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10月景気ウオッチャー調査 T-Model理論で分析 世界的金融危機
10月景気ウオッチャー調査 T-Model理論で分析 世界的金融危機
円安リバウンドで悪い物価高が広がった「2024年10月景気ウオッチャー調査」
内閣府は24年11月11日、「2024年10月景気ウオッチャー調査」を発表。同指標は株価の1~2ヶ月先行指標で政府統計では最も有効。
2024年10月「街角景気」の「現状判断DI」は前月比-1.0%Pの46.6%(原数値)と2か月連続で悪化。実態を示す前年比ベースは-3.3%と9ヵ月連続でマイナス圏に陥り、水準も景気の別れ目となる50%を6か月連続割り込んだままである。猛暑の反動や物価高の影響が多方面に表れ前月比では下落したが、その物価高は急激な円安の影響が大きいと思われる。「米の値段が大きく上がり、様々な食品が値上がりとなっていくなか、客は購入点数や来店回数を減らすことで生活防衛を行っている(スーパー)。」、「今月は例年に比べ1割ほど来客数が少ない。元々10月は閑散期に当たり来客数、客単価共に下落傾向である。今夏が猛暑でエアコンがよく売れたため、その反動が出てきている(家電量販店)。」との指摘があった。尚、メディアでは、2016年10月分から発表を開始した「季節調整値」を使用しているが、現状判断DIは前月比-0.3%Pの47.5%と2か月連続で悪化、景気の別れ目となる50%を8か月連続で下回り、原数値とほぼ同様で違和感はない。2024年2月に「驚いたのは、24年1月分から現状判断DIを23年9月49.9→50.7、10月49.5→50.7、11月49.5→50.8と突然50以上に上方修正していたこと。50以下では不都合があったのだろうが、これは改ざんに近く、色々な統計でこのようなことが行われている可能性には注意が必要だろう。」と指摘した。
T-Modelにおいて「景気判断」に最も重要なのは移動平均との乖離幅で、24年1月-2.8%→2月+0.5%→3月+2.3%→4月+0.0%→5月-2.9%→6月-1.8%→7月-0.9%→8月-0.6%→9月-0.5%→10月-0.9%と推移。6か月連続でマイナス圏に陥っていることから依然、景気後退を示唆している。尚、内閣府は24年10月の基調判断は「景気は、緩やかな回復基調が続いている」と、2023年5月以来の上方修正である8月の基調判断を2ヵ月連続で維持したが、実態は景気後退している。
2─3カ月先を見る「先行き判断DI」は前月比-1.2%Pの48.0%と3か月振りに悪化。実態を示す前年比ベースも-1.6%Pと、8ヵ月連続でマイナス圏に陥っている。また、景気の別れ目の50%も7ヵ月連続で割り込んでいる。現状判断と同様、物価高の影響が多方面に表れ前月比では下落した。「依然として所得の増加を上回る物価上昇が続いていることから、客の購買力が相対的に低下している。このことが分譲マンション市場に対して悪影響を及ぼしている(住宅販売会社)。」「資材の値上げのため、見積金額を上げるなか、ここ数年で数回値上げしていることが影響し、なかなか了承してもらうことが難しくなっている。ますます厳しい状況になる(出版・印刷・同関連産業)。」と懸念する声が上がっていた。尚、「季節調整値」は前月比-1.4%Pの48.3%と2ヵ月連続で悪化。景気の別れ目となる50%を24年8月は5か月振りに上回ったが、上回ったのは1か月だけで再び2ヵ月連続で50%割れと、原数値とほぼ同様で違和感はない。
また、「先行き判断DI」-「現状判断DI」が24年1月+4.5%P→2月+3.2%P→3月-0.5%P→4月-0.9%P→5月+0.9%P→6月+1.9%P→7月+0.3%P→8月+0.9%P→9月+1.6%P→10月+1.4%Pと、小幅ながら6か月連続でプラス圏に浮上し、正常化が進展してきている。24年3月~4月まで「2ヵ月連続」マイナス圏、23年が23年7月~12月まで「6か月連続」マイナス圏、22年が22年3月~7月の「5か月連続」マイナス圏、22年9月~12月の「4か月連続」マイナス圏と、コロナ以降、同指標の連続マイナス圏の時期が増えていたが、24年はプラス圏の月が増えている。通常、「先行き判断DI」・「現状判断DI」の「逆転現象」は「先行き」に期待が持てない状態が続いていることを示すからである。
一方、関東地区の先行きDI(家計関連)は前月比-0.7%P の48.6%と2か月連続で悪化した。実態を示す前年比ベースでは-0.2%Pと、24年9月に7ヵ月振りにプラス圏に浮上したが、1ヵ月のみで終わり、2ヵ月振りに悪化している。景気の別れ目の50%を24年8月は5か月振りに上回ったが、上回ったのは1か月だけで2ヵ月連続で50%割れとなっている。また、全国先行きDI(家計関連)47.9%であることから、4ヵ月連続で関東地区が全国を上回り、その結果、「関東-全国の差(移動平均ベース)」は、24年1月-0.2%→2月-0.2%→3月-0.2%→4月-0.1%→5月+0.1%→6月-0.1%→7月+0.2%→8月+0.3%→9月+0.6%→10月+0.6%と推移し、「コロナショック」直前の2020年2月や「リーマンショック」直前の06年5月以来の高水準に回復している。