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「米家計の余剰貯蓄、年内にも底 債務膨張が消費に影」


「米家計の余剰貯蓄、年内にも底 債務膨張が消費に影」

2023年3月2日日経新聞に『米中、景気回復に不安~米家計の余剰貯蓄、年内にも底 債務膨張が消費に影』が報道されている。

『新型コロナウイルス下の財政支援で潤った米家計の余剰貯蓄が、2023年にも底をつけそうだ。インフレと金利上昇で家計の債務も膨張し、ローン延滞も増え始めた。消費に回せるお金が減る可能性がある。FRBによると、米家計は21年9月末時点で2兆2800億ドル(約300兆円)の余剰貯蓄を抱え、22年6月末にかけ24%減少した。ドイツ銀行のチーフ米国エコノミスト、マシュー・ルゼッティ氏が2月上旬に出した予測によると、余剰貯蓄は22年末でピーク時の半分以下となる1兆100億ドルまで減り、23年11月には底をつきマイナスに転じる。(途中略)

22年末の米家計債務高をみると、金利上昇で組成額が鈍化している住宅や自動車と比べ、クレジットカードローンが大きく伸びた。残高は前年比15%増の9860億ドルとなり、過去最高だったコロナ前を上回った。債務増加とともに延滞も増えてきた。90日以上という深刻な延滞に移行した債務の比率は22年末時点で4.0%と、9ヵ月間で1ポイント上昇した。所得が相対的に低いとみられる若年層での延滞像が目立つ。(途中略)

足元の米国個人消費は底堅い。1月の小売売上高は前月比3%増と市場予測を大きく上回った。米バンク・オブ・アメリカは、消費者がインフレにともない、必要な生活物資への支出を優先していると分析する。』

2023/02/20『過去最高に膨らんだ米カードローン残高が支える米国の個人消費の実態』のT=Modelコラムにおいて、

「T-Modelコラムで指摘したように、『貯蓄を切り崩して消費に充てることが限界を迎え、それを補うかたちでクレジットカードによる消費が急増している』のが実態で、そのクレジットカードの延滞・焦げ付きが目立ち始め、その結果、カード会社の貸倒引当金が増加している実態を報道している。実際、クレジットカードの貸倒比率は7~9月2.1%と、リーマンショック時の09年4~6月6.8%に比べ水準はまだまだ低いが、前年比では+34%増とリーマンショック時並みの勢いで悪化している。

米国の個人消費は、貯蓄取り崩し→クレジットカードから、いよいよ「資産効果」のみでしか支えられなくなってきており、今後は「米国株式と米住宅価格が下落するときに米国の個人消費は本格的に縮小する」可能性が高いことになる。現在のようにクレジットカードに支えられた米小売り売上高は前月比ベースで11月-0.6%→12月-1.1%と2ヵ月連続でマイナスに落ち込んでいるが、より注意しなければいけないのが移動平均ベースで、直近22年12月は0%とマイナス圏目前。実は、この移動平均ベースで、0%以下が表れると、過去、ITバブル崩壊やリーマンショック、コロナショックに発展しており、今回も「○○ショック」のシグナルとなるかが注目される。』と指摘。

米小売り売上高は前月比ベースで、22年11月-0.6%→12月-1.1%→23年1月+3.0%と、1月の小売売上高(季節調整済み)はロイターがまとめたエコミスト予想+1.8%増を大幅に上回り、「○○ショック」のシグナルは点灯しなかった。1月小売売上高の2021年3月以来、約2年ぶりの大幅な伸びとなったことをうけて市場では『借入コストの上昇にもかかわらず自動車などの購入が増加し、米経済が力強さを保っていることを示唆した』と指摘している。

たが、それは冒頭の記事にあるように、単に過去最高額に借金を膨らまして、消費を増やしたに過ぎないことは明らかではないだろうか。実際、個人消費の実態を示すクレジットカードの22年12月末ローン残高は前年比+15%増の9860億ドル(132兆円)と、最も高い伸びで過去最高に膨らみ、貸倒償却率も前年比+24%のスピードで同4%と、コロナショック時の5.3%には迫っている。

また、今後、注意しなければいけないのは借入全体の10%弱を占める自動車ローンで、22年12月末の貸倒償却率が前年比+42%と、リーマンショック時を上回る勢いで、2.2%とコロナショック時の2.4%に迫っているからである。そして、何故、クレジットカードローンと自動車ローンに注目するかというと、過去、両ローンの貸倒償却率が下げ止まるまで株価が下げ止まらない傾向があるからで、両ローンの貸倒はまだまだ始まったばかりにしか見えないからである。」と指摘。

冒頭の記事は、このT-Modelコラムをなぞった内容だが、深堀りが物足りないないのは「資産効果」による個人消費の部分だろう。米国の個人消費は緩和マネーの供給で株価と住宅価格がまだ高止まりしていることに支えられているのが現状であり、株価や住宅価格次第では個人消費は大きく崩れる目前となっている。特に、住宅価格は住宅着工などファンだメンタルとの連動性が高いことから緩和マネーで「株価操縦」が可能な株価よりは個人消費の先行きを占う指標としてより重要度増してきているのである。

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