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人民元が抵抗線とされていた7元を突破

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人民元が抵抗線とされていた7元を突破

2019年8月18日日経新聞一面に『人民元、やまぬ売り圧力~需給反映なら10元割れも』が報道されている。

『中国が人民元の下落容認に再び動いた。米国との貿易戦争が激化するなか、輸出産業を支える狙いがあるとみられる。だが、実際には元はここ数年、激しい売り圧力にさらされることもあった。仮に元相場を市場の需給に委ねていればどうなっていたか。日本経済新聞の試算では1ドル=10元を割り込んでいた可能性もあるとの結果が出た。中国は当面、緩やかな元安に誘導しつつ、急落を防ぐという微妙なかじ取りを迫られる。

トランプ米大統領が第4弾の対中関税を9月から実施すると発表すると、元は抵抗線とされていた7元を割り込んだ。これを受けて米国は中国を「為替操作国」に指定。両国の攻防は関税戦争から通貨戦争に移ったかにもみえる。実際、中国は過去3、4年の間、人民元を高めに操作してきた。それを読み解くカギは当局が日々、取引開始前に示す基準値をめぐるルールの変遷にある。15年8月に切り下げと同時に、基準値を前日の上海市場の終値とほぼ同水準に設定するよう改革した。市場の売買需給を反映する狙いだったが、結果は急激な元安と資本流出に終わった。

軌道修正を余儀なくされ、複数通貨に対する値動きを加味したり、基準値の変動幅を市場の値動きより抑える仕組みを導入したりした。ただ、実際の取引では基準値を下回る終値を付けることが多く、市場実勢を映す旧方式のままなら基準値は11元前後まで下落していた可能性がある。日本経済新聞社と日本経済研究センターが19年1~3月の経済実勢から分析した元の理論値は6.74元。旧方式で試算した基準値と乖離(かいり)するのは、理論値では考慮しない市場需給がいかに元売りに傾いているかを示す。中国は世界2位の経済大国なのに私有財産の保護が十分ではなく、富裕層などが資産を海外にどう逃がすかを常に考えているためだ。

それでも中国が元安を容認したのは輸出企業の海外流出を座視できなかったからだ。足元の元相場は追加関税発動前より8%低い水準。ドル建て輸出への影響を試算すると、関税が重荷になる米国向けのマイナス効果は100億ドルまで縮み、非米国向けの採算改善も含めると1100億ドルものプラスになる。

ただ、元安観測が強まりすぎると対応は困難になる。介入で買った元は人民銀が抱え続けるので通貨流通量が減り、意図せぬ金融引き締めになる。外貨売りに伴う外貨準備の目減りも元安要因だ。』

冒頭の記事で興味深いのは『ドル建て輸出への影響を試算すると、関税が重荷になる米国向けのマイナス効果は100億ドルまで縮み、非米国向けの採算改善も含めると1100億ドルものプラスになる。』という試算だろう。これではトランプ政権が目的とする中国との貿易赤字縮小には向かわないどころか、中国も米国との貿易交渉において時間稼ぎが可能になってしまう。米国が中国を「為替操作国」に指定するのも無理もないのではないだろうか。ただ、中国もジレンマがあり、中国の富裕層などは資産を海外にいかに逃がすかを考えていることから元安圧力がかかる一方、それに対抗するかたちで当局は元買い介入を実施するため通貨供給量が減る意図せぬ金融引き締めになることだろう。

また我が国でもこの米中の通貨戦争で影響が出始める可能性がある。ドル元が抵抗線とされていた7元を割り込んだことで円元でも元安が進行、円元は15年6月に1元20.23円まで円安が進んだが、直近では16年9月以来となる15円台とピークから25%もの円高が進行している。当然、中国からの輸入にはメリットは大きいが、問題は低迷する日本の消費を一部カバーしてきたインバウンドが減少する懸念が出てきていることである。以前から何度も指摘しているが、訪日外国人の前年比、特に中国人の訪日はこの円元に連動しているからである。10月に消費増税を控える日本において、インバウンドが減ることは既に冷え込んでいる日本の消費を一段と冷え込ますことになりかねないのである。今月21日に7月訪日外客数が発表され注目されるが、8月以降の訪日外客数にも目が離せなくなってきている。

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