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日銀は株価上昇の牽引役から株価の足を引っ張る存在へ

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日銀は株価上昇の牽引役から株価の足を引っ張る存在へ

2019/2/18 日経新聞に『日銀「爆買い」に限界論~ETF に含み損リスク』が報道されている。長文の記事なので重要な箇所を抜粋すると、『日経平均株価は 13 年初めは 1 万円近辺だったが、18 年は 2 万円を超える水準で推移しバブル後最高値も記録した。

こうした株高局面で日銀が購入した ETF の簿価も上がった。日経平均株価に換算すると当初は 1万円以下だったが、今では 1 万 8400円程度だ。簿価が大きくなれば、株価の変動が含み損益に与えるインパクトも比例して大きくなる。株価の上昇傾向が続いた18 年 9 月末時点で、日銀が保有する ETF の含み益は 7 兆円強あった。だが昨年末の株安を受けて一気に 2 兆円程度まで減った。

JP モルガン証券によると株価が 1 万 8400 円前後と現在の水準より 1 割ほど下がると日銀の含み益は吹き飛び、逆に含み損が発生する。ETF を売って損を確定させなくても引当金を積む必要が生じ、利益や自己資本が目減りする。日経平均が 1 万 7700円前後まで下がれば赤字に陥る可能性がある。日銀の自己資本は 8 兆円なのに対し、1 月末の ETF 保有額は簿価でその 3倍の 24 兆円。大きなリスクを内に抱えている。

仮に赤字転落や資本が急減する事態になっても、日銀が倒産することはない。
とはいえ政府の資本注入が必要になれば、通貨の信認が落ちる恐れがある。資本注入のコストは国民負担となり、ETF を買い続ける政策の意義に対する追及が強まるのも必至だ。』

日銀の ETF 買い入れは、「資産買入等の基金の運営として行う指数連動型上場投資信託受益権等 買入等基本要領」が 2010 年11 月 5 日に制定・公表されたのを受け、2010 年 12 月に開始された。当初の購入上限は 4500 億円だったが、13 年の黒田総裁の就任後、購入額が 16 年には年 3 兆円から 6 兆円に倍増した。1 月末の ETF 保有額は 24 兆円規模まで膨れあがっている。

アベノミクススタート時点では、株価を押し上げる一つのエンジンとしての大きな役目を果たしてきたが、17 年 4 月以降は株価を押し上げる役目は全くなく、むしろ、ETF の年間購入額減額や購入とりやめなどを決定すると株価急落のきっかけをつくる存在に変化しているのである。つまり、株価上昇の牽引役から株価の足を引っ張りかねない存在と言えるだろう。それどころか、冒頭の記事では、日経平均が 18400 円前後で簿価割れ、17700 円前後で赤字転落、更に、11700 円前後で日銀が債務超過に陥る可能性を示唆したことで、投機筋の外国人が今後、日本株の下落を仕掛けるときのターゲットとされることは間違いないだろう。当面のターゲットとしては 18400 円前後ということになる。

アベノミクスによる株価対策の是非は置いておくとして、景気回復の実感が薄いとはいえ日本人に来るべき危機を先送りして、のんきに暮らす時間的猶予を与えてくれてきたことは間違いない。その時間的猶予が限界に達し、いよいよその先送りしてきた危機が日本人を襲う可能性を冒頭の記事は告げているのである。この「時間的猶予の時間に何をしてきたのか」、その先送りしてきた危機が到来したときにそれを突きつけられる近未来が迫ってきている。

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