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第316回:米雇用統計ADPと米労働省違いは何を示唆するのか

第316回:米雇用統計ADPと米労働省違いは何を示唆するのか
6月のADP米雇用3.3万人減と2年3カ月ぶり減少
2025年7月3日ブルームバーグニュース『米雇用者数は予想上回る、公教育分野けん引-失業率4.1%に低下』を報じている。
『6月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが市場予想を上回った。予想を上回るのはこれで4カ月連続。公教育分野が異例の大幅増となり、全体を押し上げた。雇用者数は州・地方政府での増加が目立ち、州政府の雇用は2023年以来の大幅増となった。特に教育分野で伸びた。地方政府の雇用も急増した。一部のエコノミストはこれらの数字の強さに疑問を呈し、季節調整の問題かもしれないと指摘した。(途中略)
失業者数は5カ月ぶりに減少した一方、労働参加率も低下した。トランプ政権は通商戦略に加え、大統領自身が「史上最大規模」と位置づける不法移民の一斉強制送還を進めている。近年は外国生まれの労働者が雇用増加の主要な原動力となってきたため、この政策は労働市場に影響を及ぼすとみられる。外国生まれの労働者は3か月連続で減少し、今年の最低水準となった。過去3カ月の減少幅は新型コロナウイルス禍が始まった当初を除くと、2007年のデータ集計開始以降で最大となった。(途中略)』
また、2025年7月3日日経新聞『6月の米雇用3.3万人減、2年3カ月ぶり減少 民間調査』を報じている。
『米民間雇用サービス会社ADPが2日発表した6月の全米雇用リポートによると、非農業部門の雇用者数(政府部門は除く)は前月から3万3000人減少した。ダウ・ジョーンズ集計の市場予測(10万人増)を大幅に下回った。雇用者数の減少は23年3月以来、2年3カ月ぶり。6月はビジネス・専門サービス(5万6000人減)、教育・医療サービス(5万2000人減)、金融サービス(1万4000人減)で雇用者数が減った。一方、レジャー・宿泊サービスでは3万2000人増えた。製造業や建設業でも雇用者数が増加した。(途中略)
ADPの雇用リポートが映す傾向は米労働省が発表する雇用統計とかみ合わないことがあるため、米労働市場の実態を正確に捉えていないという指摘もある。(途中略)』
6月の米雇用統計の非農業部門雇用者数が前月比14.7万人増加と市場予想11万人増加を上回ったのに対し、ADP雇用統計は3万3000人減少と23年3月以来、2年3カ月ぶりに減少した。この差は何かというと政府部門にある。トランプ政権によるリストラの影響で連邦政府職員は6月-7000人と減少傾向にあるが、それを州・地方政府の雇用が増加で吸収しているためである。
米国雇用統計は米労働省による調査と民間企業によるADP雇用統計の2種類があり、米国雇用統計は約40万社の全米の家計調査(政府機関含む)や事業所調査を基に集計、失業率は家計調査を基に算出し、非農業部門雇用者数には政府機関の雇用も含まれる。一方、ADP雇用統計はADP社の顧客50万社(政府機関は含まず)自社顧客の給与データを基に集計、失業率は企業データを基に算出、非農業部門雇用者数には政府機関の雇用は含まれていない。従って、ADP雇用統計は労働省が発表する非農業部門雇用者数(NFP)の民間部門との相関性が高いとされており、雇用統計の先行指標としても注目されている。 実際、米雇用統計とADP雇用統計の非農業部門雇用者数(3か月平均)を比較すると、民間部門の先行指標的色彩の強いADP雇用統計はコロナで落ち込んだ非農業部門雇用者数を下回り、雇用環境は悪化の兆しが表れている。
また、失業率も4.1%と前月よりも改善したが、これはトランプ政権により不法移民の一斉強制送還を進め、労働参加率が低下した影響が出たためで雇用環境が良くなったわけではない。6月米雇用統計発表をうけて、金融市場は雇用改善と解釈してか、FRBの早期利下げ観測が弱まり、金融政策の動向を映す米2年債利回りが上昇(債券価格は下落)した。楽観視するほどの雇用統計でないのだが・・。





