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第365回:原油下落ガソリン価格高止まりギャップの原因は?
第365回:原油下落ガソリン価格高止まりギャップの原因は?
原油「秋の再高騰」の可能性が高まる?
2026年7月3日日経新聞に『原油「秋の再高騰」観測~買い控えの中国、一転買いか 先物推移は先高観の兆し』を報じている。
『米国とイランの衝突前水準まで下落した原油について、秋の再高騰シナリオを口にする市場関係者がにわかに出始めた。背景にあるのはホルムズ海峡の不透明な動向だけではない。買い控えを続ける中国の行動変化への危機感がある。「今の原油価格は安すぎる。いつ上昇してもおかしくない。ダークホースは中国の動向だ」。現物も先物も手掛けるあるトレーダーはこう身構える。(途中略)
足元の原油価格下落の最大の要因が中国の買い控えにあるからだ。原油相場が高騰していた海峡封鎖中、中国は在庫の取り崩しや石油製品の輸出を抑えることによって、原油の輸入を大幅に減らした。欧州調査会社ケプラーによると、中国の原油輸入量は6月22日からの1週間に平均で日量542万バレルだった。封鎖前の2月平均の半分以下だ。(途中略)ただ、この状況が秋にかけて一転する可能性がある。(途中略)中国は石油製品や川下製品を一貫して減らしているとみられる。中国国内の内需は強くないものの、石油製品の輸出は貴重な収益源だ。扱う量が多い中国の挽回生産が本格化すれば、原油の輸入が回復する可能性はある。(途中略)
そもそも世界的に石油製品などの最終需要は強い。原油の下落に対し、ガソリン価格は高止まりしている。LSEGによると米ニューヨーク市場の原油とガソリン価格差は1日に一時56ドル台と、22年6月以来、4年ぶりの大きさまで広がった。強い最終需要を踏まえると原油の需要は底堅いとの見方は多い。(途中略)』
2026/06/29『原油価格が米イラン衝突前の水準に下落したのは「イランとの和平合意」なのか?』のT-Modelコラムにおいて、
『冒頭の記事では、『米国とイランは17日に戦闘終結に向けた覚書に合意した。ホルムズ海峡経由の供給の回復期待が原油相場を押し下げている。』と原油下落の要因を指摘している。だが、実は、原油先物での空売りポジションが過去最高に脹らみ、ネット(売り-買い)ベースでも売りに大きく傾いたポジションになり始めている。逆に、3月にWTI原油価格が120ドル近くまで急騰したときは、この空売りが買戻されて原油価格急騰の原動力となっている。つまり、トランプ大統領の「イラン和平合意」発言の度に投機筋が原油空売りで原油価格を下げることを行ってきたのだろう。
ただ、投機筋がこの過去最大の原油売りポジションを持ち続けることは考えにくく、何かをきかっけに近い将来、空売りの買戻しが起きてもおかしくない。実際、これだけ原油価格が急落しても米10年債利回りが連動しないのは、原油下落がファンダメンタルではなく投機筋による空売りで下げているだけと分かっているからなのかもしれない。
以前にも指摘したが、T-Model理論『NY原油価格/NY金』は26年3月30日週0.024倍と直近ボトムである2月9日週0.012倍から約2倍に上昇したが、08年6月30日週0.155倍と22年6月30日週0.065倍を結んだ下降ラインまではまだほど遠い。同ラインに戻るには0.03倍近くまで上昇する必要があり、現在の水準からは約25%上昇することを示唆するが、過去最大の空売りの買い戻しが起きたときは、そんな水準ではすまないだろう。』
『これだけ原油価格が急落しても米10年債利回りが連動しないのは、原油下落がファンダメンタルではなく投機筋による空売りで下げているだけと分かっているからなのかもしれない。』と指摘したが、冒頭の記事で指摘する『原油の下落に対し、ガソリン価格は高止まりしている。LSEGによると米ニューヨーク市場の原油とガソリン価格差は1日に一時56ドル台と、22年6月以来、4年ぶりの大きさまで広がった。強い最終需要を踏まえると原油の需要は底堅いとの見方は多い。』がその答えと言えるだろう。つまり、トランプ大統領による40回に及ぶ「米国とイランの和平合意」を織り込むかたちで投機筋が過去最高水準まで空売りを積み上げるかたちで、米国とイランの衝突前水準まで原油価格を下落させただけ。実需のファンダメンタルを反映して高止まりするガソリン価格とは大きく異なっている。原油とガソリン価格差はロシアウクライナ紛争時に記録した過去最高の22年約100ドルに迫っているが、当時は原油価格が急落して1か月後にガソリン価格も急落したが、今回は原油価格が急落して2ヵ月が経過してもガソリン価格は高止まりしている点が異なる。仮に、この価格差で中国の挽回生産が本格化すれば、投機筋の空売りだけで抑え付けている原油価格はガソリン価格にサヤ寄せするかたちで急騰する可能性は否定できない。その時、米国に一気にインフレ懸念が高まることになるが、原油価格から目が離せない段階を迎えている。



