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市場が期待する米連邦準備理事会(FRB)による早期利上げ停止が市場崩壊を早める?
市場が期待する米連邦準備理事会(FRB)による早期利上げ停止が市場崩壊を早める?
2018/12/15日経新聞夕刊に『萎縮する米株投資家』が掲載されている。
『投資家は徹底した資産防衛に傾いている。バンクオブアメリカ・メリルリンチが14日配信したリポートによると、12日までの1週間に世界の株式で運用するファンドから390億ドル(4兆4000億円)の資金が流出した。週間では過去最大だ。リスク回避時に買われやすい債券からも131億ドルが流出しており、投資家が資産の現金化を急いだ様子がうかがえる。
来週、相場の材料になりそうなのが18~19日に米連邦準備理事会(FRB)が開く米連邦公開市場委員会(FOMC)。今年4回目の利上げが確実視されているが、最大の注目点は参加者らが予想する来年の利上げ回数で、「2回」に減るとの見方が支配的だ。会合後に出す声明文にも関心が集まる。「政策金利の段階的な一段の引き上げ」という文言から「一段の」が削除されるとの見方があり、そうなればFRBのハト派寄りの姿勢が株式市場で好感されるだろう。
だが、米株のラリーは短期で終わる可能性が高い。もう1つの懸念材料である米中交渉が進展しても、本質的な解決につながらない限り株価の反応は限られそう。市場を覆っている不安の根は、米企業の業績そのものに移っているからだ。
QUICK・ファクトセットが14日公表したリポートによると、アナリストが予想する米主要500社の2018年10~12月期の利益は、前年同期比12.8%増と7~9月期の26%増から減速が鮮明になる。19年年間では8.3%増とさらに伸びが鈍る。中国や欧州の景気減速、ドル高、人件費上昇に加え、来年後半からは米国景気にも陰りが出る可能性があるためだ。』
今週の最大の注目イベントは18、19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)。米連邦準備理事会(FRB)による利上げが早期に停止するとの観測が市場で強まれば、これまで進んできたドル高の流れが変わる可能性がある。
18年11月末のパウエルFRB議長の講演で、政策金利が景気を過熱させず冷やしもしない中立金利を「わずかに下回る水準にある」と述べ、それまでの「まだ距離がある」との発言を修正したためだ。9月時点でFRBは19年に3回の利上げを見通していたが、市場では1回や0回との利上げ回数に傾き始めており、今回のFOMC声明文の内容やパウエル議長の記者会見での発言によっては利上げの早期停止観測に一気に強まる可能性がある。ドル指数は年明けから約6%上昇したが、そのドル高を支えてきたのが米国の利上げと堅調な米経済。利上げの早期停止観測が強まり、さらに米景気の減速が鮮明になれば来年は円高・ドル安の可能性が強まってくる。
2018/10/29『ドルインデックスの15 年サイクル』のT-modelコラムにおいて、
『外為市場で40年の経験を持つAGビセット・アソシエーツのウルフ・リンダール最高経営責任者(CEO)は、2024年までにドルがユーロに対し約40%下落すると予想している。理由は単純だ。ドルは1970年代以降、下落と上昇を15年周期で繰り返しており、今やそれが再現されつつあるとみるからだ。リンダール氏の予想は突拍子もなく、理由付けも単純過ぎると受け取る向きもあるようだ。ただ、ドルは昨年9%下落し、ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオ氏も9月にドル急落を見通している。これらを考慮すると、まったく途方もない予想だとは言えなさそうだ。同氏は昨年のドル下落はほんの始まりにすぎないと警告し、24年までに1ユーロ=2ドルに、対円では1ドル=75円へと下げが進むと見通す。ブルームバーグがまとめたアナリストの予測中央値は22年で1ユーロ=1.28ドルとなっている。』を紹介。
また、『この話はどこかで聞いたことはないだろうか?『生活防衛の教室リアルセミナー』にご参加いただいている方なら覚えている方も多いだろうが、T-Modelの『ドルインデックスの15年サイクル』説である。この説を初めてご紹介したのは13年4月20日の『生活防衛の教室リアルセミナー』。T-Modelの『ドルインデックスの15年サイクル』説にようやく気がつく外国人投資家が現れたとの印象だが、この記事にもあるように「投資家はドル相場の15年サイクルについて知らされると、まず懐疑的な反応を示し、存在を否定しようとする」のが現実だろう。だからこそ、投資の世界は1割の勝者と9割の敗者しか存在しないのである。
そして、冒頭の記事ではまだ指摘はないが、16年の拙書『そして偽装経済の崩壊が仕組まれる』では、第三章「ドルインデックス・サイクルが予告するもの」(P118)で詳しく説明しているのでそちらを参照していただきたいが、
『歴史をひも解いてわかるのは、米国が約15年おきに突如として金融面・通貨面での「ルール変更」に踏み切ってきたことである。
米国はドル高政策を行って、最後の最後にこのルール変更を実行する。引きつけて引きつけて、ドカンというかたちを取ってきた。今回もおそらくこの手法を踏襲するだろう。』と指摘。まさに現在はこの金融面・通貨面での「ルール変更」前夜というタイミングに入ったのではないだろうか。米国が世界の資金を集める手段としてのドル高政策が維持できなくなるとき、それが現実化する可能性が強まる。もしT-Modelの『ドルインデックスの15年サイクル』説を未だ懐疑的にみているような方は既に、負け組の9割に入り口に立っていることに早く気付くべきではないだろうか。』と指摘した。
現在の市場の萎縮は、この『ドルインデックスの15年サイクル』説に気付き始めたためかもしれないと思いたいがそうではないだろう。いや、ここまでの長期的なドル下落につながるとは市場は夢に思っていないはずである。緩和の現状で米連邦準備理事会(FRB)による利上げが早期に停止するとの観測を市場が歓迎しているからである。過去を振り返ると、ドルの長期的下落の始まりは、米連邦準備理事会(FRB)による利上げ停止後、引き下げが始まるとその引き金を引いている。ただ、現在の市場関係者は早期にそれを望んでいるかのように見え、それはほとんどの市場関係者がFRB利上げが現在の株価下落の原因と考えている。勘違いとはこのように恐ろしいもので、間違った考え方が市場を支配するときにマーケットは崩壊する。10年前と同様にである。