柄の騰落率を見ると、首位はプロクター・アンド・ギャンブル(4割上昇)、2位はマクドナルド(同3割上昇)だった。前回の最高値更新時は、アップルやマイクロソフトといった米国のハイテク銘柄が相場を押し上げた。米国による中国ハイテク企業への締め付けや米中貿易戦争への懸念から、株式市場の主役は比較的景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄にシフトしている。

米企業の収益も減速傾向にある。ファクトセットによると、S&P500種株価指数の構成銘柄のうち、6月末までに第2四半期の業績予想を発表したのは113社。このうち8割にあたる87社が下方修正した。業績に裏付けされた株高から金融緩和への依存が進めば、相場が不安定になるリスクは膨らむ。』

この2つの記事で注目すべきポイントは、「金融緩和期待に依存した株高の持続性には疑問符が付く」であり、「前回の最高値更新時は、アップルやマイクロソフトといった米国のハイテク銘柄が相場を押し上げた。米国による中国ハイテク企業への締め付けや米中貿易戦争への懸念から、株式市場の主役は比較的景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄にシフトしている。」ことである。つまり、NYダウの昨年10月の最高値更新時と今回の最高値更新では中身が異なるということであり、その違いを理解しておかなければ今後の相場の先行きを見誤る可能性がある。

その答えとも言うべきポイントを2019/7/3日経夕刊『米株高「パウエル・プット」は限界か』で指摘されており、

『株式投資家VS債券投資家――。米経済調査会社A・ゲーリー・シリングのシリング社長は現在の金融市場を2つの投資家が対立する構図と説明する。「米連邦準備理事会(FRB)に忠誠を誓い利下げを信じて株を買う投資家と、利下げをしても景気後退は避けられないとみて債券を買う投資家に二分されている」というものだ。

確かに最高値を目指すこれまでの株高局面でも投資家のリスクオンの姿勢を反映した株式買いが活発になる一方で、債券相場も上昇していた。とくに投資信託と上場投信(ETF)への資金流入でみると、株式投信・ETFからは18年6~12月は毎月100億ドル以上の資金が純流出する一方、債券投信・ETFには18年10月からの3カ月間を除いて一貫して100億ドル以上の資金が純流入している。月間ベースで、株式投信に資金流入があったのはFRBが政策金利を据え置いた今年1月だけだ。それ以降も5月まで資金が流出、6月に入ってもその傾向は変わっていない。一方で債券投信には一貫して資金が流入している。』

株式から資金が流出し、債券に資金が流入している。それでも株価が最高値を更新したということは株式は先物を中心に買い上げられているということを示唆している。先物による株価上昇は不安定であり、急落調整がいつでも起こりやすい『米株、利下げ依存の危うさ』を示している。実際、主要米ハイテク企業の相対株価を見ると、米フェイスブックは昨年6月、米グーグルは昨年7月、米アップル、米アマゾンは昨年8月が最高値であり、まだ最高値である米マイクロソフト以外の米ハイテク企業の株価の勢いは無くなってきている印象である。このようなNYダウの昨年の最高値と今年の最高値の違いは相場の先行きの変化の兆しであり、米ハイテク企業の相対株価が昨年の高値を超えない限り、実質的にはNYダウが昨年の最高値を更新していないことを示している。NYダウの指数だけでは分かりにくくなりつつあることは米株の危うさを示す端的な例と言えるだろう。