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円安加速の原因は日銀の「テーパリング」?
円安加速の原因は日銀の「テーパリング」?
2021年10月12日日経新聞に『ドルの買越残、2.6兆円~2年4カ月ぶり高水準』が掲載されている。
『投機筋がドル買いの動きを強めている。主要8通貨に対する買越残は5日時点で約232億ドル(約2.6兆円)と、2019年6月以来およそ2年4カ月ぶりの高水準となった。米国のインフレが長期化するとの見方から米金利が上昇(債券価格は下落)し、ドル需要が高まった。
米商品先物取引委員会(CFTC)の発表を基にみずほ銀行がまとめた。買越残は前回の9月28日時点(約161億ドル)より拡大した。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は米議会で「供給制約が価格を押し上げており、影響は当初想定より長引いている」と発言。米長期金利は1.5%超で推移する場面があった。10月8日に発表された9月の米雇用統計で雇用情勢が堅調だと改めて意識されたことで、11日の外国為替市場で円は一時1ドル=113円と18年12月以来の安値をつけた。みずほ銀の堀内隆文マーケット・エコノミストは「年内に115円まで下落する余地がある」とみている。』
10月18日午後の東京外国為替市場で円相場は1ドル=114円台前半まで円安が進み、今週にも115円台との見方も出ている。記事にもあるように、米長期金利の上昇による日米金利差の拡大で円売り・ドル買いが優勢になったとの見方であるが、米長期金利とドルインデックス、米長期金利とドル円を検証するとそれほど連動しているようには見えない。最近、多くの市場関係者が信じている「米国のインフレ懸念→米長期金利上昇→日米金利差拡大によるドル高・円安」はそれほど説得力はないということである。米長期金利が2~3%台に急上昇しているならまだ納得はいくのだが・・。
つまり、別の理由で円安が進行している可能性が高いということになるか、では、何が原因なのか。
T-Model分析のベースである「マネー」の観点から推察すると、日銀が世界に先駆けて「テーパリング」をすでに行っていたことが現在の円安を加速している可能性が高いのではないだろうか。
日米のマネーサプライの推移を振り返ると、米国は直近20.7兆ドル(21/8)と過去最高に膨らんでいるのに対し、日本は12年1月10.5兆ドルに並んだ20年12月10.9兆ドルでピークを打ち、直近は10.5兆ドル(21/9)まで減少している。その結果、マネーサプライの日米比率は、2011年7月1.12倍をピークに、21年8月0.51倍と1980年台の低水準まで低下している。同指標は、ドル円との連動性が高い上、特に、19年8月以降、同指標とドル円の乖離が大きくなったことでそのギャップ修正が現在、起きている可能性が高いのである。ギャップ修正がいつまで続くかは定かではないが、投機筋の動きがそのヒントとなるだろう。特に、直近でユーロ売りに転じた投機筋が、いつユーロ買いに転換するかに注目しておくことである。
以前から、T-Modelオリジナルは『ドルインデックスの15年サイクル』理論を提唱してきたが、その理論が崩れたのだろうか?いや理論が崩れたわけではなく、その理論のサイクルのなかで起きているに過ぎない。実際、「マネーサプライの日米比率」がドルインデクスの転換点と一致している実態をみればそれを証明しているのではないだろうか。