同指標は関東地区が地方に比べ世界の金融危機に左右されやすい経済構造になっていることを利用して発見したT-Modelオリジナル理論。過去、07年の「サブ・プライムローン問題」、08年の「リーマン・ショック」、11年「欧州債務危機」、15~16年の「チャイナ・ショック」、2020年「コロナショック」など世界的な金融危機の局面で大きく悪化していたが、逆に、現在は「○○ショック」前の楽観的状態と言えるだろう。これまで世界的な金融危機が水面下で起き続けていることを示してきた同指標は、それを表面化させないように株高でそれを覆い隠し、そして、「円キャリートレード」を膨らますことで「人工的円安」を作り、日米の株価を牽引することで逆に、金融危機など起こらないような楽観的状況を作りだしている。まさに、08年「リーマンショック」前の07年の状況に似ている。ただ、7月から始まった「円キャリートレード」の巻き戻しは一過性の混乱ではなく、今後、何度も起こる可能性のある「混乱」であり、それは今後、世界の金融市場に内在する深刻な構造的問題を表面化させる兆候として捉えるべきで、トランプ大統領の圧勝はその始まりでもある。過去、「円キャリートレード」が膨らんだ98年には「LTCM危機」「ロシア危機」が起こり、07年は「リーマンショック」に繋がったからである。
また、T-Model理論の同指標は10ヶ月先の日本の株式市場を占う上でも重要な指標。同指標は22年11月を戻りのピークに、23年4月-1.9%と、過去最悪だった12年12月-2.1%に迫る水準まで急落。19年7月ピーク+1.2%→20年4月ボトム-1.6%、20年11月ピーク+0.7%→21年6月ボトム-1.6%と同様に、コロナショック以降、3度目の「危険な時間帯」が続いていた。だが、前述の通り、「円キャリートレード」による「人工的円安」と「逆イ―ルド」による金融緩和策で日米の株価を吊り上げる不自然な「株価操縦」によって危機を覆い隠してきたが、「円キャリートレード」の巻き戻しによる円高進行に加え、「10年債-2年債」の連続「逆イ―ルド」が週足ベースでは22年7月1日以来、114週(約2年2ヵ月)振りに途切れたことで、不自然な「株価操縦」も最終段階に入った可能性が高い。以前から何度も指摘してきたように、T-Model理論では『「逆イールド」解消は「金融引き締め」を意味する』からである。
この「円キャリートレード」による「人工的円安」の終了を示すかのように表れた注目すべき指標は「ドル円(前年比ベース)」である。同指標は9月-3.8%と、2021年1月-1.6%以来、3年8か月振りにマイナス圏に陥ったからである。過去、「ドル円(前年比ベース)」のマイナス圏は19年5月~2020年5月の13か月連続マイナス圏に「コロナショック」が起き、その前が17年12月~18年6月の7か月連続マイナス圏に「VIXショック」「世界同時株安」、16年2月~17年1月の11か月連続マイナス圏に「ブレクジット」、07年8月~09年11月の2年3か月連続マイナス圏に「リーマンショック」、98年10月~2000年8月の1年10か月連続マイナス圏に「ITバブル崩壊」、などが起きている。連続マイナス圏の期間が長ければ長いほど大きなショックに発展する傾向があるため、今後は「ドル円(前年比ベース)」には要注目である。ちなみに、10月は152円で前年比+0.2%と一旦はプラス圏に浮上しているが・・。
2024年11月12日日経新聞は『企業倒産、15%増の909件~10月、「人手不足要因」2倍超』を報じている。
『東京商工リサーチは11日、10月の全国倒産件数(負債額1000万円以上)が前年同月比15%増の909件になったと発表した。人件費の高騰など人手不足を要因とした倒産が2.1倍の30件に急増した。時間外労働に上限規制を設ける「2024年問題」の影響を受ける建設業などの苦境が目立つ。倒産件数は10月としては13年以来11年ぶりに900件台となった。負債総額が1億円未満の中小零細企業の倒産が701件と全体の77.1%を占め、比率は今年最高となった。原材料費の上昇など販売価格に反映することが難しい中小企業が破綻に追い込まれる事例が増えている。(途中略)
業種別でみると、労働集約的産業の倒産が目立つ。飲食業が9.3%増の94件、医療・福祉事業が44%増の36件だった。人手不足を要因とした倒産は24年1~10月に244件と、13年の集計開始以来、1~10月として最多を更新している。(途中略)』
このような倒産企業の急増の背景は、円安による物価高と「働き方改革」による人手不足である。建設業では4月から時間外労働に上限規制が導入され、10月単月の建設業の倒産は14%増の187件、24年1~10月では1604件と過去10年間で最多となっている。実は、この「倒産件数」は過去、株価と逆相関の関係があるが、2023年1月から両者の関係が大きく乖離している。以前から何度も指摘してきたが、2023年1月からは「円キャリートレード」で「人工的」に160円台までの円安を演出し、過去最高の株価水準まで押し上げただけで、ある意味、景気の実態悪を隠すために株価を吊り上げた可能性が高い。1982年以降、長期間の続いた「倒産件数」と「株価」の関係を歪めた現在の状況はいつ、その「歪みの修正」が起きるかを警戒すべき時間帯に入っているのではないだろうか