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ソロス氏が『米ブラックロックの中国投資「損する公算大」』と指摘
ソロス氏が『米ブラックロックの中国投資「損する公算大」』と指摘
21年9月7日ロイター通信は『ソロス氏、米ブラックロックの中国投資「損する公算大」=WSJ』を報じている。
『9月7日、米著名投資家ジョージ・ソロス氏(写真)は米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に掲載された意見記事で、資産運用大手の米ブラックロックが数十億ドルを中国に投資していることについて「誤り」であり、同社の顧客は損をする公算が大きいと指摘した。ソロス氏は「中国に数十億ドルを注いでることは今や悲劇的な誤りだ」と主張。「ブラックロックの顧客にとって損をする公算が大きく、より重要なことは米国やその他民主主義国の国家安全保障上の利益を損なうことだ」と訴えた。
ブラックロックは先月、中国で現地子会社を通じて自前のミューチュアルファンド(オープンエンド型投資信託)の販売を開始。急成長を続ける中国の個人向け投信市場を取り込む狙い。中国政府は昨年4月1日、投信事業における外資規制を撤廃。ブラックロックが100%子会社で事業を展開する初めての外国資産運用会社になった。ソロス氏はブラックロックは中国の国有企業と民間企業を区別しているが、現実から程遠いと指摘した。』
また、21年9月8日日経夕刊では『中国不動産大手、波乱の芽』を報じている。
『「年内に予想外のことが起きるとすれば、中国だろう」。米証券ミラー・タバックのストラテジスト、マシュー・マリー氏は顧客向けメモでこう指摘した。中国政府が突如、IT(情報技術)大手や教育関連の規制強化に動き、投資家はリスクを再認識した。マリー氏が注視するのは中国恒大集団の動向。「デフォルト(債務不履行)が世界市場にもたらす影響を心配しなければならない」と述べた。
中国の不動産大手、恒大を取り巻く環境は厳しい。ロイター通信によると中国国内の格付け会社が2日、恒大債の格付けを引き下げ、清算決済機関である中国証券登記決済は3日、レポ取引における同社債の価値をゼロとした。上海証券取引所は6日、2022年7月満期の恒大債に異常な値動きがみられたとして、取引を一時とめた。恒大は10兆円近い借り入れを抱えている。中国政府は住宅市場の投機熱を抑えるため、国内の金融機関に対し、不動産会社への融資を絞るよう指導した。恒大は借り換えが難しくなり、資産売却を迫られている。8月末には投資家に、デフォルトに陥る可能性があると警告した。25年6月満期のドル建て債は額面1ドルあたり30セントを下回った。
国際資本市場協会(ICMA)によると中国の社債発行残高は5.8兆ドルで、米国(10兆ドル)に次いで大きい。運用者にとってポートフォリオから「中国」を完全に外すのは難しい。「中国の社債に投資する多くの運用者は、政府の介入がもたらすリスクの影響をどのように評価すべきか悩んでいる」。米運用会社アライアンス・バーンスタインのホア・チェン氏はこう明かす。波乱の芽は確実に育っている。』
中国恒大は1997年に許家印会長が広東省広州で創業した中国第2位の巨大不動産開発企業。中国恒大株は9月8日午前の取引で一時3.46香港ドルを付け、2009年の新規株式公開(IPO)価格3.5香港ドルを割り込んだ。年初来では約75%下げている。同社のドル建て債の多くは額面1ドルに対して30セントを下回って推移している。9月11日日経新聞の『ドル債2兆円市場揺らす』では、『リフィニティブによると、恒大の債務残高は266億ドル(約2兆9000億円)、このうち米ドル建てが195億ドルと7割を占める。ドル建て債はアムンディやUBSグループ、米ブラックロックなど世界の幅広い運用機関が保有する。』と報道され、またこの記事では「10兆円近い借り入れ」と指摘もあるが、恒大のバランスシートでは銀行や債券投資家が長期資金の提供を控える中で債務項目の記載額は減っているが、その一方で、商業手形など短期的な支払いを含む負債総額は昨年、過去最大の1兆9500億元(約33兆2700億円)に達していると云われている。ムーディーズも7日、中国恒大の格付けを「Caa1」から「デフォルトに陥っている可能性、あるいはそれに非常に近い状態」を示唆する「Ca」へとさらに3段階引き下げて、同社の流動性およびデフォルトリスクは「増大」していると指摘。またノムラ・インターナショナル(香港)のクレジットアナリスト、アイリス・チェン氏は債務再編は「ほぼ不可避だ」と述べ、政府の監督下でのディールに基づき、恒大が住宅引き渡しとサプライヤーへの支払いを確実にし、ドル建て債保有者は投資額の25%を回収するのが基本シナリオだと説明した。今回の危機の背景には「共同富裕論」を掲げ不動産市場に対する強力な規制を示した習近平国家主席の「政治的判断」があり、中国金融監督当局は21年1月から銀行の住宅ローンや不動産会社への融資に総量規制を設けた影響が大きい。日本経済の長期停滞の起点となったバブル崩壊も引き金を引いたのは旧大蔵省が1990年に導入した不動産融資の総量規制だったが、中国当局も過度に経済を冷やさずにバブルをおさえ込む難しいかじ取りを迫られるだろう。金融情報会社のREDDは『中国恒大が9月21日満期の2つの銀行からの融資に対する利子返済を止めるだろうと報告したが、これにより21日が中国恒大の破産を決定する「重大な岐路」となりそうだ。』と指摘しており、仮に、恒大が無秩序に破綻すれば金融システムへの脅威となる恐れがある。現状のマーケットをみると、この問題をどこまで織り込んでいるのか心配である。