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「働かない失業者」を急増させた米国の大規模経済刺激策
「働かない失業者」を急増させた米国の大規模経済刺激策
2021年4月21日日経夕刊に『忍び寄る人手不足の波』が掲載されている。
『マンハッタンの商店街を歩くと最近よく目にするのが「Help Wanted」「NowHiring」といった求人広告の看板だ。コロナ感染拡大による規制強化でテークアウトだけにしたレストランなどで屋内飲食の再開に伴い、従業員を募集する店も増えている。しかし、人材が集まらずに四苦八苦している中小企業が急増しているという。
米国ではコロナ禍の景気後退で失業者が急増し、現在も約970万人の国民が失業中だ。それにもかかわらず中小企業が人手不足に悩まされているのは、政府による大規模な経済刺激策が一因だ。失業保険給付額に上乗せされた週300ドル(約3万2400円)の補償のために失業中の方が収入が多い世帯も出ている。ニューヨーク連銀のエコノミストらが2020年8月に発表した研究によると、失業保険の給付額が10%増加するごとに、求人への応募者が3%減少するという結果が明らかになった。
金融市場では人手不足とインフレ加速を背景に長期金利上昇への懸念も強まり始めた。ウォール街のご意見番として知られるブラックストーンのバイロン・ウィーン氏は政府の大規模な経済刺激策はいずれ長期金利の大幅な上昇につながるとみる。10年物米国債の利回りは現在1.6%前後だが、「2%を上回ったら、成長株中心に株式相場には悪材料」と指摘する。同氏は利回りが2.5~3%まで上昇してもおかしくないと予想する。人手不足の目立つ米労働市場のゆがみを解消しなければ、株高を支えてきた量的緩和も予想以上に縮小開始が早まる懸念もある。』
昨年、実施された経済対策では州が支給する失業給付は平均370ドルに、連邦政府が週600ドルを上乗せされ、週970ドル(約11万円)が支給されていた。当時、失業給付の特例加算は2500万人が支給対象になっているとされ、失業者の7割が以前の給与を上回る給付を受けているとの試算もあった。そのため、第二弾の追加経済対策における失業給付特例の共和党案は、加算分を200ドルに減らし、その後は州の支給分と合わせて失業前の給与の70%を上限とするものだったが、バイデン政権による追加経済対策によって失業給付特例で「働かない失業者」の現状が浮き彫りになっているのである。
この記事でもう一つ注目すべきは、『ウォール街のご意見番として知られるブラックストーンのバイロン・ウィーン氏は政府の大規模な経済刺激策はいずれ長期金利の大幅な上昇につながるとみる。10年物米国債の利回りは現在1.6%前後だが、「2%を上回ったら、成長株中心に株式相場には悪材料」と指摘する。同氏は利回りが2.5~3%まで上昇してもおかしくないと予想する。』
この内容は、これまで生活防衛の教室でT-Modelが予測してきた内容とほぼ一致する。ご存じの方も多いかもしれないが、バイロン・ウィーン氏は元モルガン・スタンレーのストラテジストで1986年以来「びっくり予想」(投資家予測では発生確率が3分の1だが自身は5割以上とみる事象)を公表、ウォール街で最も広くフォローされている人物の1人。何故、ウォール街で最も広くフォローされているかは大半の当たらないストラテジストよりも比較的的中率が高いからに他ならない。