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500日を超えた「10年-3ヶ月」の「逆イールド」は何を示唆するのか?

 

500日を超えた「10年-3ヶ月」の「逆イールド」は何を示唆するのか?

2024年4月17日ブルームバーグニュースで『FRB利上げ、むしろ景気の追い風だとしたら-逆張り論理に脚光』を報じている。

『米経済は毎月数十万人もの新規雇用を創出するなど、リセッション(景気後退)が迫っていると予想していた専門家を困惑させるほどの力強さを維持している。こうした中、ウォール街ではある異端の経済理論がささやかれ始めた。過去2年にわたる急ピッチの利上げが、実のところ経済を押し上げているとしたらどうか。つまり、金利上昇にもかかわらず経済が堅調なのではなく、むしろ金利上昇のおかげで経済が好調なのではないかとの見立てだ。学界や金融界の主流派にとってはあまりに過激であり、以前ならポピュリストであるトルコのエルドアン大統領か、現代貨幣理論(MMT)の熱心な擁護派だけが公の場で口にするような異端の理論だ。(途中略)

これは政策金利がゼロから5%超の水準に切り上がったことで、米国民が20年ぶりに債券投資や預貯金から大きな収入を得られるようになったためだと、逆張り理論の支持派は主張する。元デリバティブトレーダーで現在はニュースレター「マクロツーリスト」を執筆しているケビン・ミュア氏は「現実には、人々はもっとお金を持っている」と話す。こうした人々は(企業も)、新たに手に入れた資金の大部分を消費に回し、需要と成長を押し上げているというのだ。

利上げ局面では通常、こうした人々の追加支出が借り入れをやめた人々の需要減少を補うには不十分なことが多い。これは米金融当局が引き起こす典型的な景気後退(これに伴うインフレ率低下)の原因となる。ミュア氏によると、経済は従来のパターンに従って「急激に減速する」と誰もが予想していた。「だが、そうではなく、おそらくもっとバランスが取れていて、やや刺激的ですらあるかもしれない」と同氏は考える。

ミュア氏を筆頭とする逆張り論者ら(中でもヘッジファンド運営会社グリーンライト・キャピタル創業者デービッド・アインホーン氏は最も有名)は、いくつかの理由から今回は過去の例とは違うと話す。その最たるものが、爆発的に膨らんでいる米国の財政赤字だ。米政府の借金は35兆ドル(約5410兆円)と、ほんの10年前から2倍に拡大した。つまり、政府の借り入れ金利が上昇していることで、毎月500億ドルほどが追加で米国(および外国)の債券投資家の懐に流れ込んでいることを意味する。(途中略)

バリュー投資家として知られるアインホーン氏は、ミュア氏よりも早い段階でこの理論にたどり着いた。世界的な金融危機を受けて米金融当局が事実上のゼロ金利政策を導入したにもかかわらず、経済が緩慢なペースでしか回復していなかった頃だ。金利を極端に引き上げれば景気を支援しないのは明らかであり、例えば政策金利が8%では借り手への打撃があまりにも大きすぎる。だが、より緩やかな水準に引き上げれば支援するのではないかとアインホーン氏は考えた。米国の家計は13兆ドル余りの短期利付資産から収入を得ており、利子を支払う必要のある消費者債務5兆ドル(住宅ローンを除く)のほぼ3倍に相当すると指摘する。現在の金利で計算すると、家計にとっては年間で差し引き4000億ドル程度の利益になると同氏は試算している。アインホーン氏は2月、ブルームバーグのポッドキャスト番組で「金利が一定の水準を割り込むと、実際には景気が減速する」と語った。景気減速を避けるために米金融当局は利下げに踏み切る必要があるとの議論は「実に奇妙だ」という。(途中略)』

