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データを富の源とする進化する経済
データを富の源とする進化する経済
2019/3/1日経一面に『モノからデータへ偏る富』が掲載されている。『Neo economy~進化する経済』5回シリーズの最終回。
『データは富の源だ。産業革命以来、製造業中心だった経済は転換し、データを資源とするデジタル企業が主役となった。代表格の米アマゾン・ドット・コム。中小企業などに「マーケットプレイス」というネット小売りの場を提供し、膨大な売れ筋データを集める。09年から販売する自社ブランド品は靴やペット用品など約120種類にのぼるとの調査がある。何を自社ブランドとし、いくらで売るか。吸い上げたデータから戦略を導き出しているとされる。データを掌握した勝者が富を総取りする経済は格差を広げる。アマゾンの従業員数は60万人を超え、世界有数の巨大雇用主だ。アマゾンは18年秋、米国の従業員の最低賃金を時給15ドルに引き上げたが、創業者で最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾス氏の個人資産は1千億ドルを上回る。
モノ中心の経済は工場労働者ら大量の雇用を生んだ。厚さを増した中間層が消費を底上げし、経済を成長させた。だがデータ中心の経済は異なる。情報から細かく需要を読み取ればむやみな大量生産は不要になる。人工知能(AI)などによる自動化が進み、知識と技能のある人に富が集中し中間層が細れば、従来の成長の方程式は崩れる。1980年に20%超だった米国の製造業で働く人の比率は足元で8%台まで低下した。
一方、米国で上位10%層の所得が全体に占める比率は同時期に34%から50%弱に上昇している。日本、ドイツも同じ傾向だ。企業活動はグローバルに広がり、デジタル情報は国境を軽々と飛び越える。国家は形なき豊かさをとらえきれず、社会保障や税制といった再分配の仕組みは目詰まりを起こした。古びた政策は経済の急速な変化に追いつけない。』
この記事では「米国の製造業で働く人の比率は1980年20%超から足下8%台に低下」と指摘しているが、日本は24%から足下15%まで低下している。米国よりはまだ多いが、このように製造業の比率が落ちる世界的傾向は付加価値の減少で生産性の低下を招く。そして、中間層の崩壊にも作用する。
また、製造業の比率が低い米国の方が通常なら日本よりも生産性が低いのが自然だが、労働生産性は米国は世界4位、日本は世界20位でOECD世界平均よりも低い。このような労働生産性の違いが表れているのは、冒頭の記事にあるようにデータを資源とする世界的なデジタル企業が圧倒的に少ないためだろう。「米国で上位10%層の所得が全体に占める比率は同時期に34%から50%弱に上昇」との指摘があるが、データを資源とするデジタル企業は米アップル、米アマゾン、米グーグル、米ウーバーなどを見れば明らかなように、市場を寡占化する傾向が強く、それは所得の格差を大きくする原因なのである。
将来、日本は米国のようにデジタル企業を育て生産性を上げるのか、それとも製造業を再度、強化するかたちで生産性を上げる米国と違う道をたどるのか。その選択の岐路に立たされている。日本の教育は多少は変わってきたとはいえ、いまだ平均的な人間を育て、平均点を上げるような教育を続けている。このような教育では、日本に生まれるデジタル企業は米国や世界のデジタル企業をマネしてできたようなミニ版がせいぜいではないだろうか。それなら、製造業を再度、復活させる米国と違う道を選択するのも生産性を上げる一つの道ではないだろうか。米国での株式時価総額が1位マイクロソフト8478億ドル、2位アップル8153億ドル、3位アマゾン7961億ドルに対し、日本はトヨタの時価総額が21.5兆円が圧倒的1位を誇っている姿はその表れではないだろうか。