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円キャリートレード崩壊を占う過去2回の〇〇ショック 今年最大の注目点
円キャリートレード崩壊を占う過去2回の〇〇ショック 今年最大の注目点
史上2番目の規模まで「円売りポジション」を膨らました投機筋が3年5カ月ぶりに円買い越し
2024年8月18日日経新聞に『投機筋が円買い越し 3年5カ月ぶり、先安観後退』が報道されている。
『投機筋の円買いの勢いが増している。米商品先物取引委員会(CFTC)が16日発表した投機筋(非商業部門)の持ち高動向によると、投機筋は13日時点で円を2万3104枚(約2800億円)買い越した。投機筋が買い越しに転じるのは21年3月9日以来およそ3年5カ月ぶり。円の先安観が後退するなかで投機筋が円を買い戻している。
CFTCの集計は円を借りて外国為替市場で売り、ドルなどを買う「円キャリー取引」の規模を映しやすいとされる。投機筋は7月2日時点では円の売買額としては史上2番目の規模となる18万4223枚の円売り越しだった。日銀が低金利政策を維持するなかで日米金利差が開き、円売り・ドル買いをすれば金利差による収益が見込めたためだ。
ところが、7月11日~12日に政府・日銀による為替介入とみられる大規模な円買いが入ったことで、円売りの巻き戻しが始まった。日銀が7月31日に追加利下げを決めると円買いが加速した。この間に外国為替市場では急激な円高が進み、7月11日に1ドル=161円を付けていた円相場は8月5日には一時141円台まで上昇する場面もあった。(途中略)』
今回の不自然な円安のカラクリを指摘しのが、何度かご紹介した、2024/07/29「『円相場 潮目変わったか』?」のT-Modlコラムにおいてで、
『2024/04/22『止まらぬ円安は本当に「ドル高主導」なのか?』のT-Modelコラムにおいて、
『ドルインデックスとドル円を比較すると、両者の乖離が極めて大きい。冒頭の記事で指摘する「ドル独歩高」が円安の要因ならこのような乖離が起きにくく、一つ考えられるのは「円キャリートレード」がドル高以上に円安を加速した可能性がある。過去、今回のような両者の乖離は、リーマンショック前の07年6月頃、LTCM危機の98年8月頃に起きており、大きな危機の前に起きる現象のようにも映る。それが何かは定かではないが、大量に溜まっている「円キャリートレード」の巻き戻しが起きて、危機を誘発するのではないだろうか。「ドル基軸通貨」体制の揺らぎは「戦争」「地震」を誘発し、同時に、「円キャリートレード」の巻き戻しが世界的危機の引き金を引く可能性にも注意すべき段階を迎えている。』と「円キャリートレード」が原因の一つと指摘した。
ご存知の通り、先週、「ドル円」は4月12日週以来、約3か月振りに151円台まで円高が進行、わずか2週間で10円以上円急騰したことになる。日米双方で金融政策に転換が近いとの見方が広がるなか、年初から進んできた低金利の円を調達して高金利のドルで運用する「円キャリートレード」に巻き戻しの動きが出ている。日本では、政府・与党幹部かが相次いで日銀への金融正常化を求め、FRBが利下げに向かう中で日米金利差の縮小が意識されやすくなっている。 以前から何度かご紹介してきたT-Model理論『円キャリートレード指数』として開発したのが「ドル円/ドルインデックス」。同指標は7月5日週1.54倍と過去最高を記録した後、先週末7月26日週1.48倍まで低下した。ただ、T-Model理論『円キャリートレード指数』はまだまだ歴史的高水準を維持しており、本格的に「円の巻き戻し」が始まったとは言い難い。
1995年以降、T-Model理論『円キャリートレード指数』が歴史的ピークを打ったのは、1998年8月1.44倍を記録した時期で、「ドル円」1998年8月146円→1999年11月101円まで-30%の円高、次が2007年7月1.52倍を記録した時期で「ドル円」2007年6月123円→2011年10月75円まで-39%の円高となっている。今回はこの過去2回を上回る2024年7月1.54倍を記録したが、どこまで円高が進行するか。
ドル円の投機筋ポジションを振り返ると、2024年7月-18.4万枚まで売られ、2007年6月-18.8万枚以来、17年振りに過去最高に達していたが、先週までの円急騰で2024年7月1日週-18.4万枚→7月22日週-10.7万枚と、-41%の「円売りポジションの解消」が起きている。この過去最大の「投機筋の円売りポジション」と過去最高のT-Model理論『円キャリートレード指数』の時期がほぼ一致していることから、今回も07年の「円高修正」局面をなぞることが予想される。仮に、それが始まると市場には衝撃が起こるため、マーケットを操作してきた側は当面「抵抗」すること予想されるが、抵抗できなくなる近い将来も近づいているように思われる。』と指摘した。
『この過去最大の「投機筋の円売りポジション」と過去最高のT-Model理論『円キャリートレード指数』の時期がほぼ一致していることから、今回も07年の「円高修正」局面をなぞることが予想される。仮に、それが始まると市場には衝撃が起こるため、マーケットを操作してきた側は当面「抵抗」すること予想されるが、抵抗できなくなる近い将来も近づいているように思われる。』と指摘し、「市場には衝撃が起こる」との予告が、8月5日の日経平均の下落幅がブラックフライデーを超えて32年振りに史上最大を更新、8月2日に史上3番目の下落幅で現実化した。
また、こちらも前述の通り、「円キャリー トレード」の崩壊は単なる「一過性の混乱」にとどまらず、世界の金融市場に内在するシステミックリスクを浮き彫りにすると同時に、より深刻な構造的問題を表面化させる兆候と言えそうで、今回の「円キャリー トレード」の崩壊も「リーマンショック」のような金融危機への警告を意味している。
T-Model理論『円キャリートレード指数』で最初に最高となる1998年1.44倍を記録した時期を振り返ると、「ドル円」は98年8月14日週147.68円をピーク→99年1月15日週108.17円(約-26%の円高局面)→99年5月17日週124.79円(約+15%円安局面)に一旦、反発→再び99年11月26日週101.22円(約-19%の円高局面)と推移して、最終的にはピークから約-31%の円高局面となった。その過程で98年に「LTCMショック」「ロシア危機」が起き、その金融危機を覆い隠すように「ITバブル」を起こして延命、その反動で「ITバブル」崩壊が起きている。今回も「コロナショック」を覆い隠すかのように「AIバブル」を形成して延命している点は「98年~2000年型」の「円キャリー トレード」崩壊と共通している。だが、今年は11月に米国の大統領があることから「07年~08年型」の「円キャリー トレード」崩壊ように、「円売りポジション」が史上最高の07年6月25日週-188077枚まで積み上がった後、「約2ヵ月」後の07年8月24日週~8月31日週に「円買いポジション」に転換、その後一旦、07年11月9日週まで約3か月間「円売りポジション」に戻り、再び08年6月20日週まで約7か月間「円買いポジション」も想定しておく必用がありそうだ。今回も史上2番目の規模となる18万4223枚の円売り越しを「約1ヵ月」で「円買いポジション」に転換したが、ここから11月の米国大統領選挙のために約3か月間、投機筋が強引に「円売りポジション」に再び戻すことも想定されるからである。「98年~2000年型」か、「07年~08年型」か、どちらの「円キャリー トレード」崩壊過程を辿るのかは今年の最大の注目点になるかもしれない。