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自然災害の影響が限定的だった「2 018年9月景気ウォッチャー調査」
自然災害の影響が限定的だった「2 018年9月景気ウォッチャー調査」
内閣府は18年10月9日、「2018年9月景気ウォッチャー調査」を発表。同指標は株価の1~2ヶ月先行指標で政府統計では最も有効。
2018年9月「街角景気」の現状判断DIは前月比-0.8%Pの47.3%(原数値)と2か月ぶりに悪化。水準は景気の別れ目となる50%を5ヶ月連続で割り込み、かつ17年2月以来の低水準。前年比ベースでも-2.3%と5ヶ月連続でマイナス圏。台風や地震など自然災害でサービス関連が落ち込み、地域別では特に、震度7の地震を観測した北海道が前月比ー7.8%ポイントの大幅悪化。地震による停電で店舗が臨時休業、商材の配送が遅延、観光客のホテルキャンセルも相次いだ。一方、台風の被害があった近畿は前月比+2.8%ポイント改善、台風による臨時休業の影響で月初は大きく落ち込んだが、関西新空港の復旧とともにインバウンドが盛り返し、台風の影響は限定的だったことがうかがえる。メディアでは、2016年10月分から発表を開始した「季節調整値」を使用しているが、現状判断DIは前月比-0.1%Pの48.6%と2ヶ月連続悪化、水準は景気判断の分かれ目の50
%を9ヶ月連続で下回り、原数値と方向が一致していることから違和感はない。
T-Modelにおいて「景気判断」に最も重要なのは移動平均との乖離幅で、18年1月-1.7%→2月-2.2%→3月+0.8%→4月-0.2%→5月-2.6%→6月-1.1%→7月-1.6%→8月-0.9%→9月-1.0%と推移。6か月連続でマイナス圏に陥っていることから景況感は悪化が継続している。内閣府は、「穏やかな回復基調が続いている」に据え置いている。
2─3カ月先を見る「先行き判断DI」は50.7%で前月比+0.3%ポイントと2ヶ月連続で改善。前年比ベースでも+0.3%Pと2ヶ月連続で改善、景気の別れ目の50%を2ヶ月連続で上回っている。依然として求人倍率が高く人手不足感は強いほか、原油高や為替の影響で輸入食材の価格上昇などコスト高による影響を懸念するコメントがみられるが、災害の復旧に年度内完了を条件とした助成金から建築・設備などの災害復旧特需への期待が年末に向けての追い風となるとの見方が増えている。また、気温の変動が大きいため秋物衣料品の立ち上がりが早くなるといった期待も加わっている。尚、「季節調整値」は前月比-0.1%Pの51.3%と景気の別れ目の50%を挟んで一進一退の状況が続いている。原数値と方向が多少異なることから若干の違和感はある。
一方、関東地区の先行きDI(家計関連)は50.8%と前月比+0.3%Pと2ヶ月連続で改善、前年比ベースでは+1.2%Pと3か月連続で改善している。景気の別れ目の50%は12ヶ月連続で上回っている。全国先行きDI(家計関連)50.1%であることから、全国ベースを7ヶ月連続で上回っている。「関東-全国の差(移動平均ベース)」は、18年1月+1.0%→2月+0.7%→3月+0.8%→4月+0.6%→5月+0.8%→6月+0.8%→7月+0.8%→8月+1.1%→9月+1.2%と推移。05年5月に記録した過去最高の+0.7%を13年振りに更新した後、高水準のプラス圏を維持していたが、再び過去最高を記録した。これは東京を中心とする関東が全国の景況感を大きく上回っていることを示すと同時に、世界的な金融危機は依然遠のいていることを示唆している。ただ、『現在のように高水準を維持しているということは今2月のようなショックが再び起きやすい環境が整いつつあることを示唆していると考えるべきで、1年を通して楽観ムードは禁物の年と言えるだろう。』と指摘してきたが、8月は「トルコショック」が起き、また今10月には米金利上昇を契機に世界同時株安が起きている。『突然のショックが起こりやすいことは変わらないことから楽観ムードは禁物の年であることを忘れないことだろう。』との指摘通りの展開だが、来月の注目は今回の株価暴落で10月の関東地区の先行きDI(家計関連)がどのくらい影響しているかである。
過去、同指標は07年のサブ・プライムローン問題、08年のリーマン・ショック、11年欧州債務危機など世界的な金融危機の局面で大きく悪化。関東地区が地方に比べ世界の金融危機に左右されやすい経済構造になっていることを示してきた。16年6月に英国のEU離脱問題で金融市場が混乱、大きく悪化したが、16年7月以降、回復傾向が継続。やはり、16年から指摘してきたように、日銀が16年7月に決定した年間6兆円に倍増したETFの購入、同年9月の「イールドカーブコントロール」の新たな金融政策が効果を発揮したかたち。ただ、その効果は一巡、今年2月にはVIXショック、8月「トルコショック」、そして10月世界同時株安とやはり、「08年のリーマン・ショックは半年毎に大きなショックが訪れる」と指摘した動きが継続していることを示している。
また、同指標は10ヶ月先の日本の株式市場を占う上でも重要な指標。今年1月に『ただ今回の株価上昇を牽引したのはあくまで外国人。海外の機関投資家は米国株が値上がりするとポートフォリオのウエイトを維持するために、相対的に低下した他の国への株式を買わなければならず、それが今回の日本株上昇の要因の一つ。投機筋の外国人の動きを示す「裁定買い残」は今年1月1日週にアベノミクス以降の最高である2015年約3.9兆円に迫る約3.4兆円まで増加したが、2月の「VIXショック」を境に3月19日週には約1.3兆円まで2.1兆円減少。これが2月~3月にかけての日経平均暴落の原因だった』と指摘した。
その後、逆に5月14日週には約2.6兆円まで積み上げて日経平均の急反発を演出した後、8月5日週には再び約1.5兆円台まで4か月ぶりの低水準まで急減させて日経平均急落を演出している。今回も10月2日24448円と年初来高値を更新したが、「裁定買い残」は9月24日週に2.56兆円まで急増させている。このように投機筋の外国人が日経平均を上下させて儲けようとしている状況は変わらず、今回の暴落も「裁定買い残」を急減させて作りあげていることに変わりない。2月の「VIXショック」と同様に、2ヵ月程度、低迷する可能性がある。ただ、「関東-全国の差(移動平均ベース)」が過去最高を記録したことは10月高値も近い将来更新することを示唆していることは付け加えておくが、いずれにしても、日経平均は海外の株価上昇に依存しており、それが日経平均を支配する外国人の動向を左右する構造であることだけは忘れないことである。
今年に入ってからは現状判断DIと日経平均株価とに乖離が発生していることも投機筋の外国人が日経平均を上下させて不安定な状態をつくりやすくしている。株価が実体経済に伴ったものではないからで、それがアベノミクスの実態である。昨年までの「適温相場」は2月に一瞬で消滅した「VIXベア」で作られた相場だったことが明らかにしたが、それは同時にこれまでの「低ボラ時代」の終焉を意味する。つまり、それは現在のように「VIX指数」が低迷したときほど注意が必要で、定期的に「○○ショック」が起こりやすい時代が始まったということだろう。今後3年~5年はそのような不安定な時代が続くことを覚悟しなければならない。