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インフレ懸念で2ヶ月連続で悪化した「2024年5月景気ウオッチャー調査」

インフレ懸念で2ヶ月連続で悪化した「2024年5月景気ウオッチャー調査」

内閣府は24年6月10日、「2024年5月景気ウオッチャー調査」を発表。同指標は株価の1~2ヶ月先行指標で政府統計では最も有効。

2024年5月「街角景気」の「現状判断DI」は前月比-3.4%Pの46.8%(原数値)と2ヵ月連続で悪化。実態を示す前年比ベースは-7.7%と4ヵ月連続でマイナス圏に陥り、2ヵ月連続「-5%超」は22年10月~12月の3か月連続以来、1年5か月振り。ただ、水準は景気の別れ目となる50%を4か月振りに割り込んだが、ここ半年は50を行ったり来たりしているのが実態。人の流れの活性化がプラスの影響を与えているものの、物価高や令和6年能登半島地震、4月からの値上げや負担増に対する防衛意識などがマイナスの影響を与えている。特に電気料金値上げの影響が大きい。「ゴールデンウィーク時にはファミリー層が多く来店したほか、母の日ギフトの購入者が多く推移している(百貨店)。」「電気料金の値上げや物価の高騰により、生活必需品以外の販売量が減少している。日々の生活で必要な物のみ購入されることが多く、買上点数の減少が顕著となっている(コンビニ)。」などの声が上がっている。尚、メディアでは、2016年10月分から発表を開始した「季節調整値」を使用しているが、現状判断DIは前月比-1.7%Pの45.7%と3か月連続で悪化、景気の別れ目となる50%を3か月連続で下回り、原数値と同じ方向に落ち着いてきた。今年2月に「特に、驚いたのは、24年1月分から現状判断DIを23年9月49.9→50.7、10月49.5→50.7、11月49.5→50.8と突然50以上に上方修正していたことで、50以下では不都合があったのだろうが、これは改ざんに近く、色々な統計でこのようなことが行われている可能性には注意が必要だろう。」と指摘し、また「今3月・4月の原数値との乖離は辻妻が合わなくなった可能性がある。」と指摘していた。

T-Modelにおいて「景気判断」に最も重要なのは移動平均との乖離幅で、23年6月+0.9%→7月+0.1%→8月-1.5%→9月-3.1%→10月-2.6%→11月-2.0%→12月-0.4%→24年1月-2.8%→2月+0.5%→3月+2.3%→4月+0.0%→5月-2.9%と推移。4か月振りにマイナス圏に陥り、景気後退を示唆している。尚、内閣府は4月に「穏やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」と23年9月以来の下方修正をしたが、それを継続した。

2─3カ月先を見る「先行き判断DI」は前月比-1.6%Pの47.7%と、3ヵ月連続で悪化。実態を示す前年比ベースでも-7.1%Pと、3ヵ月連続でマイナス圏に陥り、2ヵ月連続「-5%超」は22年9月~11月の3か月連続以来、1年4か月振り。景気の別れ目の50%は2ヵ月連続で割り込んでいる。人の流れの活性化への期待がある一方で、円安の悪影響や商品価格の値上げへの不安などがマイナス要素となっている。先行き判断でも電気料金値上げの影響が大きく出ている。「人の動きが新型コロナウイルス感染症発生前に戻りつつあると実感している。また、インバウンドを含め、観光が更に活発になると想定している(百貨店)。」「物価上昇が先行しているため支出が増えており、節約しながら生活している。加えて、電気代が高騰することで更に家計を見直す必要があり、厳しい状況が続くと考えられる(その他飲食の動向を把握できる者[酒卸売])。」などの声が上がっている。尚、「季節調整値」は前月比-2.2%Pの46.3%と3ヵ月連続で悪化。景気の別れ目となる50%を2か月連続で割り込み、原数値と方向性が同じで違和感はない。前述のとおり、24年1月に突然、政府の景気判断に影響する現状判断DIのみが昨年9月分から3か月分上方修正されたが、先行きDIは修正されなかったためである。また、「先行き判断DI」-「現状判断DI」が7月-1.1%P→8月-2.8%P→9月-0.7%P→10月-0.3%P→11月-0.4%P→12月-2.3%P→24年1月+4.5%P→2月+3.2%P→3月-0.5%P→4月-0.9%P→5月+0.9%Pと3か月振りにプラス圏に浮上した。ただ、23年が23年7月~12月まで「6か月連続」マイナス圏、22年が22年3月~7月の「5か月連続」マイナス圏、22年9月~12月の「4か月連続」マイナス圏と、コロナ以降、同指標の連続マイナス圏の時期が増えている。通常、「先行き判断DI」・「現状判断DI」の「逆転現象」は「先行き」に期待が持てない状態が続いていることを示す。先月、「今4月分のように過去、景況感の先行き悪化を示唆するシグナルとなっていることから注意が必要である。」と指摘しましたが、実際、5月は悪化しました。

