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第322回:不動産含み益29兆円 Qレシオ歴史的高水準 バブル脳が増加?

第322回:不動産含み益29兆円 Qレシオ歴史的高水準 バブル脳が増加?
80年代後半の「内需バブル」期以来の「Qレシオ」
2025年8月15日日経新聞は『不動産含み益、最多29兆円 3月末、前の期比7%増~三菱地所は5兆円 株主、有効活用求める』を報じている。
『上場企業が保有する不動産の含み益は2025年3月末時点で29兆円と前の期から7%増えた。開示が始まった10年3月末以降で最大だ。不動産価格や賃料が上昇していることが背景にある。時価総額が含み益を考慮した純資産を大きく下回る企業では、株主から不動産の含み益を企業価値に反映するような経営努力を求められる可能性がある。
3月期決算の上場企業の有価証券報告書を日本経済新聞が調べた。「賃貸等不動産」の簿価と時価を集計し、差額を含み益とした。国際会計基準(IFRS)の採用企業では「投資不動産」の公正価値と簿価を使った。賃貸等不動産や投資不動産の開示があった企業は約610社だった。含み益が膨らんだ主因は不動産価格の上昇だ。国土交通省が公表する不動産価格指数をみると、商業用不動産の直近値は15年末比で3割上昇した。25年1月1日時点の公示地価は全用途の全国平均から2.7%上昇し、バブル崩壊後の1992年以降で最高の伸びとなった。(途中略)
不動産の含み益は実際に売却するまでは実現しないため、企業の貸借対照表には反映されない。仮に含み益が全額実現したと仮定して、含み益に実効税率を乗じた額を自己資本に加算し、PBR(株価純資産倍率)を計算すると、40社以上でPBRが1倍を下回る。こうした企業では不動産の価値が株価に十分に反映されていないといえ、株主から改善を求められる可能性がある。(途中略)
ゴールドマンサックス証券の調査によると、不動産含み益の大きい企業の株価は年初来で東証株価指数(TOPIX)を超過している。(途中略)』
以前にもお話ししたが、これが1980年代後半の「内需バブル」期に特に注目された指標「Qレシオ」で、当時、高騰した地価を加味して、上がり続ける株価の正当化に利用された。一般にPBR(株価純資産倍率)が簿価ベースの純資産と比較するのに対して、「Qレシオ」は株価を一株当たりの実質純資産(時価評価した純資産)で除した指標で「実質株価純資産倍率」とも呼ばれる。指標名の「Q」は米国の経済学者ジェームズ・トービン(1918-2002)が提唱した投資理論「トービンのq理論」にちなんで命名された。
各資産を正確に時価評価することは難しいことから、「Qレシオ」を正確な数値で求めることは非常に困難だが、「株式マーケットデータ」は米国株式の「Qレシオ」を四半期ベースで公表しており、参考までに2024年4Q 1.9倍を直近ピークに、トランプ関税で急落した2025年1Q 1.76倍に低下している。「ITバブル」時ピークの2000年1Q 1.68倍を超えており、歴史的高水準であることに変わりない。尚、過去最高はコロナショック直前の2019年4Q 2.15倍で、その後、22年4Q 1.35倍まで急低下した。
「Qレシオ」は1980年代後半の「内需バブル」期にPER(株価収益率)が約60倍に上昇したことで、「上がり続ける株価の正当化」に利用された指標だが、それはある意味、株価がバブルであることを示すとも言えるだろう。つまり、冒頭の記事は、現在の日本の株価がバブルであることを示唆すると同時に、参考までにご紹介した米国株式の「Qレシオ」も歴史的高水準に位置していることからも世界的に株価はバブルであることを示唆する。
そして、現在のようにバブル期が長く続けば続くほど、バブルの株価が正当であるかのように「錯覚」する「バブル脳」に洗脳された人々が増える。バブルが崩壊するとはだんだん誰も想像もできなくなるのが、それが「バブル崩壊」の引き金になることは歴史が証明する。重要なことは、歴史的にどの規模のバブルなのかだが、「バフェット指数(株式時価総額/GDP)」で振り返ると、直近2025年1Q1.97倍と、過去最高だった「ITバブル」時ピークの1.67倍をはるかに上回る。ここまで膨張したバブルはもう後戻りはできず、崩壊させることなどできないのだろう。仮に、崩壊したらこれまで我々が見たこともない世界が待っているように思われるが、それを目撃する覚悟は我々にできているだろうか。



