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『米地銀に不安再燃の兆し NYCB株11%安、不動産に火種』

『米地銀に不安再燃の兆し NYCB株11%安、不動産に火種』

2024年2月3日日経新聞に『米地銀に不安再燃の兆し NYCB株11%安、不動産に火種』が報道されている。

『米国の地方銀行で再び経営不安の兆しが出ている。商業用不動産向け融資債権に関わる大型損失の計上により、前日に株価が4割弱下げたニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)は1日も11%安となった。ほかの米地銀や米国の不動産融資を増やしていた米国外の銀行にも不安は飛び火している。NYCBは前日比15%まで下げる場面があった。商業用不動産向け融資が比較的多い同業のM&Tバンクも1日に前日比5%安、ザイオンズは6%安となった。米地銀株を組み入れた指数「KBW地銀株指数」は2023年末比で9%下落した。23年3月のシリコンバレーバンク(SVB)破綻直後に急落した後、各行からの預金流出圧力の和らぎや米景気の軟着陸期待とともに、地銀株指数は持ち直してきていたが、商業用不動産向け融資を火種に不安が再燃した構図だ。

動揺が広がるきっかけはNYCBが1月31日に発表した23年10〜12月期決算。アパートやオフィス向けのローンで焦げ付きが生じた。与信費用が急増し、最終赤字に転落した。NYCBは、SVBの直後に破綻したシグネチャー・バンクの一部資産・預金を継承し、「勝ち組」地銀との評判を得ていた。シグネチャーが持っていた商業用不動産向け融資債権は引き継がなかったが、もともとNYCBは不動産融資が主力。集合住宅を含めた商業用不動産向け融資は全体の6割弱を占める。規模拡大に伴い銀行規制上の区分が変わり、同規模の銀行並みの貸倒引当金を積む必要があったことも、与信費用の増加につながった。(途中略)

米不動産調査会社グリーン・ストリート・アドバイザーズがまとめた米商業用不動産の価格指数は22年9月以降、前年同月割れが継続している。24年1月は前年同月比9.0%低い水準となった。

米商業用不動産向け融資の焦げ付きリスクは日本や欧州の金融機関にも飛び火した。ドイツ銀行が1日に発表した23年10〜12月期の米商業用不動産関連の引当金は1億2300万ユーロ(約195億円)と前年同期の4倍、前の四半期比でも2倍に膨らんだ。融資全体に占める米商業用不動産向けは2%未満だが「担保価値が低下する中、満期を迎えたローンの借り換えがリスクとなる」(ドイツ銀)と説明している。

日本ではあおぞら銀行が1日、24年3月期の連結最終損益が従来の240億円の黒字予想から一転、280億円の赤字になるとの見通しを示した。米国のオフィス向け融資の採算悪化を踏まえ、23年10〜12月期に324億円の引当金を計上した影響が大きい。24年3月期通期の米オフィス関連の与信費用は450億円に上る見通しだ。(途中略)』

米ニューヨーク・コミュニティー・バンコープ(NYCB)は貸倒引当金が5億5200万ドル(約810億円)に急増し、2023年10~12月期純損益が2億5200万ドル(約370億円)の赤字に転落、さらに70%の減配で1月31日の株価が1日で38%の記録的な急落となり、2月1日には安値5.51ドルと昨年3月に付けた5.81ドルの最安値を下回った。市場では商業不動産が次の波乱要因となる可能性を示す前兆として、他の米地銀や邦銀への波及を警戒する「ニューヨーク・コミュニティー・バンコープ(NYCB)」ショックを警戒している。

日本市場でもあおぞら銀が2月1日、今期(2024年3月期)純損益予想を従来の黒字から280億円の赤字に下方修正、15年ぶりの赤字転落で株価はストップ安、翌2月2日には安値2080円と2日間で34%下落し、リーマンショック時の08年10月以来の下落率となっている。同行は邦銀でありながら、アメリカ企業や不動産向け融資への積極姿勢で知られ、2023年末時点でアメリカの不動産向けの融資残高は約25億ドル(用途別では約4分の3がオフィス向け)に上り、ノンリコースローンの残高は18.9億ドルで、このうち、物件を売却しても融資の全額回収が困難と見られる案件は7.1億ドルと、全体の4割弱を占めている。

さらに、1月29日、香港の高等法院(高裁)は負債総額が2兆元(約42兆円)を超え、債務超過に陥っている中国不動産大手「中国恒大集団(China Evergrande Group)」に「清算命令」を出し、実質的な法的整理を命じたことで株価が急落、香港取引所は同社と子会社2社の株式取引を停止。取引停止前の恒大集団の株価は前日比24%安の0.163香港ドル(約3円)、傘下の電気自動車(EV)メーカー「恒大新能源汽車集団(Evergrande New Energy Auto Group)」は18%安の0.229香港ドル(約4円)、傘下の不動産管理会社「恒大物業集団(Evergrande Property Services Group)」は3%安の0.39香港ドル(約7円)だった。

このように世界的に不動産市場、特に、商業用不動産の不良債権が表面化するなか、株式市場は何事もなかったかのように上昇を続けているが、誰も不気味さを感じないのだろうか。実は、昨年3月、米シリコンバレーバンクが破綻したことをきっかけに、米シグネチャーバンク破綻、クレディスイス実質破綻、5月米ファーストリパブリック銀行破綻と金融危機が訪れたときに、NYダウは23年3月安値31429ドルから7月高値35645ドルまで+13%上昇。日経平均も23年3月安値26632円から6月高値33772円まで+27%上昇している。今回もNYダウは24年1月安値37122ドルから2月直近高値38783ドルまで+4%上昇、日経平均も1月安値32693円から36984円まで+13%も上昇しており、金融危機を覆い隠すように不自然に株価が上昇している。

それを端的に示しているのが、T-Model指標『Gold/silverレシオ』とNYダウである。同指標は直近24年1月15日週89.4倍と危機を示す「80倍」を超え、昨年3月の金融危機時に付けた90.9倍に迫っているが、昨年3月と大きく異なるのは、同指標と逆相関となるはずのNYダウが逆に上昇し続け、同指標と大きく乖離し続けていることである。低迷する中国からの逃避マネーが米国株を押し上げている部分もあるだろうが、それだけでは説明できない不自然なマネーが株価を押し上げている。昨年3月以降、いや同指標からみると22年8月以降、既に始まっているかのようにも見える危機を株価上昇で覆い隠すことで誤魔化してきたが、それがいつまでも続けることができるのか。今回、再び表面化してきた世界的な商業用不動産の不良債権の波がどこまで大きくなるかがポイントだが、それは中国「恒大集団(China Evergrande Group)」が中国本土がどのように処理されていくかが鍵を握っているのかもしれない。

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