一方、関東地区の先行きDI(家計関連)は前月比-1.4%P の48.2%と3ヵ月連続で悪化。実態を示す前年比ベースでは-6.2%Pと3ヵ月連続でマイナス圏に陥り、2ヵ月連続「-5%超」は22年9月~11月の3か月連続以来、1年4か月振り。景気の別れ目の50%を2ヵ月連続で割り込んでいる。また、全国先行きDI(家計関連)47.2%であることから、2ヵ月連続で関東地区が全国を上回り、その結果、「関東-全国の差(移動平均ベース)」は、23年1月-1.3%→2月-1.8%→3月-1.7%→4月-1.5%→5月-1.3%→6月-1.2%→7月-1.0%→8月-0.5%→9月-0.3%→10月-0.2%→11月-0.2%→12月-0.0%→24年1月-0.2%→2月-0.2%→3月-0.2%→4月-0.1%→5月+0.1%と推移、22年1月以来、2年4か月ぶりにプラス圏に浮上した。同指標は関東地区が地方に比べ世界の金融危機に左右されやすい経済構造になっていることを利用して発見したT-Modelオリジナル理論。過去、07年の「サブ・プライムローン問題」、08年の「リーマン・ショック」、11年「欧州債務危機」、15~16年の「チャイナ・ショック」、2020年「コロナショック」など世界的な金融危機の局面で大きく悪化している。世界的な金融危機は水面下で起き続けていることを示していたが、それを表面化させないように覆い隠しているのが現在の株高政策だが、覆い隠せば隠すだけ実体経済との乖離が膿となって溜まり続けていることは忘れないことである。

また、T-Modelオリジナルの同指標は10ヶ月先の日本の株式市場を占う上でも重要な指標。同指標は22年11月を戻りのピークに、23年4月-1.9%と、過去最悪だった12年12月-2.1%に迫る水準まで急落。19年7月ピーク+1.2%→20年4月ボトム-1.6%、20年11月ピーク+0.7%→21年6月ボトム-1.6%と同様に、コロナショック以降、3度目の「危険な時間帯」が続いていたが、逆に、株価を吊り上げる不自然な「株価操縦」で危機を覆い隠しているかのようにも見える。以前からセミナーなどで『T-Model分析では、今回のバブルは「2つのバブル」が形成されており、22年1月から始まった米国の株価・債券市場の暴落は「コロナショック」後に作られた2つ目の「コロナバブル」が崩壊しただけで、T-Model理論では、現在は逆イールド(10年-2年)を深堀りにすることで金融緩和状態を作りリバウンド相場を演出している。』と分析したが、この見方は変わらない。

先月、『2024年5月10日日経新聞に『米利回り逆転、戦後最長~景気後退の予兆、過去10回不況入り』をご紹介し、

『「逆イールド」がこれまで戦後最長だった1978年8月~80年5月には1980年大統領選挙が実施され、共和党のロナルドレーガンが当選し、ジミーカーター民主党政権から政権移行した。2006年8月~07年2月の「逆イールド」は2008年大統領選挙が実施され、民主党バラク・オバマが当選し、ジョージWブッシュ共和党政権から政権移行、その前2000年2月~2000年12月の「逆イールド」は2000年大統領選挙が実施され、共和党のジョージWブッシュが当選し、ビル・クリントン民主党政権から政権移行した。過去の例だと、大統領選挙と「逆イールド」が重なるケースは「逆イールド」による歪からか、「政権交代」が起きやすく、戦後最長の「逆イールド」と重なる今回の2024年大統領選挙も「政権交代」が起こる可能性を示唆する。

