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個人株主低下よりも怖い日本企業のトップの株主
個人株主低下よりも怖い日本企業のトップの株主
2022年7月8日日経新聞に『日本の個人株主16%、50年で半減~若者の投資促進カギ』が報道されている。
『日本の個人株主比率が低下している。東京証券取引所が7日発表した2021年度の株主分布調査によると、個人の保有比率は金額ベースで16.6%と50年前から半減した。個人投資家の底上げは戦後から続く日本の課題だ。「貯蓄から投資」を問われるなか、少額投資非課税制度(NISA)の見直しなど若者の投資を後押しする仕組みが不可欠になる。
日本では戦後、財閥や政府が保有する株式を個人に持ってもらう「証券民主化運動」が起き、70年度には個人株主の保有比率が4割近くあった。しかし、その後、外資から経営権を守るため企業が銀行などとの株式持ち合いを加速。バブル崩壊で日本企業の成長期待も崩れ、11年度以降は個人比率がじりじりと下がり、直近は2割を切る水準が続く。
個人株主数は6460万人と8年連続で増えたが、この数字は各上場企業の株主数を単純合算した延べ人数だ。実態は1400万人台といわれ、人口の9人に1人にとどまる。韓国は4人に1人の計算だ。米国は金額ベースで個人が株の約4割を持つ。家計の金融資産に占める株や投資信託の比率も、日本は欧米に比べ低い。背景にあるのは高齢化だ。日本の個人で株を持つのは高齢者に偏っており、年齢別では60歳以上が金額ベースで67%を保有する。高齢者が相続を意識するようになると、保有株を売却して現金化し不動産を購入するケースが少なくない。株式と不動産で異なる相続税の評価制度が背景にある。上場株は取引所で付いた時価がそのまま評価額になるのに対し、不動産は時価の80%を目安にする路線価を基に評価額を決める。「富裕層の最大の関心事は節税。株を売る証券会社なども高齢者に不動産への転換を勧めている」(相続コンサルタントの寺田宏司氏)
(途中略)
株の売却益や配当にかかる税金をなくすNISAも見直しの余地がある。NISAの非課税枠は120万円で、参考にした英国のISAは320万円と開きがある。投資期間を限定するNISAに対し、ISAは期間の制限を設けていない。岸田文雄首相はNISA拡充に言及している。個人がさらに株式を購入しやすくなるように制度を見直せるかが焦点になる。個人の裾野を広げていくには日本企業が自ら成長するだけでなく、税制や売買制度、金融教育を含めた幅広い議論が必要になる。』
この記事では、若者の投資を後押しして、個人株主を拡大させたいという政府の想いを紹介した内容である。だが、本当の意味で問題視しなければいけないのは、個人株主の少なさではなく、外国人持ち株比率がトップになっていることなのである。
この記事のグラフの「金融機関」は30%程度あり問題ないように見えるが、その金融機関には個人や年金の代理で投資している信託銀行や投資信託も含まれていることから正しい金融機関ではない。以前、企業と持ち合いをしていた銀行・生保といった従来の機関投資家の金融機関の持ち株比率は21年5.5%まで低下しているのである。逆に、外国人等の持ち株比率は21年30.4%とトップに踊りでている。
多くの市場関係者は、外国人の投資は大歓迎で、歴史的な円安で割安となっている今こそ外国人投資を増やすチャンスと考えている。だが、既に外国人が3割超の株主となっていることで、最近では、物言う株主が大手企業の経営に圧力をかけるといった弊害だけでなく、企業がため込んだ内部留保を配当・自社株買いなどの株主還元にプレッシャーをかけるようになっている。これ以上、外国人の持ち株比率が上がると、日本企業がどんどん乗っ取られ、外資系なみに生産性をあげるためのリストラが起きると想像できないのだろうか。
1990年のバブル期までは外資から経営権を守るために企業と銀行などが株式持ち合いを加速するとうのが日本企業の特徴だったが、海外からの圧力によって持ち合いを解消させられ、現在では物言う株主の餌食になっている。また、近年、株主還元に使われている内部留保も先行きの危機に対応するために溜め込んだお金だったが、それを加速させた背景の一つは、法人税率が95年34%→21年23%まで低下したことも大きいだろう。この法人税率引き下げも欧米に比べ高すぎるといった海外からの圧力で進んだものだが、実は、この法人税率と逆相関の関係にあるのが、外国人持ち株比率なのである。つまり、このように「欧米基準」というもっともらしい圧力によって日本企業の内部留保は外国人に搾取され、また経営権を握られて最悪は買収されたりしているのが現状なのである。従って、政府が今、増やすべき株主は個人株主よりも、日本企業を外資から守る制度や法律ではないだろうか。早く日本企業のトップの株主となった外国人の弊害に気がつくべきだが、もうすでに手遅れか。何故なら、外国人投資を歓迎している呑気な市場関係者が未だにほとんどだからである。