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円安の悪影響や商品価格の値上げへの不安で悪化した「2024年4月景気ウォッチャー調査」

円安の悪影響や商品価格の値上げへの不安で悪化した「2024年4月景気ウォッチャー調査」

内閣府は24年5月10日、「2024年4月景気ウォッチャー調査」を発表。同指標は株価の1~2ヶ月先行指標で政府統計では最も有効。

2024年4月「街角景気」の「現状判断DI」は前月比-2.2%Pの50.2%(原数値)と3ヵ月振りに悪化。実態を示す前年比ベースは-5.5%と3ヵ月連続でマイナス圏に陥り、「-5%超」は22年12月以来、1年4か月振りの大きさ。ただ、水準は景気の別れ目となる50%を3ヵ月連続で上回るも、ここ半年は50を行ったり来たりしているのが実態。人の流れの活性化がプラスの影響を与えているものの、物価高や令和6年能登半島地震、4月からの値上げや負担増に対する防衛意識などがマイナスの影響を与えている。「円安を受けた値上げの影響が大きい。1つ1つは小さな値上げだが、家計への影響が大きいことを消費者は重く受け止めており、購入量が減少している(その他飲食[ワイン輸入])。」「円安が一段と進んでおり、材料などの価格高騰が深刻である。自動車関連が相変わらず不調で、更に天候不順の影響もあり、受注量が減少している(パルプ・紙・紙加工品製造業)。」などの声が上がっている。尚、メディアでは、2016年10月分から発表を開始した「季節調整値」を使用しているが、現状判断DIは前月比-2.4%Pの47.4%と2か月連続で悪化、景気の別れ目となる50%を2か月連続で下回り、今年2月にも指摘したが、4月も「原数値との格差が大きく違和感がある。」。今年2月、「特に、驚いたのは、24年1月分から現状判断DIを23年9月49.9→50.7、10月49.5→50.7、11月49.5→50.8と突然50以上に上方修正していたことで、50以下では不都合があったのだろうが、これは改ざんに近く、色々な統計でこのようなことが行われている可能性には注意が必要だろう。」と指摘したが、今3月・4月の原数値との乖離は辻妻が合わなくなった可能性がある。

T-Modelにおいて「景気判断」に最も重要なのは移動平均との乖離幅で、23年1月-2.0%→2月+1.5%→3月+4.8%→4月+4.5%→5月+2.5%→6月+0.9%→7月+0.1%→8月-1.5%→9月-3.1%→10月-2.6%→11月-2.0%→12月-0.4%→24年1月-2.8%→2月+0.5%→3月+2.3%→4月+0.0%と推移。0%と景気回復と後退の分岐点に差し掛かっている。尚、内閣府は「穏やかな回復基調が続いているものの、足踏みがみられる」から「穏やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」に、23年9月以来の下方修正をしている。

2─3カ月先を見る「先行き判断DI」は前月比-2.6%Pの49.3%と、2ヵ月連続で悪化。実態を示す前年比ベースでも-5.9%Pと、2ヵ月連続でマイナス圏に陥り、「-5%超」は22年11月以来、1年5か月振りの大きさ。景気の別れ目の50%は4ヵ月振りに割り込んでいる。人の流れの活性化への期待がある一方で、円安の悪影響や商品価格の値上げへの不安などがマイナス要素となっている。「急速な円安傾向が継続すれば、各種値上げとこれに伴う家計防衛により、消費が減退することが大いに危惧される(その他小売[ショッピングセンター])。」「円安の影響で輸入品の値上がりが止まらない。余り単価が高くなると売上は伸び悩むことになる(衣料品専門店)。」など。尚、「季節調整値」は前月比-2.7%Pの48.5%と2ヵ月連続で悪化。景気の別れ目となる50%を6か月振りに下回り、原数値と方向性が同じで違和感はない。前述のとおり、24年1月に突然、政府の景気判断に影響する現状判断DIのみが昨年9月分から3か月分上方修正されたが、先行きDIは修正されなかった。また、「先行き判断DI」-「現状判断DI」が7月-1.1%P→8月-2.8%P→9月-0.7%P→10月-0.3%P→11月-0.4%P→12月-2.3%P→24年1月+4.5%P→2月+3.2%P→3月-0.5%P→4月-0.9%Pと2ヵ月連続でマイナス圏に陥っている。23年が23年7月~12月まで「6か月連続」マイナス圏、22年が22年3月~7月の「5か月連続」マイナス圏、22年9月~12月の「4か月連続」マイナス圏と、コロナ以降、同指標の連続マイナス圏の時期が増えている。通常、「先行き判断DI」・「現状判断DI」の「逆転現象」は「先行き」に期待が持てない状態が続いていることを示すと同時に、今4月分のように過去、景況感の先行き悪化を示唆するシグナルとなっていることから注意が必要である。

