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「購買力平価」は何故、2ヶ月遅れで公表されたのか?

「購買力平価」は何故、2ヶ月遅れで公表されたのか?

2024年5月17日日経新聞に『理論値より安い円、デフレ初期は「高い日本」』が掲載されている。

『外国為替市場での円安基調が続いている。円安によって、海外から見ると日本のモノの値段や人件費は安く映る。物価や景気からみた理論値と比べると実勢レートは大幅に円安に傾いている。代表的な理論値が内外の物価が均衡する為替レートの水準を示す「購買力平価」だ。為替相場は短期では様々な要因で変動するが、長期的には2国間の財・サービスの価格が均衡する水準に収束するという考え方だ。同じ商品が米国で1ドル、日本で100円で買えれば、為替相場は1ドル=100円が妥当と判断する。

国際通貨研究所が日米の消費者物価指数(CPI)から算出する購買力平価(1973年基準)は、3月時点で1ドル=107円46銭。この理論値に比べて同月の実勢値は1ドル=149円台と円相場は割安だ。長らくデフレに悩んできた日本だが、為替の実勢レートは購買力比べ円高で推移してきた。1990年代はまだ国内製造業が強く貿易収支は黒字で、実勢の円相場はCPI対比で円高傾向だ。実勢レートが購買力平価より円安になるきっかけとなったのが、2013年以降の日銀の異次元緩和だ。日米金利差の拡大が円売り圧力となった。製造業が海外に拠点を移し、輸出が増えないことも要因となっている。

現在は円安でも貿易赤字が続く。訪日客の増加でサービス収支の旅行収支が黒字になっても、海外テック企業が提供するクラウドサービスなどへの支払い増による「デジタル赤字」で帳消しになってしまっている。円安は国内に付加価値の高い産業が育たず、生産性の低迷を金融緩和で支える日本経済の現状を映しているともいえる。』

先ず、「購買力平価」公表の件だが、2024年5月18日の生活防衛の教室リアルセミナーでも指摘したように、セミナー直前までは「購買力平価」は1月108.2円のままで、この記事が掲載された後、2月107.56円、3月107.46円の2か月分がまとめて2ヵ月遅れで発表された。何故、「2ヵ月遅れの発表」となったのか?

その原因は明らかになることは無いだろうが、その間に起きたことを検証することである程度の推測が付く。この間に起きたことは、日経平均が人工的な円安を背景に2024年3月22日高値41087円で34年振りに史上最高値を更新、ドル円が2024年4月29日に160円と34年振りの円安を更新、日本政府は過度な円安に対して、昭和の日の4月29日に1ドル160円で、5月1日に157円で約8兆円規模の為替介入を行った模様で、その後、NYダウが2024年5月20日高値40077ドルで史上最高値を更新している。イエレン米財務長官は5月23日、為替介入について「日常的に使われる手段ではない」「介入は極めてまれであるべきだ」とする立場を改めて表明、「介入がまれであることを願う。そのような介入がめったに起きず、過度な変動がある場合に限定され、事前に協議があることが期待される」と強調したが、日本政府が単独で為替介入を行えるはずもなく、イエレン財務長官の発言も「茶番」と推測される。今回の一連のマーケットの動きを時系列で検証すると、22年10月の為替介入でも噂されたように米国への資金供給のための為替介入が日米合作で行われたと考える方が自然で、ただ、2ヵ月遅れとはいえ、「購買力平価」をここで発表してきたということは実勢のドル円も目先は一旦、円安ピークを示唆するシグナルなのではないだろうか。

実際、「円売り投機筋ポジション」も4月26日週-179919枚と、リーマンショック直前の17年前に付けた過去最高の07年6月25日週-188077枚に並んだ。当時と今回が似ているのは、実勢のドル円とドルインデックスの乖離が大きくなっていることで、「円キャリートレード」が積み上がるかたちで「円売り投機筋ポジション」が過去最高に膨らんでいると推測される。今回のように過去最高レベルの「円売り投機筋ポジション」が積み上がった2007年を振り返ると、07年6月25日週-188077枚→08年3月24日週+65900枚と「円売り」から「円買い」に転換する過程で、ドル円も07年6月11日週123円→08年3月24日週99円まで約24円幅、約19%の円高となっている。当時も「円キャリートレード」の巻き戻しが起きたわけだが、今回も約20兆ドルに積み上がっていると云われる「円キャリートレード」の巻き戻しがいつ、何を契機に起きるのか。間近に迫っている。

また、冒頭の記事では、「購買力比べ円高」なのは「貿易収支が黒字」のためで、現在「購買力比べ円安」なのは「貿易収支が赤字」だからと説明するが、本当だろうか?実際に「購買力平価-ドル円」と貿易収支を比べると、「購買力平価-ドル円」は-43.9円に対し、貿易収支は24年3月4910億円の黒字と、連動性はあまり見られない。つまり、貿易収支が「購買力平価-ドル円」の説明要因ではないことを示しているが、セミナーやT-Modelコラムで何度も指摘してきたように、これまで世の中になかった発見がT-Model理論『日米現金比率(ドルベース)』なのである。同指標は「購買力平価と実勢のドル円」の乖離を唯一説明できる指標として発明・発見した。実は、このT-Model理論『日米現金比率(ドルベース)』は両国の中央銀行が人為的に行うもので、アベノミクス以降、明らかに不自然な動きを示していることは日米合作で何かが行われてきたことを示している。そして、それは明らかにファンダメンタルとは関係のない不自然な為替相場となっており、いずれその不自然さが明らかになる日が来るだろうが、何がきっかけになるのか。だが、もし、それが明らかになるときはリアルの経済は想像を絶する衝撃が走ることだけは間違いないだろう。

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