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10月外貨準備が前年比-14.9%と過去最大の減少、減少は今年3月以降、8か月連続
10月外貨準備が前年比-14.9%と過去最大の減少、減少は今年3月以降、8か月連続
2022年11月8日日経夕刊一面に『外貨準備3.5%減 10月、円買い・ドル売りの為替介入で』が報道されている。
『財務省が8日発表した10月末の外貨準備高は1兆1945億ドル(約175兆円)と、9月末から434億ドル(3.5%)減った。円買い・ドル売りの為替介入や米金利上昇が影響した。減少幅は24年ぶりに円買い介入に踏み切った9月(4.2%)に次ぐ過去2番目の大きさとなった。
財務省は9月29日~10月27日の為替介入実績が6兆3499億円だったと発表済み。10月は実施の有無をすぐには明らかにしない「覆面介入」に動いた。その結果が外貨準備高に表れた。
10月末の外貨準備高のうち外国債券などの「証券」は9413億ドルと、前月末比で439億ドル減った。大部分を占める米国債を換金し、円を買った可能性がある。外貨預金は1370億ドルで前月より9億ドル増えた。』
財務省が公表した、2022年10月末の外貨準備高は、9月末より434億ドル(約6.4兆円)減少して、1兆1945億ドル(約176兆円)だった。円買いドル売りの為替介入や米金利上昇による外国債券の評価損が影響した。減少率は前月比で8月-2.3%→9月-4.2%→10月-3.5%と3カ月連続で、9月-4.2%は過去最大、10月-3.5%は過去2番目の大きさとなった。前月比では10月の減少率は縮小したが、前年比では、8月-9.3%→9月-12.2%→10月-14.9%と加速すると同時に、今年3月以降、8か月連続で減少している。実は、この「3月以降、8か月連続で減少が加速」というのが重要なポイントで、何故ならば、ドル円を振り返ると今年2月115円から150円超まで一気に円安が加速したからである。
2022/10/17『4~6月の世界の外貨準高が過去最大だったリーマンショック並みの減少』のT-modelコラムにおいて、
『記事では『政府・日銀が9月22日に実施した円買い・ドル売りの為替介入は米国債を売却する形だった可能性がある』と指摘し、「米国の理解を取り付ける働きかけは1年前に始めた」と米国側の「理解」を得ていると日経新聞は報道した。だが、9月22日に実施した日銀・政府の為替介入は「円安を止める」目的というよりは不足するドルの供給が目的であり、それは日本の単独介入というよりは「米国に要請」されて実施した可能性が高いのではないだろうか。そうでなければ「米国債を売却」して為替介入することなど日本政府ができるはずもない。従って、米国から要請があれば再度、為替介入を実施して不足するドルを供給する可能性が高いだろう。『介入、米の「理解」いつまで?』と日経新聞は報道するが的外れではないだろうか。
実際、世界の外貨準の前年比伸び率とドルインデックスは逆相関の関係にあり、ドルインデックスが上昇すると外貨準備が減少、つまりドルを売却して不足するドルを供給している実態が浮かび上がる。つまり、現在のドル独歩高を止めるには、金融危機による「ドル需要」を上回る「ドル供給」を実施する必要があり、金融危機が続けば、更なる外貨準備の減少が続くことを意味する。
日米の金利差だけで現在の「ドル高」を考えるのではなく、このような金融危機による「ドル需要」急増も「ドル高」の未来を予測するうえで極めて重要なポイントになりつつあるのである。』と指摘した。
また、2022/11/07『銅金レシオの低下は将来の米長期金利低下を示唆しているのか?』のT-Modelコラムにおいて、
『冒頭の記事にある「金銅レシオ」の低下は近未来の米長期金利の低下を示唆するものではなく、「長期金利がこれまでとは異なる要因で上昇している可能性」が高いと考えているということである。具体的には、すでに金融危機が始まっていて、世界的なドル需要が強まり、米国債が約6割を占める外貨準備が売却されているために米長期金利が上昇している可能性があるということである。
実際、国際通貨基金(IMF)が集計する世界の外貨準備は2022年4~6月に12兆367億ドル(約1733兆円)と急減、前年比ベースでは-6.5%と過去最大の減少率(22年1~3月期前年比-0.4%)。実は、その減少率と米長期金利は連動を強めている。一方、為替介入が理由と、金融危機とは異なるが、日本の外貨準備も22年3月末前年比-0.9%→6月末-4.7%→9月末-12.2%と急減しており、その減少率と米長期金利がより連動しているのである。』
この2つのT-Modelコラムで伝えたいことは、現在の過去最大の外貨準備の減少は「政府・日銀が実施する円買い・ドル売りの単独為替介入」によるものではなく、「ドル供給」が目的であり、「米国」側の要請の可能性が高いということである。日本の外貨準備の減少率と米長期金利の強い連動性はそれを裏付けるものであり、「政府・日銀が実施する円買い・ドル売りの単独為替介入」を実施すればするほど、米長期金利を上昇させて、更なる円安を招くといった矛盾を起こしていることに早く気付くべきだろう。過去も、現在も、日本政府が単独で「米国債を売却」することなどできるはずもないからである。
このようなT-Model理論からすると、11月に入ってからのドル円の一気の140円大台割れは今年のマネーの流れが大きく変化する兆しとして注意しなければならない。仮想通貨取引所FTX破綻も影響しているかもしれないが、11月の日本の外貨準備高にどのような変化が起きているのかが、今から楽しみである。