一方、関東地区の先行きDI(家計関連)は前月比-2.0%P の49.6%と2ヵ月連続で悪化。実態を示す前年比ベースでは-5.3%Pと2ヵ月連続でマイナス圏に陥り、「-5%超」は22年11月以来、1年5か月振りの大きさ。景気の別れ目の50%を4ヵ月振りに割り込んでいる。また、全国先行きDI(家計関連)49.3%であることから、前の月と異なり、関東地区が上回り、その結果、「関東-全国の差(移動平均ベース)」は、23年1月-1.3%→2月-1.8%→3月-1.7%→4月-1.5%→5月-1.3%→6月-1.2%→7月-1.0%→8月-0.5%→9月-0.3%→10月-0.2%→11月-0.2%→12月-0.0%→24年1月-0.2%→2月-0.2%→3月-0.2%→4月-0.1%と推移、23年12月に一旦、0%まで戻したが、実質では27ヶ月連続マイナス圏と、実態は2年以上も関東地区は全国を下回っている。同指標は関東地区が地方に比べ世界の金融危機に左右されやすい経済構造になっていることを利用して発見したT-Modelオリジナル理論。過去、07年の「サブ・プライムローン問題」、08年の「リーマン・ショック」、11年「欧州債務危機」、15~16年の「チャイナ・ショック」、2020年「コロナショック」など世界的な金融危機の局面で大きく悪化している。世界的な金融危機は水面下で起き続けていることを示しているが、それを表面化させないように覆い隠しているのが現在の株高政策。実体経済と乖離した株高はいつまで続けられるのだろうか。

また、T-Modelオリジナルの同指標は10ヶ月先の日本の株式市場を占う上でも重要な指標。同指標は22年11月を戻りのピークに、23年4月-1.9%と、過去最悪だった12年12月-2.1%に迫る水準まで急落。19年7月ピーク+1.2%→20年4月ボトム-1.6%、20年11月ピーク+0.7%→21年6月ボトム-1.6%と同様に、コロナショック以降、3度目の「危険な時間帯」がいまだ続いていたが、逆に、株価を吊り上げる不自然な「株価操縦」で危機を覆い隠しているかのようにも見える。以前からセミナーなどで『T-Model分析では、今回のバブルは「2つのバブル」が形成されており、22年1月から始まった米国の株価・債券市場の暴落は「コロナショック」後に作られた2つ目の「コロナバブル」が崩壊しただけで、T-Model理論では、現在は逆イールド(10年-2年)を深堀りにすることで金融緩和状態を作りリバウンド相場を演出している。』と分析したが、この見方は変わらない。このようにイールドを使った株価延命策は11月の「大統領選挙」のためだが、投資の神様であるバフェット氏は米国内外の株式相場の高騰は「カジノ的」だと警鐘を鳴らし、バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイバークシャー保有するキャッシュは3月末時点で1889億9300万ドル(約28兆9000億円)と23年末比13%増え、過去最高を更新したが、6月末には2000億ドル(約30兆6000億円)と更に増える、つまり株式を売却すると見込みだとバフェット氏は説明した。

