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スイスフラン利下げ 円キャリー巻き戻し 〇〇ショックの前兆?
スイスフラン利下げ 円キャリー巻き戻し 〇〇ショックの前兆?
「世界最低金利」を脱した日銀の政策金利が今後起こすこと
2025年3月22日日経新聞に『日本「世界最低金利」脱す~スイス利下げで水準逆転、「超円安」の警戒薄らぐ』が報じられている。
『日本の政策金利が約2年半ぶりにスイスの水準を上回り、主要先進国で最低の地位を脱した。市場が注目するのは、円相場を動かす投機筋の動向だ。低金利の円で調達し、高い利回りの資産で運用する「円キャリー取引」は、今回の逆転劇を受けて鳴りを潜めるとの見方は多い。1ドル=160円を目指す「超円安」への警戒は薄らいでいる。今週は日米の中央銀行の金融政策決定会合を通過した。21日の東京市場では対ドルの円相場が1ドル=149円台を中心に推移した。国内輸入企業など実需の円売り・ドル買いが出たとの観測もあるが、一方向の円安を見込む声は少ない。背景には政策金利を巡る日本の立ち位置の変化がある。
19日まで開いた金融政策決定会合で、日銀は政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.5%に据え置いた。植田和男総裁は会合後の記者会見で「経済・物価の見通しが実現していけば引き続き政策金利を引き上げる」と述べ、利上げ路線を維持する考えを示した。対照的な動きを見せるのがスイス国立銀行(中央銀行)だ。20日に政策金利を0.5%から0.25%へと引き下げることを決めた。インフレ圧力が低下していることが主因で、利下げは5会合連続となった。
この結果、政策金利水準は日銀が0.5%、スイス国立銀が0.25%と逆転した。日銀が世界で最も金利の低い状態を脱するのは、スイス国立銀が利上げ路線にかじを切っていた22年9月以来となる。日銀の低い金利は低金利の通貨を調達し、高金利の通貨で運用することで金利差収益を得ようとする「キャリー取引」の源泉だった。政策金利水準の逆転を受けて外為市場ではキャリー取引が仕掛けにくくなるとの見方が出ている。円を調達通貨とする円キャリー取引が盛んになる場合、円を売ってドルなどを買う取引が生じるため、円安圧力が高まりやすい。(途中略)』
2024/12/09『「キャリー取引」の調達通貨が円からスイスフランに変わると、ドル円は?』のT-Modelコラムにおいて、
『ドル円が7月3日に161.9円と34年振りの円安水準に進む過程で、「ドル円の投機筋ポジション」は2024年7月1日週-18.4万枚と、過去最高水準の「円売りポジション」まで積み上がったが、2007年6月25日週-18.8万枚と、同様の過去最高水準まで「円売りポジション」が積み上がった07年と同じような推移を辿り始めていることをセミナーなどで予告してきた。 当時のドル円相場を振り返ると、2007年6月15日週123.43円→2008年3月24日週99.19円→8月4日週110.16円と、「円キャリートレード」巻き戻しによる急激な円高後、8月4日週110.16円まで+11.0%(+10.97円幅)の大きなリバウンドが起き、その後は、09年2月2日週+5.05枚の「円買いポジション」まで再び「円買い」となる過程で、ドル円は08年12月15日週89.08円と、リバウンド局面ピークとなった08年8月4日週110.16円から-19%(-21.08円)の円高となって「リーマンショック」が起きている。
今回も7月3日に161.9円→9月16日140円→11月15日156.7円と、「円キャリートレード」巻き戻しによる急激な円高後、11月15日156.7円まで同じ+11%(+16円幅)のリバウンドが起きている。今後も同様の動きになると仮定すると、リバウンド局面ピークとなった11月15日週156.7円から-19%(-21.08円)だと約127円までの円高となって「〇〇ショック」が起こることを示唆していることになる。来週12月18日~19日の次回金融政策決定会合で「追加利上げ」が行われて「円キャリートレード」巻き戻しが再び、始まる可能性があるが、今後は日銀だけでなく、スイス中銀も注目すべき時期を迎えている。』と指摘した。
実は、T-Model理論『円キャリートレード指数』と『スイス政策金利-日銀政策金利』の両指標は極めて連動性が高く、『スイス政策金利-日銀政策金利』が07年ピークに向けて急上昇する過程で、T-Model理論『円キャリートレード指数』も07年11月ピーク1.55まで急上昇し、ドル円は07年5月122円で円安ピークを付けている。その後、『スイス政策金利-日銀政策金利』が2011年~2013年-0.1%でボトムを付ける過程でT-Model理論『円キャリートレード指数』も0.94まで下落、ドル円は2012年1月76円まで円高が進行した。
今回も『スイス政策金利-日銀政策金利』が2024年ピークに向けて急上昇する過程でT-Model理論『円キャリートレード指数』も24年6月ピーク1.52まで急上昇し、ドル円は2024年6月160円で円安ピークを付けている。その後も07年当時と同様に、『スイス政策金利-日銀政策金利』が一気にマイナス圏まで急低下しており、T-Model理論『円キャリートレード指数』も同指標を追いかけて急降下する近未来の条件が整い始めた。そして、それは「〇〇ショック」が起きて急激な円高と株安が起きる近未来を意味するが、いつ、何をきっかけに起きるのか。構造的円安論を主張する市場関係者は「デジタル赤字」「貿易赤字」「新NISA」など実需の円売りを強調するが、それは全体の3割程度、、それよりも遥に大きいのがこの「円キャリートレード」など実需以外の円取引でその影響を軽視すると「円安構造論」に陥る典型例ではないだろうか。