『「金利が一定の水準を割り込むと、実際には景気が減速する」と語った。景気減速を避けるために米金融当局は利下げに踏み切る必要があるとの議論は「実に奇妙だ」』『米政府の借金は35兆ドル(約5410兆円)と、ほんの10年前から2倍に拡大した。つまり、政府の借り入れ金利が上昇していることで、毎月500億ドルほどが追加で米国(および外国)の債券投資家の懐に流れ込んでいることを意味する。』がリセッション(景気後退)が迫っていると予想していた専門家を困惑させる一つの理由と指摘する。

理由は異なるが、この『政策金利を下げると景気が後退する』との結論はT-Model理論と合致する。 T-Modelでは、消費者物価上昇率と政策金利の観点から『政策金利を下げると景気が後退する』との結論を導いてきた。過去、政策金利を上げると消費者物価は上昇、逆に、政策金利を下げると消費者物価は下落しており、その原因が『イールドスプレッド』であることをいち早く発見していたからである。

拙著『新しいマネーの教科書~暴落はまだ終わっていない!』の第4章『データが示すアメリカの危機の限界』の『「金利を下げた途端に暴落が起こる」2019年5月の警告が現実に』(P143)において、

『過去の常識で考えると、「金利が上がったらマネー縮小=緩和の逆、つまり引き締め」になるので景気が悪くなるといわれていました。しかし、市場が決める10年債の金利との差を縮めるために2年債の政策金利を上げることは、実質的な緩和になっているというのが私の独自理論です。「10年物-2年物のイールドが縮小していく=緩和」が新方程式です。

前著(『いま持っている株は手放しなさい!』)の第4章「もうヤバい!アメリカの『フェイク経済』の仕組み」において、

「現状でも、たぶん将来も多くの市場関係者はFRBが金利を下げたらいいというでしょうが、金利を下げた途端に暴落が起こる近未来が待っているのです。9割の市場関係者が金利を上げたほうが危険と思っています。私からするとまったく逆で、金利を下げることが危険なのですFRBが金利を下げた途端にイールドが拡大して、暴落する可能性が高まります。リーマン・ショックの時もそうでした」と書いていますが、全くその通りのことがこの(2020年) 3月に起こりました。新型コロナウィルスの感染拡大などを受けてFRBは2度の緊急利下げを行い、それによってNYダウが急落(世間では暴落)してしまったのです。』と指摘した。

米国債10年-2年の「逆イールド」は22年7月に始まり、24年3月まで21か月続いている。ドイツ銀行によると、3月21日で「逆イールド」の持続期間が1978年に記録した「624営業日」を超えて過去最長に達したという。

また、米国債10年-3か月の「逆イールド」も24年3月末で511日と500日を超えているが、500日を超えたのは過去、1929年、2008年、1974年の3回しかなく、いずれも株価は50%以上の暴落に発展している。「逆イールド」の持続期間と株価の下落率は比例関係にあり、仮に、FRBが金利を下げると、過去最長の「逆イールド」は解消して、それが株価暴落を招き、そして、大不況に陥る恐れがある。2020年以降の消費者物価の急上昇も、22年からの沈静化もすべてコロナショックを契機としたQEと、その後のQT、つまりマネーの急増と減少が原因であり、政策金利は関係ない。むしろ、政策金利の引き上げは物価を押し上げる要因で、それにも関わらず消費者物価の下げ止まりを理由に「利下げ先送り」を続けようとしているのである。これは少なくとも11月の米国大統領選挙までは株価暴落も、景気後退も起こすことができない現政権の「逆イールド」継続の延命策に過ぎず、仮に、大統領選挙まで「逆イールド」を継続させると「721日」となり、大恐慌前の「700日」を上回り過去最長となる。それは、1930年代の「大恐慌」の再来が避けられないことを示唆することになるが、「逆イールド」が「500日」を超えた現時点で今更、止めても経済への大激震は避けられず、このまま突き進むしかないのだろう。では、ここまで理解できた我々は何をすべきか。近未来に起こるであろう大地震と同様に、世界経済崩壊の大激震にも準備を怠らないことが重要である。

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