2024年5月10日日経新聞に『米利回り逆転、戦後最長~景気後退の予兆、過去10回不況入り』が報じられている。

『米国債券市場で長期金利が短中期の金利を下回る「逆イールド」が1年10カ月続いている。第2次世界大戦後で最も長い。インフレ圧力が根強く、高水準の政策金利が続いているためだ。逆イールドは景気後退と株安の予兆とされる。今回は楽観する声が多いが、金融引き締めが長引くとともにリスクも増している。

債券は通常、満期までの期間が長い方が利回りが高い。元本回収に時間がかかるほど、経済や物価の変動リスクは増える。その分、投資家は高い金利を求めるためだ。(途中略)今回の逆イールドは米連邦政府(FRB)が2022年3月に始めた利上げがきっかけだ。同年7月から2年債と10年債の利回り逆転が続いている。24年3月には、これまで戦後最長だった1978年8月から80年5月までの約1年8か月を上回った。(途中略)

第二次石油危機の影響などで深刻なインフレが起きていた1970年代終盤は、79年に就任したボルカーFRB議長が「ボルカーショック」と呼ばれる急激な引き締めを行い、逆イールドが長期化した。インフレ退治には成功したが、景気は80年に後退した。リーマンショック前の引き締め局面では、2006年8月~07年3月前後に逆イールドとなり、07年末に景気後退局面に入った。いずれも景気悪化を受けてFRBが利下げに転じ、2年債利回りが下がる形で逆イールドが解消された。』

冒頭の記事にあるように、「逆イールド」がこれまで戦後最長だった1978年8月~80年5月には1980年大統領選挙が実施され、共和党のロナルドレーガンが当選し、ジミーカーター民主党政権から政権移行した。2006年8月~07年2月の「逆イールド」は2008年大統領選挙が実施され、民主党バラク・オバマが当選し、ジョージWブッシュ共和党政権から政権移行、その前2000年2月~2000年12月の「逆イールド」は2000年大統領選挙が実施され、共和党のジョージWブッシュが当選し、ビル・クリントン民主党政権から政権移行した。過去の例だと、大統領選挙と「逆イールド」が重なるケースは「逆イールド」による歪からか、「政権交代」が起きやすく、戦後最長の「逆イールド」と重なる今回の2024年大統領選挙も「政権交代」が起こる可能性を示唆する。

もう一つ注目しているポイントは、2024年11月の大統領選挙まで「逆イールド」を続けられるかということである。戦後最長の「逆イールド」だった1980年の年も大統領選挙前の5月に「逆イールド」が途切れているからである。5月3日発表された4月雇用統計は市場の予想を下回り、9日に発表された新規失業保険申請件数も23.1万件と、前週分改定値の20.9万件や予想の21.5万件を上回る悪化で昨年8月以来の高水準となった。また「非農業部門雇用者数」と連動性の強い米国ISM非製造業総合景況指数は4月に前月比2ポイント低下の49.4と市場予想52を大きく下回り、22年12月以来となる50割れとなった。『ISM非製造業景況指数が50を割り込むことは珍しい。過去、2000年ITバブル崩壊、08年リーマンショック、20年コロナショックと大きな不況に発展するケースぐらいである。』と指摘したが、5月以降も50割れが続くようだと大きな不況に発展する。前回50割れとなった22年12月は1か月だけで50割れを脱出したが、それは株価吊り上げによって先送りしただけで、今回も不自然な株価吊り上げで22年12月のように50割れを1ヶ月で脱出できるのか。同指数と「非農業部門雇用者数」との大きな乖離を見る限り、相当な改ざんが行われていることは間違いない。「逆イールド」がいつ終了するかはまだ分からないが、確実なことは戦後最長の「逆イールド」は「リーマンショック」を超える大不況を醸成しているということである。

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