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第325回:米雇用統計悪化 トランプ大統領 金利引き下げ要求に矛盾

第325回:米雇用統計悪化 トランプ大統領 金利引き下げ要求に矛盾
コロナショック時以来、5年振りに求人数が失業者数を下回る
2025年9月7日日経新聞に『FRBに連続利下げ圧力~8月雇用統計2.2万人増に鈍化』が報じられている。
『米労働省が5日発表した8月の雇用統計は、景気減速への懸念を強める内容となった。1〜4月に月12.2万人のペースで増えていた非農業部門の就業者数は5〜8月に2.7万人増まで鈍った。米連邦準備理事会(FRB)に9月からの連続利下げを求める圧力が強まる。
8月は非農業部門の就業者数が2.2万人増となり、8万人増だった市場予想を下回った。製造業や建設業、卸売業、人材派遣業など幅広い業種で雇用はマイナスに転じている。雇用増をけん引していた医療分野でも勢いが鈍ってきた。7月雇用統計は5~6月の数値が大幅に下方修正され、FRBが堅調とみていた雇用情勢が実は春ごろから傾いていた実態を示した。今回はそのショックが一時的な落ち込みではなかったことを裏付けた。
雇用統計以外の経済統計でも同様の傾向がうかがえる。米労働省が発表した雇用動態調査(JOLTS)によると、7月の求人数(非農業部門、季節調整済み)は718万1000件だった。前月から17万6000件減少し、市場予測(737万件)を下回った。(途中略)金利先物市場では16日~17日に開く次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ確率が100%となり、そのうち1割は通常の倍となる0.5%の利下げ幅を織り込んだ。年内の3会合すべてで連続の利下げをするとの予想も前日の5割弱から7割近くに上昇した。トランプ大統領も統計公表後に「とっくに利下げしておくべきだった。相変わらず『遅すぎる!』とSNSでパウエル議長を批判した。(途中略)」』
8月の雇用統計の注目点の一つは、トランプ大統領のプレッシャーのもと、「改ざん」されてきた米雇用統計がどう変化するかだったが、「改ざん」の上塗りにはならなかったようだ。トランプ大統領が7月米雇用統計の「改ざん」を主張し、労働省労働統計局長のマッケンターファー氏を解雇して次期労働統計局長に保守派エコノミストのEJアントニー氏を起用したためである。バイデン政権時代からT-Modelでは、2024年11月の大統領選挙のために米雇用統計の「改ざん」の可能性をあらゆる角度から指摘してきた。以前にもご紹介したT-Model理論では、「非農業部門雇用者数」と連動性の強いのが「米国ISM非製造業総合景況指数」であるというもので、「事業所ベース」の「非農業部門雇用者数」と「米国ISM非製造業総合景況指数」はまだまだ大きく乖離しているが、「家計調査ベース」の「非農業部門雇用者数」との乖離はほとんど見られない。どちらの「非農業部門雇用者数」が景気の実態を示しているかが明らかと指摘してきた。
もう一つ重要なポイントは、求人件数は718万1000件と24年9月以来、10か月振りの低水準に落ち込む一方、失業者数の増加により、失業者数に対する求人件数の割合が0.99と、新型コロナウイルスのパンデミック以降で初めて失業者数が求人数を上回ったことである。2022年3月2.04倍まで上昇し、空前の人手不足感を示していたが労働市場はそこから大きく変化したことになる。パウエル議長を含むFRBは労働市場の健全性を判断する上で、この尺度を重視してきた経緯があり、今回の結果は利下げを正当化する重要な根拠になるだろう。
9月9日、米労働省の労働統計局(BLS)は非農業部門雇用者数(NFP)の年次改定(2024年4月-2025年3月)の暫定値を発表する。市場では40万人から68万人の下方修正を予想しているが、ゴールドマンサックスは最大で2010年以来最大となる95万人減少の可能性を指摘。ベッセント米財務長官は80万人減少と見ているが、「数値は正確ではない、適切に収集されていない」と金曜日に発表された弱い雇用統計を批判した。経済データはインフレ上昇と労働市場の弱体化を示しているが、ベッセント氏は「現実はまったく逆だ」と主張。「トランプ氏の政策が定着するにつれて米経済は第4四半期までに急成長する」と述べた。このベッセント財務長官のコメントを見ると、トランプ大統領が7月米雇用統計の「改ざん」を主張したのは、悪い雇用統計数値に対する「改ざん」だったことになるが。その主張と金利引き下げ要求に矛盾があるように思うのだが・・。