もう一つ注目しているポイントは、2024年11月の大統領選挙まで「逆イールド」を続けられるかということである。戦後最長の「逆イールド」だった1980年の年も大統領選挙前の5月に「逆イールド」が途切れているからである。5月3日発表された4月雇用統計は市場の予想を下回り、9日に発表された新規失業保険申請件数も23.1万件と、前週分改定値の20.9万件や予想の21.5万件を上回る悪化で昨年8月以来の高水準となった。また「非農業部門雇用者数」と連動性の強い米国ISM非製造業総合景況指数は4月に前月比2ポイント低下の49.4と市場予想52を大きく下回り、22年12月以来となる50割れとなった。『ISM非製造業景況指数が50を割り込むことは珍しい。過去、2000年ITバブル崩壊、08年リーマンショック、20年コロナショックと大きな不況に発展するケースぐらいである。』と指摘したが、5月以降も50割れが続くようだと大きな不況に発展する。前回50割れとなった22年12月は1か月だけで50割れを脱出したが、それは株価吊り上げによって先送りしただけで、今回も不自然な株価吊り上げで22年12月のように50割れを1ヶ月で脱出できるのか。同指数と「非農業部門雇用者数」との大きな乖離を見る限り、相当な改ざんが行われていることは間違いない。「逆イールド」がいつ終了するかはまだ分からないが、確実なことは戦後最長の「逆イールド」は「リーマンショック」を超える大不況を醸成しているということである。』と指摘した。

「米国ISM非製造業総合景況指数」は直近5月53.8と予想外に持ち直し、連続50割れの最悪の事態は一旦、避けることはできたようだが、「非農業部門雇用者数」との乖離は開いたままである。2024/06/10『米雇用者数の伸び、発表値より弱かった可能性』のT-Modelコラムにおいて、

『この記事にある「雇用統計は2つの調査」とは、事業所ベースと家計調査ベースのことで、雇用者数に乖離が起きているとの指摘である。一般的に公表されている雇用者数は事業所ベースで、4月1億5827万人→5月1億5854万人と+27万人増だが、家計調査ベースの雇用者数は、4月1億6149万人→5月1億6108万人と-41万人減と対照的な結果となっている。この違いは、複数企業で働く労働者が増えて、ダブルカウントされて雇用者数を嵩上げされている可能性があるが、そろそろ雇用統計の不自然さに気づく市場関係者が増えはじめている。

また、FRBのパウエル議長が好んで言及する「失業者1人当たりの求人件数」は4月には1.24件と「求人件数が非常に多い環境」と論陣を張るが、コロナ前のピーク1.2件に迫っており、コロナのように何かをきっかけに一気に急減するリスクがある。5月の失業率4%台乗せは、いつも指摘しているように、「過去最高の政府部門就業者」と「過去最高の移民の就業者」で実体よりも嵩上げしているが、それもそろそろ限界を迎え始めた可能性が高い。』と指摘した。

FRBが重視する『10年-3か月』の「逆イールド」の連続日数は5月末で572日となり、大恐慌前の700日に次いで2番目の長さになった。2024/04/22『500日を超えた「10年-3ヶ月」の「逆イールド」は何を示唆するのか?』のT-Modelコラムにおいて、

『米国債10年-3か月の「逆イールド」も24年3月末で511日と500日を超えているが、500日を超えたのは過去、1929年、2008年、1974年の3回しかなく、いずれも株価は50%以上の暴落に発展している。「逆イールド」の持続期間と株価の下落率は比例関係にあり、仮に、FRBが金利を下げると、過去最長の「逆イールド」は解消して、それが株価暴落を招き、そして、大不況に陥る恐れがある。2020年以降の消費者物価の急上昇も、22年からの沈静化もすべてコロナショックを契機としたQEと、その後のQT、つまりマネーの急増と減少が原因であり、政策金利は関係ない。むしろ、政策金利の引き上げは物価を押し上げる要因で、それにも関わらず消費者物価の下げ止まりを理由に「利下げ先送り」を続けようとしているのである。これは少なくとも11月の米国大統領選挙までは株価暴落も、景気後退も起こすことができない現政権の「逆イールド」継続の延命策に過ぎず、仮に、大統領選挙まで「逆イールド」を継続させると「721日」となり、大恐慌前の「700日」を上回り過去最長となる。それは、1930年代の「大恐慌」の再来が避けられないことを示唆することになるが、「逆イールド」が「500日」を超えた現時点で今更、止めても経済への大激震は避けられず、このまま突き進むしかないのだろう。では、ここまで理解できた我々は何をすべきか。近未来に起こるであろう大地震と同様に、世界経済崩壊の大激震にも準備を怠らないことが重要である。』と指摘した。先週、G7サミットがイタリアで開催され、居眠りをしているような大統領もいたようだが、その国と日本は運命共同体の関係にある。それを見ても不安も何もを感じない体質へと変化してしまった「ゆでガエル」の日本国民には7月7日の東京都知事選に過去最高となる50人以上が立候補する異常事態にも何も感じないのだろう。異事なことに気づかなくなった今こそ、大きな危機が近づいているに気づかなければいけない。

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