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「中国版リーマンショック」の可能性は?
「中国版リーマンショック」の可能性は?
世界の金融市場でリスク回避の動きが広がってきた。ダウ工業株30種平均の終値は前日比614ドル(1.78%)安の3万3970ドル。S&P500種指数は75.26ポイント(1.70%)安の4357。ナスダック総合指数は330.06ポイント(2.19%)安の1万4713で取引を終えた。いずれも月初来では約4%下げている。中国の不動産大手、中国恒大集団の資金繰り不安が強まり、香港市場では不動産株を中心に株価が急落。欧米市場でも投資家心理が悪化しており、市場関係者の間では、中国政府が中国恒大のデフォルト(債務不履行)を容認し、株主や債券保有者に損失を負わせるとの見方が強まっている。
同社の負債総額は上場している不動産管理・開発会社の中では世界最大規模と云われるが、2021年9月19日日経新聞に『恒大、迫る巨額利払い~負債33兆円、資金繰り難一段と』で債務の詳細が掲載されている。
『恒大が返済資金に窮しているのは巨額の負債が要因だ。6月末時点の負債総額は1兆9665億元(約33兆4000億円)。1社で中国の名目GDP(101兆5986億元)の2%を占める。負債の内訳は、取引先へ支払うべき金額などを示す買掛金が9629億元(約16.3兆円)と最も大きく、負債総額の約半分を占める。恒大が破綻すると、下請け各社がすでに請け負った工事の代金などを回収できず、破綻が連鎖する恐れがある。次に多いのが借入金で5717億元(約9.7兆円)だ。銀行からの借入金のほか、主に外国人向けに販売された米ドル債(195億ドル)など債券が含まれる。流通市場でのドル建て債の利回りは56~800%超まで上昇しており、新規発行による借り換えは極めて難しいとみられる。17日の香港株式市場では、「恒大向けの与信が大きい」として中国の民営銀行、中国民生銀行の株価が約5%下落した。インターネットで出回る資料に、民生銀行の貸付金が金融機関のなかで最大となっているためだ。恒大が3割超の株式を握り、恒大に一定の貸し出しがあるとみられる盛京銀行への影響も不安材料だ。
恒大問題が中国経済に及ぼす悪影響はこれにとどまらない。恒大は前受け金に近い「契約債務」を2157億元(約3.7兆円)抱える。販売したものの引き渡しを終えていない住宅などを指す。中国でも日本と同様、未完成のうちに販売する「青田売り」が一般的だ。売り主が破綻すると、代金を支払ったにもかかわらず契約者が住宅を受け取れないリスクがある。土地使用権の売却収入が税収と並ぶ主要な財源となっている地方政府にも打撃だ。恒大などの不動産各社が高値で土地を購入しなくなると、地方財政に痛みを与える。
政府が救済するかどうかはなお不透明だ。中国共産党系メディア・環球時報の胡錫進編集長は16日、微博(ウェイボ)に「国が産業の構造を変えようとしている時はいくら企業の問題が深刻だからといって国がその企業を保護することはない」などと投稿した。華創証券によると、過去に中国国内で債務不履行(デフォルト)を起こした196社のうち処理方法として最も多いのは企業破産法に基づく「破産重整」の74社で約38%を占めた。これは債権者の同意の下で債務をカットし、営業を継続しながら再建を目指す法的整理の枠組みだ。華創によると、複合企業の海航集団や半導体の紫光集団もこの枠組みにあてはまる。経済への打撃を抑える手段として今後も出てくる可能性がある。債権者の同意が得られず、資産売却によって会社を清算する「破産清算」も14社(7%)にのぼった。』
9月下旬以降、過去に発行した社債の年内の利払い額は700億円を超える。米ドル債が計6億3110万ドル(約694億円)、人民元債が計3億5380万元(約60億円)で、リフィニティブによると、まず23日に米ドル債と人民元債の利払い日が到来する。利払い額は米ドル債が8353万ドル(約92億円)、人民元債が2億3200万元(約39億円)。ただ同債のコベナンツ(特約条項)によれば支払いの遅れがデフォルト(債務不履行)と判断されるまでに30日の猶予期間が設定されている。また元本は22年1月30日に米ドル債3億ドルの満期が到来する見込みで、仮に、何らかの方法で今回は利払いが行われたとしても危機は継続することになる。広東省深せんの同社本社では資金調達手段として社員や個人投資家に販売した資産運用商品「理財商品」の返済を巡って抗議活動が起きているが、国内で20万人の直接雇用と380万人の間接雇用を創出している同社の破綻は中国経済のみならず世界経済にも波及しかねない。
2021年9月21日ブルームバーグニュース『習主席が計算ミス犯すリスク、不動産規制で-市場は慌てて織り込みに』では、
『多額の負債を抱えた不動産開発大手、中国恒大集団を巡る危機はここ数カ月おおむね封じ込められてきた。しかし20日の市場は、習主席が中国経済を損なうことなく不動産市場の行き過ぎを抑制しようとする中で計算ミスを犯すリスクを慌てて織り込みに動いた。その結果生じた市場の混乱により、政策引き締めにブレーキをかける、あるいは少なくとも悪影響を限定的にするための措置を講じるよう中国指導部に求める圧力は一段と強まる可能性がある。』と報じているが、果たして中国当局に悪影響を限定的にする方法など持ち合わせているのか。市場はまだその可能性を期待しているように見えるが、むしろ当局が「政策ミス」を犯して「中国版リーマンショック」の「ハードランディング」に発展する可能性も想定しておく必要もあるのではないだろうか。先ずは23日の利払いに注目。