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『3万ドル、通過点か天井か』
『3万ドル、通過点か天井か』
2020/11/28日経夕刊に『3万ドル、通過点か天井か』が掲載されている。
『歴史的な株高の勢いが続いている。ダウ工業株30種平均が1896年の算出開始から124年で3万ドルを突破し、記録的な週となった米株式市場。節目突破は上昇相場の通過点か、はたまた大相場の天井か。
過去の経験に照らすと、記憶に残りやすい節目突破は大相場の天井で、その後の下落相場への転換点になることもある。ナスダック指数が初めて5000を突破したのは2000年3月9日。翌10日に付けた5048をピークにITバブルは崩壊を迎えた。99年1月から2.3倍に上昇した後、02年10月に底入れするまで8割近く下落した。ダウ平均も同様だ。初めて1万ドルを突破したのは99年3月。その後は調整局面を挟みながら、00年1月には当時の最高値である1万1722ドルを付けたが、ITバブルの崩壊で調整局面に入った。ダウ平均が次にITバブルの高値を上回ったのは06年10月だった。
経験則の分析は恣意的になりやすく、相場の参考になりにくいのも事実だ。ダウ平均が初めて2万ドルを突破したのは17年1月。その後も大きな調整はなく、同年末までにさらに3割超上昇した。今年6月の初のナスダック指数の1万超えは、言わずもがなで足元まで続く上昇相場だ。
ダウ平均は初の1万ドルから2万ドル突破まで18年かかった。2万ドルから初の3万ドルはわずか3年10カ月だ。この2つの期間の間に株式相場を大きく左右するインフレと金融政策に対する前提条件が断絶したのであれば、次の4万ドルに乗せるのには3年10カ月もかからないのかもしれない。』
また2020/11/26日経一面に『危機下の株高、IT主導~ NY株、初の3万ドル 緩和マネーが一極集中』でも報道されている。
『米国株の主役は5年ほどの周期で入れ替わってきた。ダウ平均が初めて1万ドルに乗せた1999年の後はインターネットの普及でIT(情報技術)株が脚光を浴びた。00年代半ばは金融株、10年前後はエネルギー株が市場の立役者だった。今回は再びIT株がけん引する。採用銘柄のアップル、マイクロソフトに加え、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、フェイスブックの5社で時価総額は7.1兆ドル(約750兆円)と、日本株全体を上回る。ダウ平均が2万ドルから3万ドルへと50%上昇した間に、5社の時価総額は3倍近くに膨らんだ。米国株全体に占める比率も17%と一極集中が進む。
株式市場からみると、コロナ危機は二面性を持つ。7~9月期の企業決算は「ワースト」と「ベスト」の混在だ。アメリカン航空など米航空大手3社は計1兆円規模の赤字を計上したが、マイクロソフトの利益は1.5兆円規模と最高だった。需要蒸発に苦しむ企業がある一方、巨大IT企業はデジタル化の流れに乗って新たなサービスを生み出し、輝きを増す。
株高の底流には市場に流れ込むマネーがある。新型コロナの感染が拡大した春先、都市封鎖などで経済がマヒ状態に陥った。日本を含む主要国の株価は軒並み急落し、一時3割を超える下落となった。世界は危機を阻止するため、総額10兆ドル超の財政支出に動いた。金融緩和策で市場にマネーが流れ込み、下げ幅を超える上昇を生んだ。緩和マネーに支えられた株高は、実体経済とのズレも生む。約10年前まで米国株の時価総額と米国内総生産(GDP)は近い水準だったが、徐々に差が開いた。20年はマイナス成長下の株高で、時価総額はGDPの2倍超まで拡大している。株価を1株あたりの予想利益で割ったPER(株価収益率)は22倍と、過去20年で最高水準だ。特にIT株では利益に比べた株高が進んでいる。』
冒頭の『3万ドル、通過点か天井か』の記事では、『節目突破は大相場の天井』と結論づけたいようだ。だが、それほど明確な法則性は見られない。むしろ、大相場の天井を見るうえで重要なのは、『ND倍率(NASDAQ総合/NYダウ)』だろう。同倍率は、今年8月0.41倍でITバブル時の2000年2月0.46倍に迫っている。2つめの記事でも『アップル、マイクロソフトに加え、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、フェイスブックの5社で時価総額は7.1兆ドル(約750兆円)で、米国株全体に占める比率が17%』、『約10年前まで米国株の時価総額と米国内総生産(GDP)は近い水準だったが、徐々に差が開いた。20年はマイナス成長下の株高で、時価総額はGDPの2倍超まで拡大している。』と指摘しているように、一極集中で市場のバランスが悪くなっていることが理解できるのではないだろうか。
一方、『NYダウとマネーサプライ』の約60年間の長期的な関係からでも明らかなように、「株高の底流には市場に流れ込むマネーがある」ことは間違いない。過去を振り返ると、2000年のITバブル崩壊やリーマンショックのいずれの場合も、マネーの量よりも株価が行き過ぎているときに起きている。19年12月のときもマネーの量よりも株価が行き過ぎて起きたコロナショックだったことが理解できるが、現在は、マネーの大量供給で史上最高値の株価を支えることも理解しやすい。
T-Model『大台替えの法則』でNYダウの1000ドル単位の大台替えを振り返ると、11月2日27000ドル大台替え11月4日28000ドル大台替えに2日間、11月9日29000ドル大台替えに5日間、11月24日30000万ドル大台替えに15日間と推移しており、全て11月中だが2日間、5日間、15日間と時間切れの中で起きた大台替えである。通常であれば、次の31000ドル大台替えはある程度の時間を要する可能性が高いことになり、短期的には、変化点を迎えそう。その変化点が、『ITバブル崩壊』のような「暴落」のスタートとなるのか、それとも「急落調整」となのか。年明けは混迷する米大統領選挙の行方と同時に注目すべきポイントである。