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第332回:循環投資 ITバブル型錬金術崩壊では済まされない!?

第332回:循環投資 ITバブル型錬金術崩壊では済まされない!?

『OpenAI、NVIDIAと200兆円「循環投資」 ITバブル型錬金術に危うさ』

2025年10月16日日経新聞に『OpenAI、NVIDIAと200兆円「循環投資」 ITバブル型錬金術に危うさ』が報じられている。

『米オープンAIが約200兆円のインフラ投資でいびつな取引を繰り返している。米エヌビディア などから巨額資金の提供を受け、同社から人工知能(AI)開発用半導体を調達している。売り手と買い手で資金が循環する手法はIT(情報技術)バブル期に類似する。成長を実態以上に大きく見せ過剰投資を呼ぶ危うさがある。

AI投資は総額200兆円で「人類史上最大」

「AIインフラの構築は人類史上で最大の産業計画だ」。オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は13日、大規模なデータセンターに投資する意義をこう訴えた。計画するAI投資の規模は総額1兆3000億ドル(約200兆円)にのぼる。オープンAIは9月以降、エヌビディアと米アドバンスト・マイクロ・デバイス (AMD)、米ブロードコム といった半導体企業からの調達案件を立て続けに発表した。生成AIの性能を高めるため、インフラに必要な半導体をかき集める。オープンAIの企業価値は約5000億ドルとされる。今回表明したインフラ投資の規模はその2.6倍だ。赤字経営が続いており、現状ではとても自社でまかなえる規模ではない。オープンAIは勢いに乗る半導体企業の資金力を活用し、AI半導体の投資に充てる拡大戦略をあみ出した。

オープンAIは最大手のエヌビディアから最大1000億ドル(約15兆円)の投資を受け、競合するAMDからも発行済み株式の約10%、14日時点で約350億ドル(約5兆円)分の価値がある株式を受け取る。合計するとオープンAIは両社から約20兆円の資金を得る計算になる。こうした取引は半導体企業にとっても恩恵がある。オープンAIは調達した資金をAI半導体の購入に充てる。オープンAIがエヌビディアとの提携で購入する半導体がすべて同社製と仮定すると、エヌビディアは代金として最大3500億ドルの収益を得られる。オープンAIに投資する資金が循環し、AI半導体の販売売上高としてエヌビディアに戻ってくる構図だ。(途中略)

資金供与はITバブル時代の14倍

米ハーバード大のケネディ行政大学院のシニアフェロー、パウロ・カルバン氏はオープンAIと半導体2社との合意について「こうした循環的な取引には、企業が互いに資金を供給し合って成長を水増しした『ITバブル』時代の面影がある」と指摘する。顧客に対して自社製品の購入資金を提供する手法は「ベンダーファイナンス」と呼ばれる。2000年前後のITバブルでは、通信機器大手が資金力に乏しい顧客に融資して購入を支えた。実需よりも投資規模が膨らみ、バブルが終わると融資が焦げ付いた。当時ベンダーファイナンスを使ったのは、米シスコシステムズ
や米ルーセント・テクノロジーズ、カナダのノーテル・ネットワークスといった通信機器大手だ。ITが普及する時代に不可欠なインフラを握る企業として期待された。AIインフラは当時と比べ投資規模が桁違いに大きい。米ベンチャーキャピタル(VC)のセオリーベンチャーズによると、エヌビディアの顧客支援の金額はITバブル時代のルーセントの約14倍だ。循環投資によってAI半導体の買い手と売り手が相互に依存し、1社が崩れたときに共倒れになるリスクが高まっている。(途中略)』

この日経新聞よりも1週間前の2025年10月9日にブルームバーグニュースは『消えないAIバブル懸念-エヌビディアとOpenAIの投資還流で市場膨張』を報じており、

『OpenAIはエヌビディア、AMD、オラクル とAIコンピューティング契約を締結し、総額は1兆ドルを上回る可能性がある。OpenAIはその一方で、現金を急速に消費し、キャッシュフローがプラスになるのは数年先になる見通しだ。黒字化の道筋が定まらない技術にこれほど巨額の資金が、これほどハイペースで投じられた例は過去にない。しかも多くの場合、これらの投資はエヌビディアとOpenAIという2社に行き着く。
両社が関わる投資契約や提携が最近相次ぎ、複雑に絡み合うビジネス取引が、巨大なAIブームを人為的に支えているとい
う不安が募る。AIインフラ構築と刺激的な宣伝効果は、債券・株式から不動産・エネルギーに至るまで経済のあらゆる分野に波及している。』と指摘する。

この2つの記事は、最近の人工知能(AI)関連の取引が巨額化し、複雑化している背景にこうした「循環取引」や「循環投資」が膨らんでいる可能性を指摘する。ある企業が取引の一環で別の企業にお金を支払い、支払われた企業が今度は最初の企業の製品やサービスを購入する。最初の売主と最後の買主が同一の企業になるケースが多いのがこの「循環取引」の特徴だが、リスクの一つは、データセンターへの投資熱が冷めれば、企業は収益の減少と顧客への出資分の価値下落というダブルパンチに見舞われる可能性がある。

冒頭の記事にあるように、顧客に対して自社製品の購入資金を提供する手法は2000年のITバブル当時、「ベンダーファイナンス」と広く呼ばれ、主に通信機器メーカーが顧客に資金を貸し付けたり信用を供与したりして、自社の機器を顧客が買えるようにしていたが、バブルが終わって融資が焦げ付いたと指摘する。顧客への支援の金額が14倍に膨らむ現在のバブルは当時とは比べまのにならないことから終わらせられないのだろう。

ナスダックの時価総額が4ヶ月連続でニューヨーク証券取引所の時価総額を上回り、世界最大の取引所となっている。背景にこうした「循環取引」で実態以上に大きく見せている可能性のある人工知能(AI)関連の企業が多いためだが、そのうちの1社でも崩れたときに共倒れになるリスクが高まっている。そして、その反動は単なる「バブル崩壊」では済まないレベルに達している。実は、ナスダックがニューヨーク証券取引所を追い抜いたのは2021年に続いて2度目で、いずれも「バフェット指数」が過去最高を更新した時期と一致する。2021年当時は「インフレショック」でナスダックは2021年11月高値16212Pから22年10月安値10088Pまで-38%下落したが、今回はどうなるだろうか。また、2つ目の記事では『しかも多くの場合、これらの投資はエヌビディアとOpenAIという2社に行き着く。両社が関わる投資契約や提携が最近相次ぎ、複雑に絡み合うビジネス取引が、巨大なAIブームを人為的に支えているという不安が募る。』と指摘しているように、やはり現在の「巨大バブル」は「人為的」なものなのである。

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