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中国が10ヶ月振りに政策金利を引き下げ
中国が10ヶ月振りに政策金利を引き下げ
2023/6/20産経新聞は『中国、10ヶ月ぶり利下げ 経済鈍化で景気刺激に動く』を報じている。
『中国人民銀行(中央銀行)は20日、事実上の政策金利と位置付ける「ローンプライムレート(貸出基礎金利、LPR)」の1年物を0.1%引き下げ、3.55%にした。引き下げは昨年8月以来、10カ月ぶり。中国経済は製造業を中心に景気回復の鈍化傾向が強まっており、危機感を強めた習近平政権が景気対策に動いた。1年物のLPRは金融機関の貸出金利の目安となっており、金融緩和の強化により企業向け融資などの拡大を狙う。また、住宅ローン金利の基準となるLPRの5年物も0.1%引き下げ、4.2%にした。
人民銀は今月15日、市中銀行に資金を供給する「MLF(中期貸出制度)」の金利を10カ月ぶりに引き下げていた。MLFはLPRの参照基準となっているため、市場ではLPRも引き下げられるという観測が強まっていた。中国経済は、足元で景気回復の鈍化傾向が顕著になっている。5月の主要経済統計では、生産動向を示す工業生産が前年同月比3.5%増で、前月(5.6%増)から減速した。国内外での需要不足で新規受注が落ち込む。マンション建設などの不動産開発投資は1~5月の累計で前年同期比7.2%減で、不動産市場は長期間の低迷から抜け出すことができていない。
習政権は、厳格な「ゼロコロナ」政策を終えて景気回復を急ぐが、その後遺症が足を引っ張っている。5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で0.2%の上昇だった。需要の弱さを背景に「ゼロ」近くに留まる低水準が続き、市場関係者は「デフレ懸念」を指摘している。
一方で、米欧の中央銀行がインフレ抑制へ利上げ傾向にあったことから、人民銀が金融緩和を進めることにより急激な人民元安を招きかねないという警戒感も根強かった。ただ、今月14日に米連邦準備制度理事会(FRB)が昨年1月以来となる主要政策金利の据え置きを決めており、人民銀がLPRの引き下げに動きやすい環境があった。』
市場では「予想よりも小幅だった」と受け止めているが、中国政府が思い切った利下げを実施すると人民元安を誘発するリスクがあったからである。人民元相場はゼロコロナ政策による景気の急減速から約15年振りの元安水準を付けた22年11月の1ドル=7.3元台に迫っており、人民元が急落した15年の「人民元ショック」に起きた中国からキャピタルフライト(資金逃避)の動きが加速することが否定できない。
そのようななか、6月18、19日と米国務長官のブリンケンが訪中した。国務長官の訪中は2018年10月にトランプ政権のポンペオが訪中して以来、約5年ぶり。メディアでは、「今年2月に中国の「気球」が米領空を侵犯し、撃ち落とされた事件以来、先延ばしになっていた。」とあるが、そんな理由で約5年振りに訪中などするだろうか。冒頭の記事にある『米欧の中央銀行がインフレ抑制へ利上げ傾向にあったことから、人民銀が金融緩和を進めることにより急激な人民元安を招きかねないという警戒感も根強かった。ただ、今月14日に米連邦準備制度理事会(FRB)が昨年1月以来となる主要政策金利の据え置きを決めており、人民銀がLPRの引き下げに動きやすい環境があった。』にそのヒントが隠されているような気がする。何故なら、6月14日にFRBが昨年1月以来となる政策金利据え置きを決め後、6月18、19日にブリンケン米国務長官が訪中、6月20日に中国人民銀行(中央銀行)が政策金利を10か月振りに引き下げ、と時期が重なっているからで、それは6月1日に可決された「米債務上限法案」から始まっていたと考える方が自然ではないだろうか。
実は、人民元が安くなると為替介入からか中国の外貨準備高が減る傾向があり、それは外貨準備高の約3割を占める米国債の売却につながる可能性がある。ブリンケン米国務長官の訪中も米国債の売却を止めて、できれば米国債購入を新規購入してもらうお願いが本当の理由だったのではないだろうか。中国側の米国を見下すような「雑」な扱いが物議を醸していたが、もし、このようなお願いに訪中したのならそれも納得できる気もするが・・。仮に、人民元が22年10月安値を割り込むと中国マネーはどのような動きをするのかが注目される。