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香港株式の暴落が示唆することは?
香港株式の暴落が示唆することは?
2022年10月24日日経新聞に『香港株寄り付き 大幅続落、中国経済の先行き不安強く ネット大手安い』が報道されている。
『24日の香港株式相場は大幅に続落している。ハンセン指数は前週末比316.37ポイント(1.95%)安の1万5894.75と、心理的節目の1万6000を割り込んで始まった。下落率は一時3%を超えた。中国経済の先行きへの根強い懸念が投資家心理を冷やしている。中国共産党は23日、第20期中央委員会第1回全体会議(1中全会)を開き、習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)の3期目続投を正式に決めた。李克強(リー・クォーチャン)首相の引退が決まり、習氏が「ゼロコロナ」政策を維持するなか、市場では今後の経済運営への不安が強まっている。
中国国家統計局が取引開始後に発表した7~9月期国内総生産(GDP)は前年同期比3.9%増だった。市場予想(3.2%増)を上回り、伸び率は前期の0.4%から加速した。今回のGDPは当初の発表予定の18日から延期されていたものだが、今のところ特に相場の支援材料にはなっていない。
電子商取引のアリババ集団などの大型ハイテク株が大きく下げている。香港取引所やアジア保険のAIA、不動産、航空、発電、食品株も安い。半面、中国自動車の長城汽車や香港電力のCLP(中電控股)が高い。中国ニット衣料の申洲国際集団控股が堅調。香港上場のハイテク関連銘柄で構成する「ハンセンテック指数」も大幅安となっている。』
香港で記憶に新しいのは中国政府による香港の民主主義運動弾圧ではないだれうか。2020年6月30日に香港での反政府的な動きを取り締まる中国の「香港国家安全維持法(国安法)」が施行され、国家からの離脱、転覆行為、テロリズム、香港に介入する外国勢力との結託といった犯罪を犯した場合、最高で無期懲役が科されることとなった。「民主化運動の女神」として日本でも有名だった周庭(アグネス・チョウ)さんは2019年6月に香港政府の「逃亡犯条例」改定案に抗議し、デモを扇動したとして、2020年12月に禁錮10カ月の実刑判決を受けた後、21年6月12日、香港の刑務所を出所した。それ以来、彼女を見ることは無くなったが、このような影響から香港の総人口は、2019年末752万人から21年末速報値740万人に減少、日本の人口に換算すると約200万人減少となっている。あれだけの民主主義運動弾圧の割には人口の減少は軽微との印象と思うのは私だけではないだろう。
実は、現在の香港株の急落は20年の国安法以上に新型コロナウイルス感染症対策の中国式の「ゼロコロナ」政策の影響が大きいかもしれない。各国は経済活動を重んじる「ウィズコロナ」へと転じる中でも、香港は習近平政権の強いグリップの下で「ゼロコロナ」政策を強いられ、外資企業や外国人駐在員の香港からの撤退が相次いでいる。欧州連合(EU)の香港事務所は今年2月、香港在住のEU市民の1割がすでに香港を離れたと警告する書簡を当時の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に送った。また、米国政府が3月に発表した報告書では、21年に約8.5万人いた香港在住の米国人は約7万人まで減っていると指摘する。
「中国には上海や深圳があるから、香港を失っても大丈夫だろう」という意見も散見されるが、中国国内の中心地である上海・深圳の機能と、国際金融センターの香港が果たす外貨調達の機能は根本的に異なる。米国の香港商工会議所が昨秋行った会員アンケートでも、香港にとって「最大の脅威となるライバルはシンガポール」と回答した割合が80%と、上海(10%)や深圳(8%)などを圧倒的に上回った。中国が香港を失えば、それに代わるのはシンガポールなどの外国であり、中国にとっては純然たる損失に終わる。
冒頭の記事にあるように、香港ハンセン指数は10月23日の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)の3期目続投を懸念してなのか、22年10月24日15894まで急落した。史上最高値の2018年1月32887からは-51%下落と半減している。2001年以降の最安値は03年3月8634だが、その前のボトムであるリーマンショック直後の09年2月12812が次のターゲットとなりそうで、現在の水準からは更に約2割の下落を意味する。