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「テーパリングは来年半ばに終了」の「タカ派」見通し
「テーパリングは来年半ばに終了」の「タカ派」見通し
2021年9月25日日経夕刊に『「ハト派」議長、変わらぬ信頼』が掲載されている。
『今月最大の注目イベントだった米連邦公開市場委員会(FOMC)を22日に通過。FOMCは結果だけをみれば金融引き締めに前向きな「タカ派」だった。テーパリング(量的緩和の縮小)の年内開始は市場の予想通りだったが、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は記者会見で「テーパリングは来年半ばに終える」との見通しを示した。市場では1年ほどかけるとの観測が多かっただけに「縮小ペースが速い」と受け止められた。さらに、委員らが予想する利上げ開始時期も従来の2023年から22年に前倒しされた。
中央銀行がタカ派の政策を打ち出せば、各年限の利回りを結んだ利回り曲線は平たん化する。金融引き締めを織り込んで短期や中期の金利が上がりやすい半面、利上げによる景気やインフレの減速を映して長期金利の上昇は抑えられるからだ。だが、FOMC後の利回り曲線は逆に傾きが急になった。21日と24日の終値を比較すると、10年債利回りから2年債利回りを引いた値は0.07ポイント拡大した。利回り曲線の傾きが強まるのは景気回復期の現象だ。符合するように会合後の米株市場では資本財や素材など景気敏感株の上昇が目立った。タカ派のように見えても、FRBのハト派方針は変わらないと市場は見抜いているためだろう。
米投資調査会社アクション・エコノミクスのキム・ルパート氏は「利上げは多くの債券投資家の頭の片隅にもない」と指摘する。「FRBが実際に利上げするのはかなり先。市場はむしろ政策の枠組みがインフレを加速させるリスクを意識している」と話す。米金融機関のエコノミストの間でも22年中の利上げ開始を予想するのはごく少数派だ。市場関係者のこうした見方の背景にあるのが、市場に優しいパウエル議長の変わらぬ姿勢だ。22日の記者会見でも議長は「テーパリングと利上げの判断は基準が異なる」「利上げのテストを通過するにはかなりの時間がかかる」と従来の考えを重ねて強調した。』
この記事では「テーパリングは来年半ばに終える」との見通しを示したことが金融引き締めに前向きな「タカ派」と受け止められ、10年債利回りから2年債利回りを引いた利回り曲線が広がり、「利回り曲線の傾きが強まるのは景気回復期の現象」と指摘する。だが、T-Model理論では、「利回り曲線の傾きが強まるのは金融引き締め、利回り曲線の平たん化は金融緩和」と定義しており、この記事で指摘する「景気回復期の現象」かどうかなどは関係ない。現在の10年債利回りから2年債利回りを引いた利回り曲線は、金融緩和のピークである「逆イールド」示現後、今年3月15日週1.58%まで拡大する金融引き締めの過程に入っていたことを示している。昨年の「コロナショック」もその金融引き締め過程に起きたものなのである。その後、8月16日週1.03%まで利回り曲線が一旦、縮小する金融緩和的現象が起こっていたが、今回の金融引き締めに前向きな「タカ派」のFOMCの結果を受け、再び、金融引き締めに動き出したか、どうかを見極める段階。つまり、今年3月15日週~8月16日週の一時的な金融緩和的現象が終了し、再び、利回り曲線が広がる金融引き締め過程に復帰するかを見極める段階ということだろう。
もうひとつT-Model理論で重要なことは、金融緩和のピークである「逆イールド」が終了した後は、2000年以降の過去2回の局面で、10年債利回りから2年債利回りを引いた利回り曲線は最終的に2.5%超まで拡大、そして、大きなショックに発展しているといことだろう。現在はその最終局面へ向かう途中過程に過ぎないということを忘れてはいけない。この記事で指摘しているような「利回り曲線の傾きが強まるのは景気回復期の現象」との理解では全くの的外れの見解と言わざるを得ないだろう。従って、前回の2014年からの「テーパリング(量的緩和の縮小)」と比較して楽観視している市場関係者は多いが、10年債利回りから2年債利回りを引いた利回り曲線は当時とは全く異なる局面にあるため、楽観視していると大きな過ちを犯すことになるのではないだろうか。