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第318回:トランプ関税 インフレ・デフレ要因?市場混迷

トランプ関税 インフレ・デフレ要因?市場混迷
予想を上回る米6月小売売上高前月比0.6%増を消費が強いと判断できるか?
2025年7月19日日経新聞に『米で駆け込み購入再燃~小売売上高6月0.6%増』が報道されている。
『トランプ関税の影響を警戒した「駆け込み購入」が再燃している。米商務省が17日発表した6月の米小売売上高(季節調整済み、速報値)は前月比0.6%増で市場予想(0.1%増)を上回った。4〜5月はトランプ関税によるインフレ懸念で買い控えが起きた。企業が関税コストを吸収し値上げを抑制していることから、「今のうちに」と日用品などを買う動きが広がる。米小売売上高は4月に0.1%減、5月に0.9%減とマイナスが続いていた。6月は3カ月ぶりに増加に転じた。(途中略)
消費が持ちこたえているのは現時点では、関税コストの価格転嫁が想定ほど進んでいないからだ。(途中略)企業側が節約姿勢を強める消費者心理を意識し、関税を自己負担し価格を維持している。さらに、トランプ米政権と各国の関税交渉が長引き、実質的なコスト増が小幅にとどまっていることも影響している。(途中略)
3月までに買い込んだものは既に底をついた。それでも先行き不透明感は拭いきれないため、セールなどの懸念にもう一度購入しておこうという動きが広がっている。ただし、足元で「駆け込み購入」が増えている現状は、今後、米国の消費者がモノの値上がりを警戒していることの裏返しでもあるといえる。(途中略)』
消費は米景気を占う上で極めて重要だが、この記事で指摘しているように、トランプ関税による駆け込み需要とその反動減、さらにインフレ分の価格転嫁なども小売売上高に含まれ、表面的な数値だけで米国消費を判断することが難しくなってきている。6月の米小売売上高(季節調整済み、速報値)は前月比0.6%増、前年同月比3.9%増だが、インフレ調整後の「実質小売り売上高」の前月比は0.3%増、前年同月比1.2%増となった。つまり、理論上はこの前月比0.3%分、前年比2.7%分がインフレによる押し上げ効果となる。特に、8月1日からはトランプの上乗せ関税が発動されることから、この「実質小売り売上高」がこれまで以上に重要な指標になってくるだろう。
実は、過去、「実質小売り売上高」はITバブル崩壊やリーマンショック、コロナショックなど大きなショックの前に横ばいで推移する傾向があり、今回も21年4月以降、現在までほぼ横ばいで推移している。これは何らかの大きなショックの前触れとして極めて重要で、特に、リーマンショック時のように「実質小売り売上高」のトレンドラインを割り込むとそのショックが表面化する可能性がより強まることを意味する。逆に言えば、約4年もの長期間、「実質小売り売上高」のトレンドラインを割り込まないようコントロールしてきたことは感心させられる。
そして、この「実質小売り売上高」は株価との連動も高く、とくにインフレを調整した「NYダウ/米CPI」とはかなり近い動きを示す。ITバブル崩壊時は「NYダウ/米CPI」が99/12 68→02/9 42まで-38%下落、リーマンショック時は07/10 67→09/2 33まで-50%下落、コロナショックは19/12 111→20/3 85まで-23%下落している。今回も約4年間、「実質小売り売上高」が横ばいを維持しているものの、「NYダウ/米CPI」は21/12 130→22/9 97まで-25%まで一旦、大幅に下落した。米大統領選挙のためと思われるが、24年11月に向けての不自然な株価吊り上げが行われて両指標が大きく乖離している。つまり、近い将来、この乖離が解消する可能性が高いが、それは「実質小売り売上高」がトレンドラインを割り込むときに起きる可能性が高いのではないだろうか。
世間ではインフレによる嵩上げを無視して、消費は強いとか、株価が強いとか、判断する傾向が強いが、これからは「実質小売り売上高」と「NYダウ/米CPI」で冷静に判断することが重要になるのではないだろうか。それはトランプ関税が発動して、それがインフレ要因になるか、デフレ要因になるか、市場は迷っているからである。





