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「アルケゴスショック」はもう収まったのか?

「アルケゴスショック」はもう収まったのか?

2021年3月30日日経夕刊に『「虎の子」が示した死角』が掲載されている。

『29日の米株式相場は3営業日続伸した。投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントが投資損失から資産の投げ売りを余儀なくされ、取引先の野村ホールディングスやクレディ・スイス・グループが巨額損失を計上する可能性があると発表。このニュースはいったん相場全体を押し下げたが、新型コロナウイルスのワクチン普及への期待から持ち直した。アルケゴスの創業者のビル・ホワン氏とはどんな人物なのか。ウォール街の市場関係者の間では、この話題で持ちきりだった。あまり知られていない会社が世界の大手金融機関に巨額の損失をもたらすほどの打撃を与える出来事は、米金融市場の二つの死角に光を当てた。

一つがホワン氏が運用していたヘッジファンド会社の系譜だ。アルケゴス設立前にホワン氏が携わったタイガー・アジア・マネジメントは、世界に広がる「タイガーカブ(虎の子)」の一つだ。これはヘッジファンド業界のレジェンド(伝説)といわれるジュリアン・ロバートソン氏が1980年代に設立したタイガー・マネジメントの運用担当者が、同氏の助言や資金支援などを受けて独立した会社を指す。タイガーカブからさらに独立した「孫」、この孫からさらに独立した「ひ孫」まで含めると世界中に50社ほどあり、ロバートソン氏の運用哲学とタイガーの名声を武器にヘッジファンドを運用している。ホワン氏が2001年に設立したタイガー・アジアは10年ほどで当地の業界でも最大規模に成長した。ヘッジファンドに関わったある弁護士は「タイガーカブだから巨額の取引をするとみた投資銀行が、こぞって融資や取引サービスを提供したからだ」と指摘する。だが、ワンマン経営をしていたとされるホワン氏はインサイダー情報を違法に利用して中国の銀行株を空売りした疑いで、12年に4400万ド
ルの制裁金を米証券取引委員会(SEC)に支払って和解する事態となった。こうした経緯がありながら、アルケゴスと取引を続けた金融機関は法令順守やリスク管理のあり方が問われそうだ。

注目されたもう一つの死角が「ファミリーオフィス」だ。アルケゴスは、富裕な個人投資家や家族の資産を運用し、税務や寄付などの助言なども請け負うファミリーオフィスという業態だ。ヘッジファンドと似た運用をしながら、保有株のSECへの報告など多くの規制が免除されている。巨額の投資ポジションを知らずに投資銀行が手数料目当てにこぞってアルケゴスと取引したことが、今回の相次ぐ担保の追加差し入れ(追い証)につながった可能性がある。過去数年間にヘッジファンドがファミリーオフィスに転換する例が相次いでおり、「次のアルケゴス」が出てもおかしくない。SECは規制を見直す必要があるかもしれない。』

市場関係者は1兆円超のアルケゴスの売却額や証券会社の損失の大きさに驚いたが、サプライズは一旦収まり、楽観的見方が優勢となっている。だが、今回の損失劇はサブプライム問題の入り口となった2007年の「パリバショック」のような出来事の可能性もあり、後で振り返ると、あれが金融危機のきっかけの事件だったといえるかもしれない。アーンスト・アンド・ヤング(EY)の資料によると、アルケゴスのような個人資産を管理する「ファミリーオフィス」は欧米を中心に1万社以上存在し、運用規模は5.9兆ドル(約650兆円)に上るとの調査ある。米国ではリーマンショック後、金融規制改革法(ドットフランク法)で米証券監視委員会(SEC)登録が義務付けられたが、「ファミリーオフィス」は一定の条件を満たせば除外が認められている。アルケゴスはデリバティブ(金融派生商品)を使ったスワップ取引を活用して500%近いレバレッジをかけていたらしいが、「ファミリーオフィス」だったことで監視外だったのだろう。アルケゴスのような極端な運用スタイルは一部にとどまるが、似たような積極的な運用姿勢を取る「ファミリーオフィス」も少なくない。今回の事件で金融機関が大きなリスクを取っていた実態が浮き彫りになったことで対顧客取引の監督強化は避けられず、レバレッジ解消の動き拡がり株価急落を招くリスクがある。当時、「パリバショック」から「リーマンショック」まで1年あったが、冒頭の記事にあるように「次のアルケゴス」が早々に出るようだと金融危機を早める可能性があるだろう。

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