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銅金レシオの低下は将来の米長期金利低下を示唆しているのか?


銅金レシオの低下は将来の米長期金利低下を示唆しているのか?

2022年11月2日経新聞に『銅金レシオ低下、利上げ不況示唆~安全資産の金に需要』が報道されている。

『主要商品の金と銅の値動きから算出する「銅金レシオ」が低下している。景気動向を敏感に反映する銅価格が下がる一方、金の下げは小幅だ。安全資産とされる金は景気の低迷時に買われやすい。投資リスクを回避するマネーの動きを反映しているとされ、米国の急速な利上げを背景に、景気の落ち込みを示唆しているとの見方が広がる。

銅金レシオは銅価格を金価格で割って算出する。銅は多様な産業で使われる。需要動向は世界の経済状態を映し出し、銅価格は「ドクターカッパー」とも評される。景気が拡大すれば上昇し、減速局面では下落する傾向がある。一方、景気が拡大する時は株などのリスク資産にマネーが流れるため、金は買われにくい。景気が後退する時に安全資産として需要が高まる。銅金レシオはこの傾向が違う2つの金属の値動きを組み合わせ、景気のトレンドを推し量る。上昇は景気の回復、低下は鈍化を表すとされる。銅金レシオは5月ごろまで5を超える水準での推移が目立った。6~7月にかけて急速に低下し、一時2021年2月以来の低水準となる4.2台まで下がった。現在も4.5程度にとどまっている。

(途中略)

債券よりも先に、商品で景気減速を示唆する動きが表れた格好だ。「債券王」の異名を持つ著名投資家のジェフリー・ガンドラック氏は8月、銅金レシオについて「特に有用な指標である」とツイッターに投稿した。レシオの低下を金融政策の「ピボット(転換)」の予兆、とみる声も出ている。3月に始まったFRBの利上げについて、市場では、銅金レシオが実体経済の先行きの明るさを先取りしていたとの分析があるためだ。21年末、銅金レシオは5.3と新型コロナウイルス禍前(19年末が4.05)比で上昇した。一方、米10年債の利回りは1.5%台と1.9%台だった19年末と比べ低下(価格は上昇)傾向だった。FRBはコロナで傷んだ経済を支えるため、国債を大量に買い入れていた。金融緩和が続く中、商品市場にいち早く現れた景気の持ち直しを示す動きとして注目されていた。

11月1日から米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。市場では12月の利上げ幅などが注目されている。国内運用会社の運用担当者は、「銅金レシオが先行して今後の利上げ一服や、その先の利下げを織り込み始めている可能性がある」と話す。』

冒頭の記事では、「金銅レシオ」の先行性を重視するかたちで、『債券よりも先に、商品で景気減速を示唆する動きが表れた』、『レシオの低下を金融政策の「ピボット(転換)」の予兆』と指摘し、「銅金レシオが先行して今後の利上げ一服や、その先の利下げを織り込み始めている可能性がある」と結論付ける。

だが、2022/10/03『「米国債の変動率が13年振りの水準」は何を意味するのか?』のT-Modelコラムにおいて、

『最後に、2019/10/21『米長期金利と連動する「金銅比率」』のT-Modelコラムにおいて、

『「金銅比率」を検証すると、米長期金利の水準は別にして、ピークとボトムのタイミングがほぼ一致している。特に、リーマン・ショック後の09年以降は、水準自体も一致していることから有効な指標の一つと言えるだろう。直近9月の「金銅比率」は3.89倍で、過去の水準から見ると底値圏の水準にある。従って、そろそろ銅が上昇するか、金が下がるかの動きで「金銅比率」の底打ちが表面化してくるタイミングが迫っている。それは同時に、長期金利のボトムアウトも意味することになる。』と指摘した。

同コラムから3年が経過した現在、長期金利は予告した通り、大きく上昇してきたのだが、疑問なのは米長期金利と連動する指標の「金銅比率」が下向きで、長期金利上昇の動きと乖離している点である。

このようなときに考えるべきことは、長期金利がこれまでとは異なる要因で上昇している可能性があるのか、それとも現在の長期金利の急騰が間違っているのか、また「金銅比率」の低下が間違っているのか、のどのパターンなのかである。現在のところ、「長期金利がこれまでとは異なる要因で上昇している可能性」と考えているがどうだろうか・・。現在のインフレが「40年間の金利低下局面」に終止符を打とうとしているからである。』と指摘した。

冒頭の記事にある「金銅レシオ」の低下は近未来の米長期金利の低下を示唆するものではなく、「長期金利がこれまでとは異なる要因で上昇している可能性」が高いと考えているということである。具体的には、すでに金融危機が始まっていて、世界的なドル需要が強まり、米国債が約6割を占める外貨準備が売却されているために米長期金利が上昇している可能性があるということである。

実際、国際通貨基金(IMF)が集計する世界の外貨準備は2022年4~6月に12兆367億ドル(約1733兆円)と急減、前年比ベースでは-6.5%と過去最大の減少率(22年1~3月期前年比-0.4%)。実は、その減少率と米長期金利は連動を強めている。一方、為替介入が理由と、金融危機とは異なるが、日本の外貨準備も22年3月末前年比-0.9%→6月末-4.7%→9月末-12.2%と急減しており、その減少率と米長期金利がより連動しているのである。

冒頭の記事にあるように、「金銅レシオ」の先行性を重視するかたちで『レシオの低下を金融政策の「ピボット(転換)」の予兆』などと考えているとようだと大きなミスを犯すだろう。現在のような金融危機下では、市場関係者が期待する『金融政策の「ピボット(転換)」の予兆』は外貨準備のような米国債の需給に現れるからである。外貨準備の減少率が縮小するまでは米長期金利は下がりにくいのではないだろうか。

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